東京會舘、チーフバーテンダーが語る。アメリカの将校が愛したお酒と有楽町の変遷
ニッポン放送で40年近くラジオに携わってきた上柳昌彦アナウンサーが、東京・有楽町に関わる様々な人をゲストに迎え、有楽町の魅力やそこで生きる人の思いを聞くポッドキャスト番組「有楽町ひとさんぽ」。
今回のゲストは、大正時代から続く大人の社交場 東京會舘。こちらのメインバーで、チーフバーテンダーをされている高山映治さんです。東京會舘と有楽町の歴史を伺います。
常連さんに鍛えられた新人時代
バーテンダーの方はどのような修行をされるのでしょうか?
基本は掃除ですね。氷を割るとかグラスを拭くとか。本当に小僧の世界から。そこで辞めちゃう人間がいっぱいいるんですよ。お昼はいつも満席で仕事に追われてランチが終了。夕方になると常連が決まった時間に来るんですよ。その常連にいじられて。「お前彼女できたのか?」とか。
そういう風にいじられるんですね(笑)
そういう話をしながら3年ぐらい僕を見ているわけです。僕はお客さんのことを覚えているので、この人は○○の水割りで氷1個入れてとか。でも作らせてくれない。作らせてくれるかどうかは会話で僕が分かってきたかどうかをお客さんがチェックしているわけですね。しばらくすると「そろそろ高山に俺の水割りを作らせてやっていいぞ」と上司にお許しが出るんですよ(笑)そこで初めてその人のお酒が作れます。
初めて作って飲んでいただく時はどうでしたか?
感動しましたね。それがわかるまで3年かかりました。「何で俺に作らせないんだ。わかってるのに」と。でも常連は絶対作らせない。それがようやくクリアした時に会話で「こいつ分かってきたな」と。お客さんに対してリスペクトがあり、順序や準備を重ねて丁寧にお酒を作る心がけができたと。
GHQの将校たちがマッカーサーの目を盗んで飲んだジンフィズ
東京會舘で有名なカクテルありますよね
牛乳が入ったもので「會舘風ジンフィズ」といいます。
「マッカーサーが飲んだジンフィズ」とよく言われていますが、本当にマッカーサーのために生まれたのですか?
多分僕が違うと思うんですよ。話を聞いたり本を読んで調べたんですが実際はGHQの将校たちが朝から飲んでいたというのが事実だそうです。牛乳が入っていると白くなるのでお酒に見えないじゃないですか。ですからカムフラージュをしているわけです。朝からマッカーサーの目を盗んで将校たちが浮かれて飲んだ…というのが有力ですね。
牛乳だけではなくて、レモンも入ってますよね。分離しそうですが…
ジン45mm、牛乳30mm、シュガーシロップ5mm、レモンジュース5mm。これをハードにシェイクして氷が入っているグラスに注ぎ、最後は炭酸で少しかき混ぜて泡立ててあげる。牛乳とレモンが入っていますから時間が経つと分離するんですよ。ですからお客様にはなるべく早めに飲んでいただきたいと。
作家の辻村深月さんが愛した東京會舘
辻村深月さんが『東京會舘とわたし』という本を出版されていますね。あの本の中には東京會舘に関わった様々な方が登場していますね。
三菱の四代目の岩崎寛弥さんについてお話させていただきました。あの方は銀行に勤めていたんですけど常務ぐらいでお辞めになって。毎日メインバーに来て決まった席でお昼から飲んでるんですよ。電話で誰かを呼び出して説教したりとか。朝8時には東京會舘を開けるんですけど、その日は朝7時30分から寛弥さんが見えて。いつも裏口から入ってくるんですけど、まだメインバーは空いてないわけです。その奥に鍵がかかってないバーがあって、そこにとりあえず入って、調理場の人間を呼んで「そこの冷蔵庫にワインがあるから出せ」っていうわけです。調理場の人間が出すと「そこにグラスがあるからつげ」と(笑)
東京會舘チーフバーテンダーが語る有楽町の豊かさ
高山さんが考える有楽町が持つ豊かさはなんですか?
僕が豊かさだと思うのはハイソサエティなお客様と出会えて接せたことですね。それが一番です。普段は会えないようなお客さんと相対してくだらない話をして。考えていることをもらえるというか。
最近は経済状況も大変ですから、色々なことを背負ってカウンターに腰を落として高山さんに話しかけることもあるでしょうね。
スイッチの切り替えに来るんですよね。戦闘モードで家に帰りたくないというのがあるでしょう。
調度品も長く使っているものばかりですよね。
メインバーには、創業当時の大正時代からある時計があります。東京會舘が建て替える前はロビーにあったんですが建て替えた時に奥のバーに入って。
あの時計も有楽町の街をずっと見ているわけですね。
全編はポッドキャスト「有楽町ひとさんぽ」で公開中
東京會舘・メインバー チーフバーテンダー高山映治さんご出演の「有楽町ひとさんぽ」はポッドキャストで聴くことができます。全編無料です。
「有楽町ひとさんぽ」は、有楽町の街の新しいテーマソングを公募するプロジェクト「有楽町うたつくり計画」と連動した超ローカルポッドキャスト番組です。有楽町で働く方、生きる方をゲストに迎え、街の魅力や歴史、展望などを伺っていきます。
<有楽町ひとさんぽ>
毎週月曜日、最新エピソード配信予定。
「有楽町うたつくり計画」公式サイトほかポッドキャストで聴取できます。
<有楽町うたつくり計画>
有楽町の街の新しいテーマソングを創り上げる楽曲募集企画。
一次審査通過者は、音楽プロデューサー・本間昭光さんとのワークショップを通して、楽曲をブラッシュアップし、有楽町の”まちうた”をつくりあげていきます。詳細は公式サイトまたは応募サイトをご覧ください。
募集期間:2020 年 6 月 15 日(月)~7 月 31 日(金)
一次審査:2020 年 8 月 1 日(土)~
公式サイト:https://www.1242.com/project/yurakucho
応募サイト:https://eggs.mu/music/project/yurakucho_utatsukuri
東京會舘 Information
住所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目2−1
電話:03-3215-2111
050-3134-3553(メインバー)
公式サイト:東京會舘
東京會舘メインバー
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?