定型文を言いたくないの
「どうして人生で1番知りたいことを誰も教えてくれないんだろう」と誰かが言った。
「自分で気づくため」と声が太いおじさんが言った。
「ねえ〜ほんとそうだよね大切なことは教えて欲しいよね なんで一から考えないといけないんだろうね〜」とか細い声の語尾がやけに長く伸びるおばあさんが言った。
人は育った環境で得た価値観を自分のものとし、人に与える。それを誰かは愛と呼ぶらしい。と呟いた。
愛なんて後づけだって人間なんて所詮みんな自分が1番かわいいんだから、己の欲望より多く満たしてくれる相手を愛してしまうものだ。と巧は言った。
私は他人事のように人それぞれだなと快晴の空を見上げながら思った。
結局は人それぞれという言葉で全てが終わりを迎えることに酷く憎しみを覚えた。
それしか言えない自分にも。
人それぞれで終わりを迎えなければ良いだけじゃんと5歳の小さな男の子が言った。
5歳の小さな男の子が言うには生意気だなと思った。
空を見上げると大きな雲が私を包んでいた。