大切にする/されるということ
この間口紅を買いに化粧品店に行った。
気になった色を何色か試したくて
店員さんに全部つけてもらうことになって。
普段はぞんざいに
ざざっと塗るだけの口紅。
他人の手にかかると
それはそれは丁寧に塗ってもらえた。
そこでふと
「なんか今すごく自分が大切に扱われてる」
ということにちょっと感動した。
お金を払うお客さんだから
大切に扱われるのは当たり前なんだけど
この感覚って大事だなあ、と。
◇
例えばお気に入りの喫茶店で。
店員さんが静かにそっと
コーヒーカップを置いてくれたり
「お口に合いましたか?」
って聞いてくれたり
「またお待ちしていますね」
って笑顔を向けてくれたり
商売、というものを超えて
"自分という一人の人間が尊重されている"
と感じられると
「自分は大切に扱われている」
と、すごく満たされた気持ちになる。
仕事でも、営業マンに
「今日体調悪い?大丈夫?」
って聞かれたり
「面倒くさいことやってくれて
ありがとうね」
って労いの言葉をかけてくれたり
話しかけたときに忙しくても
きちんと目を見て話をしてくれたり
そんな風にされるとやっぱり嬉しい。
そして、尊重された(大切にされた)
という事実は
「わたしも同じだけ相手に返したいな」
と、相手を大切にする気持ちにつながる。
◇
問題は
それを自分ファーストでできているか、
ということ。
相手にされる前に
自分が相手を尊重しているか。
あなたを大切に扱いますよ、と
自分から伝えられているか。
人は求めるのだけは一人前で
自分から与えるということが
なかなかできない。
でもすごい人はみんな
「まず自分から与えるのが上手」
な人なんだな。
特に化粧品店や喫茶店みたいな
"わかりやすいサービス業"じゃない職種や
プライベートの場だと
わたしたちはみんな
相手を大切にすることを忘れる。
それは家族だったり友人だったり
同僚だったり恋人だったり。
親しい仲であればあるほど
相手を大切にすることを忘れる。
大切にされたい、は声高に叫ぶのに。
◇
かつて、同僚で困った営業マンがいた。
私が別の人と
こみ入った仕事の話をしているときに
わざと「今いい?」と割り込んでくる。
いいわけないのに。
「自分は大切にされるべき人間だ」
と言わんばかりの行動だ。
でもその人は誰にも大切にされないまま
逃げるように会社を辞めた。
人を大切にできない人が
大切にされることは決してない。
誰かから大切にされたい、
尊重されたい、
と強く願うとき。
まずそれを自分はできているのかを
胸に手をあてて聞かなきゃいけないな。
大切にされたいのなら、
まずは自分から。