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ライフキャリア・レインボーへのまなざし

ジョブコーチ・フォローアップ研修 実践報告発表原稿 2021/11/27

「納得」の質を高める個別支援
ライフキャリア・レインボーへのまなざし

1. 当社のキャリア支援と社員のキャリア意識

当社は、職場環境改善や社員の能力開発を進めており、キャリア形成についても、障がいのある社員の役職者登用や等級制度整備・運用を行い、個人業績目標・成果シートや自己紹介・能力開発シートをもとに全社員個別の定期評価面談を親会社同等に実施している。各種社員教育体系についても整備・運用している。一方、社員のキャリア意識は、多種多様な障がいと個人の生活に応じて異なり、キャリア支援は個別性への対応が必要な状況である。

2.企業在籍型ジョブコーチとして、キャリア支援に関し考えていること

(1) 就労定着の質を高めるためのキャリア支援の必要性
私は、専任ジョブコーチ就任以来5年間、採用活動および職場定着の支援に注力してきた。また支援専門職として、産業カウンセラーやエンプロイメント・スペシャリスト(ES)の資格を取得し研鑽を積んでいる。年間約500回のジョブコーチ・社員面談を実施し、管理職兼任ジョブコーチ(業務責任優先)や社内外支援者(医療・福祉・就労生活支援・家族等)と連携協力して「定着支援の仕組みづくり」を進めた結果、就任した年以降5年間に新規採用された17名の社員(精神10、発達3、身体4)全員が定着就労している。定着支援に一定の目処がつく中、就労定着の「質」を更に高めるためにはキャリア支援が必要と考えている。

(2) 役割意識と納得感の向上を重視した支援の必要性
産業カウンセラー養成講座の中で、ライフキャリア・レインボー(ドナルドEスーパー氏のキャリア理論)について学び、キャリアについて「役割意識」の重要性に着目した。その学びを活用し、障がい特性を含む「自他の比較」による社員の不満や悩みに対し、他人と比較せず「自分の役割」を意識し集中することを支援している。また、社員個別のキャリア意識に対応して支援するためには、本人及び関係者の「納得感」を重視する必要があると考える。関係者とは上司、同僚、家族などである。本人だけでなく関係者も含めた「納得感」が、「自分の役割」を意識し集中するためには必要であると考える。また「納得感」は昇給・昇格の仕組みを整えるだけでは充足することが難しい。誰もが望み通りに能力を発揮し昇給・昇格できるわけではないからである。だが「納得感」は個別・多様であり、必ずしも昇給・昇格を必要せず、柔軟性と可能性があると考えている。

(3) ワーク&ライフ・キャリア支援の必要性
納得感向上のためにはワーク、ライフ両方の支援が必要(仕事と生活は表裏一体)と考えている。特に困りごとを抱え支援が必要な人は、生活上のストレスが就労に影響し易い面があり、ライフキャリア支援の必要性が高いと言える。ワークキャリア(職場における役割)については、ジョブコーチ・社員面談で本人の思いや悩みに対応(傾聴→認知行動療法→連携支援)し、会社に都度報告・助言している。ライフキャリア(家庭、社会、人生における役割)については、ジョブコーチ・社員面談で同様に対応し、必要に応じて適切な支援者につなぎ、協力して支援するように心がけている。また、加齢による障がい進行により退職時期が早まるケースも起き始めている。退職後のライフキャリアビジョンを本人、家族、医療、福祉、就労・生活支援、職場など関係者で共有しながら、安心して就労することを丁寧に支援したいと考えている。

3. おわりに/納得の質を高める個別支援

キャリア支援の答えは1つではない。本人と関係者により、ケースごとに答えは異なる。関係者と協力して「個々の社員の答えを共に探す=納得の質を高める」個別支援の必要性を実感しており、今後より力を入れてゆきたいと考えている。

以上

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