Netflixで『ROMA』を観てはいけない。
TOHOシネマズが6月から100円値上げするというニュースが出ました。
税込み価格であるにもかかわらず、消費税5パーセント時代から据え置きだった鑑賞料金。消費税率10%になってから上げたほうが世間の納得度は高かったんじゃないかと思う反面、最大手が率先して値上げしたことで、地方の小さい映画館なんかも値段を上げやすくなるのはいいことだと思います。つぶれてからじゃ遅いので。
ちなみに、5%→8%になるときは、「割引料金枠の値上げ」でしのいでいたようです。シニアとレディースに敬礼。
さて、このニュースへのリアクションとして「Netflix2ヶ月分じゃないか。もう映画館行かない(意訳)」というのが散見されたのですが、映画館とNetflixはまったく別物だと思うんです。クラブとSpotify……という比喩は近すぎて意味がないけれど、カレーライスとカレー丼ぐらい違う。本来皿にきれいに分けて盛って大きなスプーンで食べるものを、どんぶり飯にぶっかけて箸で食う。これはもう、物理的に同じなだけの違う食べ物です。
何でこんなことを書いているかというと、映画館で観た映画『ROMA』が本当にすばらしかったんです。「映画館で観た」というのがポイントで。
『ROMA』は『ゼロ・グラビティ』を監督したアルフォンソ・キュアロンの作品で、Netflixが配給元となっています。Netflixを通して全世界に配信されている一方、劇場公開はほとんどされていません。最初からネット配信専用。お手軽だけどちょっと味気ない感じです。小説で言えば、単行本が出ずにいきなり文庫化されているような状態でしょうか。
そんな作品がいま、イオンシネマを中心とした国内のいくつかの映画館でひっそりと劇場公開されています。この期を逃すまいと、平日の夜1時間弱かけて板橋のイオンシネマまで行ってきたのですが、本当に行ってよかった。
全編モノクロだし、BGMもないし、名のある俳優は誰も出ないし、半分ぐらいお屋敷内のシーンだしと本当に地味な映画で、正直好みの作品ではありませんでした。自宅で観ていたら、半分までいかずに挫折していたと思います。映画館という鑑賞が半強制される空間だから最後まで観られた。そしてちゃんと観た『ROMA』、めちゃくちゃよかった……。
これからアップリンク渋谷・吉祥寺、シネスイッチ銀座なんかでもやるようなので、気になっている方はぜひ劇場でご覧ください。先にNetflixで観て「観た」という事実だけに満足しちゃうとよくないので、いきなり映画館に行くのがおすすめです。
カレー丼より、カレーライスのほうがおいしい。