ヘルシンキで日本を思い出した話
初めて北欧の国を訪れた。フィンランドのヘルシンキ!!!ムーミンマリメッコアアルトと憧れの国で期待は大きかったけれど、余裕で期待をこえてきた。ヘルシンキでは本当に意外にも日本を思い出すことが多くて、アジア以外で日本を感じることはあまりないから、新しい感覚だった。この新しい文化圏を体験する感じが旅で一番好き。
まずこんな遠い国で日本語表記を見ることに感動した。ヘルシンキの国際空港で中国語韓国語に並んで日本語があった。空港で日本人らしき人も見た。直行便が飛んでいる国は確かに行きやすい。
街は清潔で綺麗だった。トイレも汚いトイレがほぼなかった(これは感動する)。道にゴミなどが落ちてない。一部吸い殻があるくらい。街並みは、中心部は古くてヨーロッパらしい建物と、現代的な建物が混ざり合っている。
Airbnbで泊まったあたりは現代的なマンションが多い地域で、なんとなく豊洲っぽい感じがした。地下鉄の駅がショッピングセンターの中にあって周りにマンションがありすぐ隣が海辺になっている。タワーマンションもあった。工事中の道も多く開発中なのかもしれない。出国のとき、出国審査の人にどこに泊まったか聞かれてこの地域の名前をいったら「友達の家?」と聞かれた。たしかにここはホテルなどはなさそうだし観光地ではなさそう。でも中心部から近いし良い場所だった。
清潔さ、街の静かさがなんだか日本に似ている。喋り声がそんなに大きくないのかな。バスの行き先表記も電子案内で見やすい。フィンエアーは行きは時刻通り、帰りは5分遅れのみ。何かときっちりしている雰囲気(でもぎすぎすした感じではない)。
そしてなんと、食べ物が美味しかった。北欧って物価が高いのかなと思っていたけれど、ダブリンの方が少し高いくらい。しかも、選択肢が多いしぜんぶ美味しいからあまり高いと感じなかった。生サーモンよりも、蒸し焼きにしてある鮭が美味しすぎてびっくりした。やわらかくてみずみずしくてパサパサしてない。ダブリンのスーパーで鮭を探して自分で料理してみようと思った。久しぶりに魚をたくさん食べれて毎食幸せだった。土地のものが口に合うって本当に幸せ・・・。ダブリンに戻っても、もうフィッシュアンドチップスは食べない。
そして久しぶりに物欲を刺激される街でもあった。アラビア、イッタラの食器にマリメッコ、ムーミングッズなど、日本でも人気のお店がたくさん。アラビア、イッタラの食器はディスカウントスーパーでかなり安く雑に売られていた。同じ街の正規店では同じものが定価で売られているのに!日本にこのまま帰るならいくつか買っていたかもしれない…でも割れ物で荷物を増やしたくないし買わなかった。
念願の本場のサウナ文化を体験した。まずは公衆サウナへ。学割とタオルを借りて15ユーロ。いくつか調べたら、燃料費が上がって閉鎖している公衆サウナもあった。ダブリンのニュースを見ていても思うが、ヨーロッパのこの冬の燃料費は一番の心配事だと感じる。私が行ったのは、Kotiharjun Saunaというところ。たどりつくと大きな看板と外で外気浴をしている半裸のおじさんがたくさんいてすぐにわかった。本場のサウナは最高の一言に尽きる。サウナハットをかぶり、大きな葉っぱの束を持ったサウナのプロっぽいおばちゃんがいて、話を聞くとロシア生まれでスウェーデンに住んでいるとのこと。葉っぱの束で体中バシバシたたいていた。葉っぱの名前は聞いたけど忘れてしまった・・・。スウェーデン人にサウナは理解されないと言っていた。広くて30人くらい入れそうなのに、数人しかいなかった。男性用のほうが混んでいそう。久しぶりのサウナで体中の細胞が生き返った気がした。シャワーだけじゃなくて、お風呂とかサウナとかそういうものがないと私は辛い生き物なのだなということを実感。
次の日。エアビーで借りたお部屋のお家はサウナ付きで追加料金でサウナを利用できた。使い方が細かくメッセージで送られてきてそれを読みながら初めて自分でサウナを用意して一人で入ってみた。といってもスイッチいれて待つだけで簡単だったけど。こちらも最高だった。サウナに入ってると何もかもがどうでもよくなる。家にサウナがあるって羨ましい…。
エアビーのお家も土足厳禁だったけど、この清潔に対する感覚は日本と近い気がした。綺麗好きな人多いのかな。
食事とサウナが良すぎて日本を思い出し、少しだけホームシックになった。
とはいえ、決定的に違うところもたくさんある。フィンランドの歴史をWikipediaなどでざくっと読み、古くはスウェーデンに支配され、ロシアにも支配された歴史があることを知った。ヘルシンキはスウェーデン支配時に作られた街だ。たしかに、美術館の説明など、フィンランド語、スウェーデン語、英語、ロシア語と並ぶところがあった。
