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大切にする/されるということ

この間口紅を買いに化粧品店に行った。

気になった色を何色か試したくて
店員さんに全部つけてもらうことになって。

普段はぞんざいに
ざざっと塗るだけの口紅。
他人の手にかかると
それはそれは丁寧に塗ってもらえた。

そこでふと
「なんか今すごく自分が大切に扱われてる」
ということにちょっと感動した。

お金を払うお客さんだから
大切に扱われるのは当たり前なんだけど
この感覚って大事だなあ、と。



例えばお気に入りの喫茶店で。

店員さんが静かにそっと
コーヒーカップを置いてくれたり
「お口に合いましたか?」
って聞いてくれたり
「またお待ちしていますね」
って笑顔を向けてくれたり

商売、というものを超えて
"自分という一人の人間が尊重されている"
と感じられると
「自分は大切に扱われている」
と、すごく満たされた気持ちになる。

仕事でも、営業マンに
「今日体調悪い?大丈夫?」
って聞かれたり
「面倒くさいことやってくれて
 ありがとうね」
って労いの言葉をかけてくれたり
話しかけたときに忙しくても
きちんと目を見て話をしてくれたり

そんな風にされるとやっぱり嬉しい。

そして、尊重された(大切にされた)
という事実は
「わたしも同じだけ相手に返したいな」
と、相手を大切にする気持ちにつながる。



問題は
それを自分ファーストでできているか、
ということ。

相手にされる前に
自分が相手を尊重しているか。
あなたを大切に扱いますよ、と
自分から伝えられているか。

人は求めるのだけは一人前で
自分から与えるということが
なかなかできない。

でもすごい人はみんな
「まず自分から与えるのが上手」
な人なんだな。

特に化粧品店や喫茶店みたいな
"わかりやすいサービス業"じゃない職種や
プライベートの場だと
わたしたちはみんな
相手を大切にすることを忘れる。

それは家族だったり友人だったり
同僚だったり恋人だったり。

親しい仲であればあるほど
相手を大切にすることを忘れる。
大切にされたい、は声高に叫ぶのに。



かつて、同僚で困った営業マンがいた。

私が別の人と
こみ入った仕事の話をしているときに
わざと「今いい?」と割り込んでくる。
いいわけないのに。

「自分は大切にされるべき人間だ」
と言わんばかりの行動だ。

でもその人は誰にも大切にされないまま
逃げるように会社を辞めた。

人を大切にできない人が
大切にされることは決してない。

誰かから大切にされたい、
尊重されたい、
と強く願うとき。

まずそれを自分はできているのかを
胸に手をあてて聞かなきゃいけないな。


大切にされたいのなら、
まずは自分から。

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