作曲・改訂年/2015/17-18 編成/トロンボーン独奏 演奏時間/約11分村田厚生 氏のために作曲。
English title: Rattling Darkness Year of composition and revision: 2015/17-18 Instrumentation: solo trombone Duration: approximately 11 minutes Written for and dedicated to Kosei Murata score image ©︎ Edition Gravis Verlag GmbH
作曲ノート これまで作曲をどうにかこうにか続けてこられたのは、作品がつないでくれた人たちと共有した時間、そして、そのなかでいただいた言葉が、節目節目で導いてくれたおかげだと思う。 村田厚生さんは、私にとってまさにそういう存在で、最初に作品を演奏していただいたのは、初めて参加した日本音楽コンクールの本選会、《Falling Garden》というアンサンブル作品だった。昔から何故かトロンボーンが好きで(今でもそうだが、どうも私は音を「曲げる」ことに興味があるらしい。)、翌年には、オーボエとトロンボーンの独奏を伴うダブルコンチェルト《Two Whales》を作曲した。(ちなみに、その当時、私は武満徹の『ジェモー』を知らなかった。この組み合わせは今までに無いだろうとの浅はかな考えで、オーボエとトロンボーンを独奏に選んだのだったが、後で知って、私ごときのアイデアなんてそんなもんだと、がっかりした覚えがある。)《Two Whales》も、日本音楽コンクールの本選会で、村田さんが独奏を引き受けてくださった。どちらも、自分が一体何を書いているのか、まだ全く自覚のないころの作品で、スコアは真っ黒、ただカオスな音響。しかも、初めてプロに演奏してもらうという洗礼を受け、リハーサルで大泣きした苦い想い出ばかりが残っている。そんな私に、村田さんは「二十一世紀の音がする」と言ってくださった。この言葉がどれだけ支えになったかわからない。 それから、トロンボーン独奏のための作品を、いつか村田さんのために書こうと思っていて、ダブルコンチェルトから九年経ち、ようやっと実現したのが《ラットリング・ダークネス》である。これを構想するのと同時期に、声明の為の大きな作品を書いていた。そのテキストに用いたのが、ネイティブ・アメリカンのナバホ族が砂絵の儀式に用いる『風の歌』『夜の歌』というチャントである。彼らの言語の意味や音を、彼らの感じるのとできる限り同じように体験したいと、チャントや砂絵の儀式について調べていて、「ラットリング・ダークネス」という言葉に出会った。「ラットリング」はガラガラヘビのガラガラの意味、つまり、「ラットリング・ダークネス」は、ガラガラの闇という意味。日本の、湿度の高い冷たい夜とちがう、ニュー・メキシコあたりの、乾燥したエンプティな夜。その闇に漂うチャントの声を思い出すように思い浮かべ、トロンボーンの音で翻訳するような作曲を試みた。 二〇一五年に村田さんに世界初演していただいたあと、大幅な改訂を施し、ほぼ別の曲となって、アメリカのボストンで、ウィリアム・ラング氏により改訂初演された。
Composer's note When I was considering this piece, Rattling Darkness , I was also creating an extensive work for Shomyo, Japanese Buddhist vocal music, at the same time. The texts used in that Shomyo work were “Wind Chant” and “Night Chant,” which are based on the traditional poetry of the Native Americans and which Navaho people use when they have their traditional sand painting rituals. So, I tried to know their thinking about their chants and feel their meaning and sound as Navaho people do. While studying their chants, sand painting rituals, and Navaho creation myth, I encountered the term “rattling darkness,” which means “shaking the dark.” “Rattling darkness” made me imagine dry and “empty” nights in New Mexico, unlike Japanese cold nights with high humidity. I imagined the voice of the chant drifting in the darkness of that empty night, and then I composed this piece as if translating their chants into the trombone sound.
Score (in preparation) Video Recording Performance history (As of 17 August 2022) New Chamber Music 2015 vol.2 〜管楽器を中心に〜 @sonorium (東京都杉並区和泉3-53-16) 演奏/村田厚生(トロンボーン)www.jscm.net/?p=3469
11 May 2018 - revised world premiere Infinite Divisions: Microtonal Works for Solo TromboneThe Lilypad , 1353 Cambridge St., Cambridge, MA 02139, US William Lang, trombonebostonmicrotonalsociety.org/index.php/upcoming-events/
18 December 2018 Will Lang’s Tuesday Night Mega Power ConcertsAreté 67 West St, Brooklyn, NY 11222, United States William Lang, trombonewww.aretevenue.com/events/
[online concert] 15 June 2020 - Online European premiere SMOG online Marco Fusi, violinwww.smogmusic.org/2020-06-15.php
2019年7月19日 - 改訂日本初演 影も溜らず — 淡座リサイタルシリーズVol.1 桑原ゆう個展 @東京オペラシティ リサイタルホール (東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワーB1F) 演奏/村田厚生(トロンボーン)awaiza.com/schedule.html#19Jul2019
3 March 2020 Versipel New Music presents Will LangHotel Peter and Paul , 2317 Burgundy St, New Orleans, LA 70117, US William Lang, tromboneversipel.org/events/