ゴールデン街・瑠璃の夜 第二夜「危険な動物」
アメリカからに次いで多い、オーストラリアからのお客様。
オーストラリアは物価も高いけれど、給料が日本の2〜3倍だそうで、羽振りのいい方が多い印象だ。
そして、よくビールを飲む。
オーストラリアでは、屋外で飲酒をすることが禁じられているらしい。
ゴールデン街入口付近のワンコインバー「CHAMPION」は、いつも路上にまで人が溢れ賑わっているが、そこで飲んでいる外国人は大半がオーストラリア人だと言う話を聞いた。
ある晩来店した、親子らしきオーストラリア人の二人連れ。
瑠璃の人気商品は、火・水担当のまさみさんの推薦でサーバーを導入した、クラフトビールだ。
二種類ずつ注文し、無くなるとまた別の種類を注文するので、来るたびに違う種類のクラフトビールが楽しめる。
そのクラフトビールを注文し、あっという間に飲み干しては次を注文する。
瓶ビールはアサヒスーパードライのみだが、こちらも外国のお客さんには人気だ。
クラフトビールと瓶ビール、他にも別の種類のお酒もオーダーしていたかも知れない。
とにかく、お酒に強いのだ。
店には日本人4人組のグループもいたが、お客同士で会話を始め、あっという間に仲良くなる。
「Sakeをくれ。彼らにも。俺の奢りだ」
え?という表情の日本人グループ。
良いんですか?とオーストラリア紳士に確認し、全員に日本酒を注いだ升を手渡す。
普段はワイングラスを使用しているが、全員分となると足りないのだ。
"Cheers!"
こんな風に賑やかに、ゴールデン街の夜は更けていく。
オーストラリア人と話していてよく話題に出るのが、カンガルー。
カンガルーの生息地からは1時間くらいだが、よく見かける、と言う。
そしてカンガルー、結構危険な動物らしい。
確かに筋力が半端なさそうだし、襲われたりしたら大怪我することは間違いないだろう。
どんな状況で襲われるのかは分からないが。
が、その時に話していた男が言うには、更に危険な動物がいるらしい。
それは毒蜘蛛だそうだ。
ベッドに寝ていて、いつの間にか体の上を這っていたりするというから、恐ろしい。
別のオーストラリア人が来店した時、その話をした。
”I heard that kangaroos are dangerous”
「カンガルーは危険だと聞きました」
と言おうとして、うっかり
”I heard that kangaroos are delicious”
「カンガルーは美味しいと聞きました」
と言ってしまった。
"Exactly"
笑われた。
まあ、実際カンガルー肉を取り寄せて、食べたことはある。
ちょっと癖のあるジビエで、美味しかった。
でも私が言い間違えたことは、気付かれてたみたい。
オーストラリアはそれほど興味のある国ではなかったけれど、彼らの話を聞いていて、野生の動物を見に行きたいな、とは思うようになった。