そして国民のほとんどが英語を喋れる。だから語学学校にフィンランド人は絶対にいない。私がフィンランド語がわからないのがわかると、どんな年代の人でもみんなすぐ英語で喋ってくれる。びっくりしたのは路面電車にのっていたとき。おばあちゃんが揺れる電車の中で危なげに移動していた。すごく揺れたとき、たぶんフィンランド語で何かつぶやいたあとに、私の方をみてdangerousといたずらっぽく笑いながら言った。こんな独り言みたいなことをわざわざ英語で言いかえてくれるおばあちゃんがいるなんて?!と驚いた。もしかしたら先生だったとかすごい人なのかもしれないけど日本で同じことは想像できない。
自分達の文化を大事にしつつも、この外部に開かれている感じが日本とは全く違うと思った。日本は違うことに対して極度に不寛容な文化(そして結果人権が無視される)だと私は感じている。
日本にいると、どうしても海外=アメリカ(さらにイギリス?)というイメージがあったけれど(これほんと何度も思うんだよな・・・)、もし日本が何か目指すなら北欧のほうが現実的に近そうだし個人的には理想では、と思った。文化やイメージとしての北欧への憧れがなんとなく日本人にはあると思っていたけれど(もちろん私も含まれる)、納得した。北欧に行った人は北欧の良さを伝えたくなるだろうと思うし、少し似ている部分もあるから共感しやすい。それに対して、なんでも北欧の良いところを言うことを批判(揶揄)する流れもあるけれど、もっと冷静にどうしたら良いところを取り入れられるのか考えてもよいのではと思った。すごく極論を言うと、成功するか(努力すれば誰でも成功できるのだから)、いまいちな生活を送るか(その結果は自己責任とされる)みたいな価値観の世界は個人的には共感できない。このあたり、完全に感覚なのでぜんぶ「知らんけど」とつけて書きたい。
そういえば、ヘルシンキではホームレスを一人も見なかったのだけどこれもどうなっているのか気になる。ざっと調べたら、ホームレスの人にまず家を支援するという取り組みを政府がやっているらしい。2019年の記事で少し古いけれどこんな記事があった。
そしてヘルシンキ市のHPにもホームレス向けの住宅支援の情報があった。
https://www.hel.fi/helsinki/en/administration/administration/services/service-description?id=3066
あともう一つ気になったこと。フィンランドの人は消費に対してどういう態度なのか気になる。マリメッコの服を着ている人もたくさん見た(現地の人か観光客かはわからない)し、街にはお洒落な人が多い気がした(ダブリンと比べて・・・)。でももちろんマリメッコよりもセカンドハンドのお店が賑わっていた。これはダブリンもだけど、古着のお店が若者だけでなくいろんな年代の人で賑わっているのはいいなと思う。最近日本でしんどいなーと思っていたのは、とにかく買え買えというメッセージを感じること。これは私が東京に住んでいるのが悪いのだとも思う。たまに日本でテレビをつけたとき、食べ物か、激安のお店特集や買い物をする番組が多くて、買い物が楽しいのはわかるけどなんだかすごく疲れる。楽しいことは買うことだけ?と自分自身にたまに思ったりしていた。北欧のイメージとつなげられがちな「丁寧な暮らし」だって消費と結びつけられがちだと思う。丁寧な暮らしのアイコン的なアラビアのお皿。もとはそういうところから逃げるためのムーブメントだったのでは? 消費に自分が巻き込まれないために対抗する一番良い方法は自ら作ること、そして体を動かすだと思っている(こういう自分のための文章を書くことも私にとってはその一つ)。ダブリンに来てから週末ハイキングが好きになったが、フィンランドでもハイキングやピクニックは人気のよう。私はchikaさんのエッセイでフィンランド人の生活をちょっとだけ知った。ヘルシンキでは、泊まったところから歩いて5分ほどで小さな島に渡ることができて、そこを歩くのが気持ちよかった。街から近いところで自然を感じられるのは羨ましい。
chikaさんのこの本を読んだことが今回ヘルシンキにいこうと思ったきっかけの一つだった。第二弾の「移住決定編」も出たばかり。chikaさんの本は単なる北欧紹介ではなくて、生き方にじーんときてchikaさん自体のかっこよさに励まされるのでおすすめです。
フィンランドの人々についてもっと知りたいと思った旅だった。ロンドンもそうだけど、通りすがりの旅行者としての素朴な発見がたくさんあって、でも調べたり詳しいことを聞けずに終わるので、だいたいもっと知りたいで終わるこの日記・・・。
フィンランド、絶対また行きたい。今度はトゥルクや都市以外の森などに行ってみたい。飛行機からフィンランドを見下ろす景色は、湖だらけだった。9月末で木々は紅葉し始めていた。この木の形と色合いがムーミンの絵と一緒だなぁと思った。