【それほど厳密に分けなくても良いのでは?】
造園学の中で林学をやっていると,ランドスケープで樹林を扱う場面によく遭遇します。面白いことに,その度に周りの方から「ここは施業林ではないので,林学の考えは持ち込まないでください」と釘を刺されます。なるほど,いわゆる造園的な「樹林」と「施業林」はその目的からして全く異なるため,ごもっとも,とダンマリを決め込むシーンは結構あります。しかし,広範囲な樹林管理になると,そうも言ってられない場面が結構出てきます。樹林管理のための伐倒木の選木など,割と林業的選木と親和性が高く,こと樹林管理に関しては,そんなに綿密に分ける必要があるのかなぁと,ずっと思っていました。林業の友人の半分くらいは,造園関係の仕事もやっていて,割と素敵な樹林を作っているのもその証左です。林業の技術は実は結構色々あるんですよ。
さて,今年の春ごろは機会があって,私の研究対象でもある「森林美学」と近代造園学との関係について調べていた中で,ちょっと面白いことがわかりました。アメリカの近代林業の発祥は,ビルトモアという場所での森林造成なのですが,実はこのビルトモアは鉄道王ヴァンダービルトの邸宅を中心とした広大な土地で行われた一大ランドスケープ計画のプロジェクトでした(1888-1914)。つまり,米国での林業は,ランドスケープ計画に内包されて発祥したとも言え、初期の林業とランドスケープは,さらにビルトモアと同時期にボストン市の緑地計画(1883-1897,かのエメラルドネックレス)の中でも融合的に計画されます。都市外縁の森林を,緑地として取り込む計画が提案されたのですが(reservation forest),その際に,景観と生物を保護しながらも,木材生産を行う…そんな提案が計画者のチャールズ・エリオットよりなされました。
アメリカでは林業とランドスケープは,その成り立ちの時期は蜜月の関係を持っていたようです。他国の歴史ではありますが,ランドスケープ自体,日本は当初はアメリカからの輸入ですので,日本に導入された当時も,同じような感じだったのかもしれません。かの明治神宮林が,林学者たちによって作られたのに,「造園の発祥」と言われていることですし,あまり造園的,林業的と区分けすることもないですよね😊
その辺りのことを,小さな論文にしました。もし良ければご笑覧ください。
https://nagoya.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=30509&item_no=1&page_id=28&block_id=27&fbclid=IwAR2LztYGlVCdFiBvbvtN01J0X6JVncznHjflwzv-pKFH6WtlkeAJGofvjhs