岬ちゃんを求めないオトナになってしまった 〜新NHKにようこそ!を読んで
12月に入ってしまった
大部分の人間は同じように感じているのではないだろうか
12月だ!やったぜ!なんて言ってる人はあんまり見かけない気がする
人間の習性として、過ぎ去るものに対しての悲哀とか、未来に対する不安感みたいなものが混沌として舞い込んでくるのが12月なんだろう
そういった暗澹たる気持ちを少しでも晴らそうなんて誰かが思ってクリスマスが生まれたのかもしれない
ハッピークリスマス! もちろん、クリスマスに当てられて孤独を深める人もいたりはするわけだが
ハッピークリスマス!なんでみんなハッピーをつけたがるんだろうか
ハッピーニューイヤーはまだいい、新年を祝って、これからの先行きの不透明性を盛大に誤魔化して腕に何かしらの薬物を注入するかのような現実逃避を成しているのは納得ができる
ハッピークリスマスはどうだろう?
そりゃクリスマスにかこつけてホテルでパンパンしまくってるカップルのもとに生まれる新しい命に対してハッピーなんて宴を催してあげるのはやぶさかではないが、基本的にこういうのは受精したタイミングではなく、出産したタイミングで祝うものなのではないだろうか、やはりハッピーとは少し遠いものだ
一番意味がわからないのは、ハッピーハロウィン!
お前らは何に対してハッピーと発しているんだ
道ゆく露出多めのコスプレ人に対して私の股間がハッピーと言っているのか?
スタンプのようにハッピーとつけて何にでもポジティブ要素を付加するのはいかがなものかと、リアルに一石を投じようかと思ったが、言葉一つでどんなイベントもポジティブなものに変換することができるなら、それはきっといいことなんじゃないかなって思ってしまう私もいる
こんな寒い寒い世の中、言葉で暖を取るのも悪くはないんじゃないかね
前置きはこのくらいにして
今日の本題は、滝本竜彦先生の「新・NHKにようこそ!」を読んだ話
そもそも「NHKにようこそ!」という作品を知っている人はどれくらいいるものなのだろうか
20年近く前発売され、アニメに漫画に、幅広くメディアミックスされ、かなりの話題となった作品だ
何が話題になったって、そりゃまずはタイトルがすごい
NHKなんて喧嘩を売ってはいけない巨大組織をタイトルに取り入れ、日本放送協会じゃないんです!日本引きこもり協会の略なんです!なんて言っていたんだ
私の学校でも日本引きこもり協会というワードがブームとなっていた
少なくとも2024年流行語大賞の「ふてほど」よりは確実に流行っていた
そして、そんなタイトルよりも流行るきっかけを作ったのが、作中に登場する岬ちゃんという存在だ
ダメ人間である主人公、佐藤くんのもとに訪れひきこもりから脱出させようと奮闘してくれる女の子である
当時この作品に触れた誰もが、俺の元にも岬ちゃんが来てくれたら!なんて話を当然のようにしていたし、私も岬ちゃんの到来を密かに願っていた1人だ
クリスマスにサンタさんが岬ちゃんを連れてきたら、そりゃ私も毎年フィンランドの方角に向かってハッピークリスマスと叫ぶことを恒例行事としていたかもしれない
そんなNHKにようこそ!の新刊が出るっていうから、どんなものかと非常に気になっていた
内容については割愛、というより読んでいて懐かしいなぁ以外の新規の発見がなかったから書きようがない
多分、昔「NHKにようこそ!」を読んでいた人々は同じような感想を抱いたであろうから、旧作を読まずに新から読み始めました!って人の感想を見た方が面白いかもしれない
それよりも私が言いたいことが
私は昔ほど岬ちゃんという存在を切望しなくなっていたという自身の変化についてだ
20年前の当時の私からしてみると、岬ちゃんという存在は、未知の世界へ連れて行ってくれるモノ、窮屈なこの世界から解き放ってくれるシンボル、のように感じていた、だからこそ岬ちゃんを望んでいた
ところが今になっって、岬ちゃんを欲しているかと自分に問いかけても、別になぁという感じ、何故だろうか
まずは未知の世界が減ってしまったからか
特にいまはネットの力による情報過多のご時世だ
学生から社会人になるまでにネットから多大な情報を吸い上げ、さらには検索すれば未知なんてそれほど多くないし、調べて出てこない未知は私には必要のないものだという線引きもできている、そりゃこの世界に期待なんてものができなくなるわけだ
もしかしたら今のこともたちが「NHKにようこそ!」を読んでも、昔ほどのブームは生まれないのかもしれない
次に窮屈な世界からの解放はどうだ?と聞かれても、これもそんなに唆られない
社会人になって大きな変化は、金と車を手にしたことだと私は思っている
これにより私は移動手段と、移動先での行動の自由も得たわけだ、窮屈感なんて感じようがない
日常生活ではどうなんだ?出社して閉塞感のある日々を過ごしているじゃないか!なんて言われても、休みの日に出かければそれで満足できるし、という思いだ
何が言いたいって?
世の中の学生たちは社会人より閉塞感と孤独感を感じている可能性が高いって話だ
少なくとも私はそう感じていたんだなって、この作品と20年ぶりに触れ合って感じた
子供だから気楽でいいね、なんて安易には言わない方がいいってことだ
そして閉塞感を感じている子どもがいたら、是非とも百合漫画を読んで想像の羽を広げ羽ばたいてほしい