人生の香り
太陽を吸収した布団。パリパリと乾いていて指で繊維をなぞると心地いい。そこに顔をうずめればあたたかい匂いがわたしを眠りへと誘う。
日常のひとかけらであなたの匂いや仕草を感じることができることがとても幸せで、明日もあなたに会えるという事実もまたわたしを幸せにさせる。
わたしの名前を呼ぶその声は太陽で、それを吸収する布団はわたし自身。混ざり合わない距離感がわたしは好き。ずっとこのままでいたいと今は思う。
あなたの優しすぎるところがわたしのどこをくすぐっていると思う?
あなたがわたしの頭の中に一日にどれだけ思い浮かぶと思う?
あなたはわたしの何を知っているの?
どうすればあなたのように分け隔てなく人を好きになれるの?
混ざり合わない、混ざり合えない問いを頭の中に並べていけばすっきりするものだと思ってた。
周りからの声は消えない。
消そうとしてもわたしの口は思わぬ方向へ動き出しわたしが加害者でわたしが被害者。
どんなに言葉を探してもあなたにぴったりの言葉は出ない。私にぴたりと合う言葉だって見つけられていない。
どんなに言葉を探してもセンスがないから出てこない。
どんなに言葉を探してもわたしが発すれば綺麗事になるのはどうして?
口が軽そうになるのはどうして?
考えても考えても言葉は出てこない。
庭に生えている死んだ曾祖母の植えた木は
はだかになってなまあたたかい風を通している。