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毒きのこの髪型問題

「右目の前髪だけ長いね」と笑う君の髪はしっかり切りそろえられていた。笑う君の顔が悔しかったので、
「君の髪型はフクロツルタケみたいだよ」
と煽ってみると、
「それって毒きのこだよね、俺毒きのこにはなりたくないなあ」と怒る素振りもなく笑った。そう口にした君こそが毒きのこだ。と言いたかったけれど、自分が悔しくなるのが嫌だったので言うのはやめにした。
「まって、俺きのこみたいってこと?」と少し焦ったように言ったので、お、やっと怒ったかなと思ったら、
「俺、そろそろ髪切るんだよね〜。七三分けにするの。どう思う?」と言った。それはまるでおいしそうなきのこだと思って食べたきのこが毒きのこだった時のショックに似ていた。私は口に含んでしまった毒きのこを噛み砕き言った。
「絶対にやめたほうがいいと思う」と。すると彼も毒きのこを食べてしまったような顔をして、
「え、俺そんな似合わない?じゃあパーマのほうがいいかなどう思う?」
今度は毒きのこを食べて、死にそうになる感覚に似ていた。
「君は君のままがいい。君はずっと毒きのこでいてほしい」と苦しんでもがきながら必死になって言う。
なぜこんなにも必死になっているのか。毒きのこだから触れられるようで触れられない。触ってしまえば、皮膚からえぐられて、私が死んでしまう気がしたので君には触れられないでいた。


「え?そこ戻る?やっぱ俺きのこ?」
私はあなたのことを毒きのこと呼ぶことにした。名前はきっともう呼ばない。

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