【6分で理解】さくっと、電力供給の事業とスピリットと歴史
電力供給について理解したことを、以下の通りまとめます。
なにが起きているの?
ここ5、6年の間に、電気をはじめとしたエネルギーに関する話題を耳にする機会が多くなりました。電力料金を下げるために電力会社を切り替えるとか、タダで太陽光パネルと蓄電池を設置したなどというものから、太陽光の発電コストが原子力のそれよりも低くなったとか、化石燃料を使った発電プラントには開発資金が集まらなくなったなど様々です。
国内の動きの背景には、2013年から準備が進められてきた電力システム改革があります。
2016年 電力小売全面自由化
2020年 送配電部門の法的分離
その他、各種電力関連市場の創設、OCCTO設立など。
これまで旧一般電気事業者が担ってきた電力供給は、電力システム改革によってより多くの人の携わるものとなりました。電力供給事業の新規参入事業者はもちろん需要家(電力供給における消費者)にとっても身近なトピックスとして、電気の使い方・選び方、そして電力供給というビジネスそのものが語られるようになりました。
なぜ変わらなければいけないの?
電力システム改革はなぜ必要なのでしょうか。第一次改革は1995年に始まりましたが、今回の電力システム改革については既存の電力供給事業(発送配電一貫、地域独占、ユニバーサルサービス、統括原価方式)の限界に加え、東日本大震災直後の需給逼迫が議論の発端になっているようです。電力システム改革が実質的にスタートした2016年以降も、全世界的な動きとして気候危機を背景とした脱炭素に向けた動きが加速したり、異常気象による災害時のレジリエンス強化が具体的に議論されるようになり、電力システム改革中も新たな電力供給及び需要のあり方が議論・検討されてきました。その様子は、経済産業省の研究会資料などで確認できます。
電力供給事業のあり方そのものの改善に加え、再生可能エネルギーの普及促進や電力供給網の強靭化(=分散の促進)が必要とされる中で、電力会社(=旧一般電気事業者)のみが電力の安定供給やレジリエンスに責任を負ってきたこと自体が見直され、世界全体の持続可能性やライフスタイルの変容を踏まえて、より多くの人が電力供給のあり方を考えて参画することが可能になったと言えます。
これまではどうしていたの?
明治の始めに日本に電気と電力供給ビジネスが入ってきた頃は、たくさんの電力供給事業者が乱立していました。ただ、電力供給ビジネスは規模の経済を効かせるタイプの事業であり、また同時に人々の生活を支える重要なインフラ事業であったため、確実に安全に安定して電力を供給できるように、地域ごとの旧一般電気事業者(当初9社、のちに沖縄が加わって10社)の地域独占とされてきました。統括原価方式(電力供給に必要なインフラ投資・維持費用を需要家も負担する)がとられ、国土の隅々まで安全に確実に安定した電気を供給する(ユニバーサルサービス)という電力供給のスピリットが確立していきました。
電気を作り(発電)、作った電気を安定的に送り(送配電)、確実に需要家に届ける(売電)という電力供給ビジネスの三大要素は、ライフライン提供の責務を負う電力会社によって、事業効率をあげるために全て一貫して行われてきました。電気の特性を鑑みると、需要家の需要動向や事業環境に見合った各種発電手法のバランス、安定供給のために必要な巨額の設備投資などの様々なファクターを全て正確に把握した上で、総合的に判断して事業としての最適解をだすことが必要になるからです。
もっと簡単にできないの?
温室効果ガス削減のために再生可能エネルギーを増やすこと、レジリエンスを確保するために分散型のエネルギー供給体制を実現することについては、技術的に全く不可能なことではなく、「なぜもっと早く実現できないのか」と感じることもあるかもしれません。一方で、発電が自然環境任せの再生可能エネルギーが増えていくと電力系統(送電線、配電線など)にかかる負荷が高まって安定供給が実現できなくなるなど、それぞれに解決すべき問題があります。
電力供給の仕組み、電力供給ビジネスの成り立ち、電気の特性、各発電手法の長短を踏まえ、持続可能な経済活動及び人間としての営みを実現できるように、様々なところで実証実験が進められています。
参考