
twitter300ss改稿「花の隠れ里」
「この花は……」
植物学者は目を疑った。丁寧に草と花を屈んだ膝にのせ、携帯端末を出す。撮影し、ポータルサイトに問い合わせを送った。pomaga czule!この花は二〇〇年前から見られていないんだ。恐らく前の大戦のときに化学兵器で根絶やしになった植物だ。こんなところで俺が見るなんて……。
「もっと森の奥に行こうよ」
見上げると彼女の髪からふわふわと溢れる四葉のクローヴァ。花むすめと名乗る彼女に道案内を頼んだら、こんな稀有な場所に廻りきてしまった。
「おじさん、植物、好きでしょう?」
「うん、また明日も案内してくれるかい、連れてきてくれて本当にありがとう」
「おじさん、本当に町に戻れると思ってんの?」
花むすめの瞳がきゅっと縮んだ。
「ここは花の隠れ里。戦争で死んだ花も居る。百年後に放射能で死ぬ樹々もここに居る。ねえ、普通に帰れると思ってんの?」
携帯端末はいつのまにか電波圏外になっていた。
(twitter300ssお題「隠」20210306)
https://vodka.hateblo.jp/entry/20210306/twitter/
いいなと思ったら応援しよう!
