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化粧はしないと下手になる

めっきり化粧を施さなくなった。

ほぼ引きこもりで家にいるから、やっても意味ないし、そもそも面倒くさがりなので化粧をしない。

メイクをしないと、顔がどんどん不細工になっていく気がした。

こんなに目がきつい印象だっただろうか?

口角はこんなに下がっていただろうか?

こんなに面長だっただろうか?

肌はこんなにくすんでいただろうか?

目の下のクマはこんなに目立っただろうか?

眉毛はこんな形だっただろうか?

気にしないとどんどん自分でも納得のいかない自分になっていく。

都会はどうだか知らないが、田舎はそこらへんのスーパーに一張羅で行くやつなぞいない。

バッチリメイクで、一万のワンピースを纏い、その辺歩いたり、7000円のブラウスと8000円のスカートでスーパーに行ったりしない。

ショッピングに行くにもおしゃれはしないで済む。

田舎じゃショッピングなぞイオンくらいしかないからだ。

家族連れで賑わう店内では、誰も私の服なんて見ていないから。

街に行く時くらいはちゃんとするけど、しなくても誰も気にしない。

でも、あんまりにも気にしていないとチラッと見られて何あれ?チラッ。クスクスとなる。

部屋着じゃ街へは行けない。

ロリータ服のブランドは街のデパートに少しだけあるけれど、ロリータさんが街中にいると歌舞伎役者が衣装と化粧のまま交差点にいるくらい目立ってしまう。

周りが田んぼとかではない程度の地方の政令指定都市では、街中でも目立ってしまう。

下妻物語ほどではないけれど。

ジロジロ見られてしまうので、こういう服が好きで、周りの目が気になる田舎住みの人は肩身が狭いだろうなと思う。

ビジュアル系やパンク系も、個性派原宿系も、地雷系も、港区女子系も、Y2K風も田舎じゃめちゃくちゃ目立つ。

でも、街のドンキにパジャマのヤンキーはいる。

それが田舎。

気にしない人もいるし、気にする人もいる。

塩梅が難しいのだ。

スーパーには部屋着のヨレヨレのTシャツはそのままに部屋着のハーフパンツだけ、ジーパンに履き替えてすっぴんで行く。

もちろんスーパーには車でしか行けないので、運転しやすいサンダルかスニーカー。

そんな暮らしが数年続いただけで、人は簡単に楽な方へ流れていく。

それに伴い、顔つきも、体つきもどんどん変化していく。

こんなにお腹ぽよぽよだったっけ?

こんなに体操座りに腹の違和感あったっけ?

こんなに二の腕太かったっけ?

楽になれた体は気がつかないうちにそれに順応した仕様に変化していく。

メイクをしない顔もどんどんメイクの似合わない顔になったように思う。

そもそもメイクを毎日していた時も、はぁ、私に似合うメイクをデフォでインストールしてあればいいのに、上手く行った日の化粧がデータとして残っていて、ボタンを押せばその顔が完成するとかだったらよかったのにとかを考えながらメイクをしていて、メイク自体が特に楽しいということもなかったから。

なんとなく周りがみんなしているからやっていただけの化粧は私の中の優先順位から早々に切り捨てられた。

化粧を施すと、化粧をしている自分という「女子大生の私」の鎧を作れた。

だからステータスの維持のためにやっていただけのように思う。

ある程度化粧品に詳しくなり、それなりのものを持ち歩き、リップが薄くなったなと思ったら塗り直していた。

今ではイオンモールくらいなら化粧なぞしない。

ちょっといいデパートへ行くにも化粧をしない強者になった。

でも、今日は綺麗でいたいなと思う日は思い出したようにコンタクトをして、顔に化粧を施すことがある。

メイクはしない期間が長くなると、どんどん下手くそになり、あれ?どうだったっけ?どこを意識してメイクしていたっけと自分のメイクのやり方がとんと思い出せなくなる。

やっとこさ思い出してメイクをしても上手にできたとは思わなくなった。

24歳くらいから学生の時にしていたメイクが似合わなくなった。

どうしてだろうか。

顔もそんなに変わっていないのに。

そう思っていつものルーティン通り、番号順に配置するようにメイクをする。

なんかしっくりこない。

つぎはぎのパッチワークのように、顔が不自然に塗りたくられただけのように思った。

厚塗りなのか?

