【楽曲分析】杜の鼓動〜桜の風景〜 ②セクション分け

前回分析からもう少し深掘りして、「セクション分け」をしてみます。

前回記事はこちら。

前回の分析結果、この曲は大きく4部に分けられることがわかりました。
これは曲を1、2回聴けば誰でもすぐにできる分析かと思います。

・序奏(T1~21)
・第一部(T22~77)
・第二部(T78~223)
・結尾部(T224~307)

ここからさらに深掘りということで、各部の構成を分析するために「セクション分け」していきます。スコアに練習番号を振る、的な作業と思っていただければよいと思います。

"シーンの切り替わり"に注目する

「セクション分け」は、"シーンの切り替わり"に注目することが重要です。
何をもって"シーンの切り替わり"とみなすのか?
と考え始めるとキリがないので、ここは深く突っ込みすぎず感覚的に仕切っていきます。
シーンの切り替わりは多種多様で優先順位はなく、どれも曲の重要なポイントになり得るからです。

楽譜を見ながら曲を聴いて、「あ、シーンが変わったな」と思ったところに印をつけていくと、下図のように各部をセクション分けすることができると思います。(人によって違うとは思います)

セクションの特徴を言語化する

セクション分けしただけでは、各部の構造は見えてきません。各セクションがどんな特徴を持っているのか、を言語化する必要があります。

"なぜシーンの切り替わったと感じたのか?"を考えてみると、意外とすんなり書け流と思います。(すんなり書けるかどうかはもちろん曲によります)
「どこのパートが聞こえる」「テーマが変わった」「盛り上がっていく」と書くだけでも十分です。

各部の構成をまとめてみる

さて、各セクションの特徴を踏まえて、改めて各部がどんな構成になっているのかまとめてみます。

序奏

2セクションで構成されており、最初の主役はチェロ。次のセクションではドラソロが出てきます。

パートが浮き彫りになって聞こえるのはこの曲の大きな特徴かもしれません。
特に曲の冒頭にドラソロを持ってきているのは、作曲者の強い意思が込められている気がします。

第一部

基本的には一つの主題が(第一主題と呼びます)「マンドリンソロ→マンドリン1→マンドリン1,2」と受け渡されて曲が拡大していきます
ここでもソロが使われています。(さっきはドラだったのに)敢えてマンドリンにソロを弾かせているのは何故なのか、を考えてみるのも面白いかもしれないです。

そして印象的なのは最後の急加速。曲が急に打ち切られます。
前までの曲調とは全然違います。何か意味がありそうなので、敢えて経過主題、と名前をつけておきます。

第二部

セクション分けしてみると10セクションとかなり長い構成ですが、大部分が一つの主題(第二主題とよびます)の繰り返しになっており、大きな構図としては「A-B-A構成」になっていそうです。

(A)
マンドリンによって第二主題が演奏された後、オクターブが上がってもう一度確保、そして急加速の経過主題。ここまでは第一部とほとんど同じです。
(B)
Gtに主題が移り、雰囲気がガラッと変わります。前向きになってた曲が急に引き止められる感じ。
(A)
もう一度第二主題が再現され、そのまま結尾部に移行していきます。

(A)と(B)で曲調が全然違うので、ここは音楽作りの見せ所、な気がします。

結尾部

曲が静まり返り、幻想的な雰囲気に包まれます。徐々に和音やリズムが積み重なっていき、最後のクライマックスに突入します。
クライマックスは第一楽章の再現。まさに桜の風景が浮かび上がるような場面です。
桜の風景には、華々しい・美しい・懐かしい、人それぞれ色んな解釈があると思うので、人によって全然表現が違ってくるのではないでしょうか

まとめ

今回は各部をセクション分け、言語化してみました。
その結果をもとに各部の構成をまとめてみると、プログラムにある曲紹介くらいのボリュームになりました。これだけでもまあまあ価値がある気がします。

ここまで分析のポイントは、「楽譜をほとんど見ていない」ことです。
曲を聴いて、その感想をメモに書き溜めていってるだけとも言えます。

個人的な意見としては、楽曲分析の最初ってこれくらいでいいと思うのですよね。まずは自分の考えていることをそのままアウトプットすることが大事だと思います。曲を聴いて最初に感じたことが、実は曲の核心を捉えていることもあります

私は指揮する時には、まず最初にこの手法で自分の考えていることを整理してから、合奏に望むようにしています。

次は、セクション分けからさらに一歩踏み込んだ分析をしていきます。
今までは感覚ベースの話が多かったですが、次からは楽譜を見ながらの分析になっていきます。


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