目が変なのか?

あの時はまつげパーマをしていたからかしら?

私のまつげは簾睫毛で下に下がっている。

たまに睫毛が目の中に入ってくるほど、直毛の下向き睫毛。

朝、時間がない時にビューラーであげても下がってくるまつ毛と格闘する時間が勿体無かったし、朝にビューラーして、マスカラ塗って、ホットビューラーでまつ毛をあげても、夕方には萎びた草のように項垂れたまつ毛が鏡に映る。

それが嫌になってバイト代で二、三ヶ月に一回まつげパーマをしていた。

睫毛かしら?

と思ったのでホットビューラーでまつ毛をあげる。

うーん、まつ毛だけの問題ではないようだ。

何がどうなっているのだろう?

どうしてメイクが似合わなくなったのだろうか?

顔が伸びたのか?

そう思ってアルバムのアプリを開き学生の頃の写真までスマホで遡る。

うーん顔の形変わっただろうか?

ん?いやいや、まてまて。

この時もこの時なりに、そんなにメイク上手ではなかったぞ。

でも、今の私よりは可愛らしい印象。

あまり馬鹿みたいにはしゃいで笑わなくなったから表情筋が衰えたのかもしれない。

頬周りの張りが違うのだろうか?

別に化粧が上手じゃなくても、楽しそうにしていたら可愛いという人間の根本的な問題なのだろうか?

パーソナルカラー診断もしたことあるし、骨格診断も顔タイプも診断したことがある。

それに合わせた化粧品も服も買っているけど、似合わなくても可愛かったらそれでよしと、ただ、パッケージや色味が気に入って買った化粧品も、形やデザインが好きで買った服もある。

全部を出して、眺めてみるも、よくわからない。

まあいいかと、適当に化粧をする。

下地を塗ってリキッドファンデーションもセッティングスプレーで濡らしたスポンジで薄く伸ばして薄づきにしてパウダーでベタベタしないようにした。

眉毛は昔は眉マスカラで、できるだけ眉毛が目立たないようにしていたけれど、今それをすると、顔色が悪いように見えてしまう。

大人になった顔には眉毛の存在感はあった方がいいのだと気がついた。

ナチュラルにただアイブロウペンシルで形を少し整えるだけにして、眉毛の色はそのままにしてみた。

ビューラーでまつ毛を上げるのを諦めて、簾睫毛のままマスカラを塗り、アイライナーは何ミリかはみ出してというのをやめて、目の形に沿って少し伸ばすくらいにした。

チークは血色を少し足すだけで濃くないようにして、リップも赤リップからコーラルピンクにした。

似合う似合わないとか面倒だから考えなかった。

アイラインを目立たせようとか、赤リップで色味をとか、涙袋をぷっくりとか、ノーズシャドウを濃く入れて鼻を高く見せようとか似合うかわからないものをやめた。

背伸びをしないありのままの自分をそっと少しだけ彩るメイクをした。

少し色味を足したくらいの、まぁ、化粧はしているねとわかるくらいのほぼすっぴんみたいなシンプルなメイク。


すると、いつもすっぴんだから、その顔に見慣れているからか、背伸びしないメイクをしたら途端になんだかしっくり来た。

たった数年で流行りは変わるし、あの時のメイクはもう流行遅れなのだろう。

世間の流行りにも、私の顔にも。

クマとかくすみとか、色素沈着の跡とかそれだけ隠せてればいいか。

清潔感があれば、可愛くとか綺麗にとか無理しなくていいや。

盛り耐性ないし、センスもないし、どう工夫しても自分を良く見せられるほどの腕がない。やってもどうせヘンテコになるだけ。

だったら、せめて不快にさせない程度のそっとしたメイクの方が私には性に合っているのかもしれない。

少しだけ、私に似合うというよりも、私の性に合っているメイクがわかった気がした。

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