技術士の視点で非技術者として生きる(後編)
電気新聞に取り上げて頂いた電設資材アクセの直近の状況についてまとめました。今後の展望や2020年4月に経営工学部門で一次試験に合格した技術士についても記載していきます。前編はこちら。
進むと見えてくること
多くの方と触れあう中で、今後の展望が見えてきました。
発電所の運転停止や酷暑・厳冬による節電要請を受けて、電気などのユーティリティは自分でコントロールすべきものとの認識を得た方も増えている中、ユーティリティとのかかわり方に重点を置いた生活スタイルの変容に係るビジネスについても、国内外や分野を問わず調査をしたり海外技術士とのワークショップを開催したりしていきたいと思います。
SNS等を通じて個人による発信が容易となり、また、縁が無く触れてこられなかった分野の知識や実務経験を積める機会が増えてきている状況を活かし、個人のパッションや隠れていたスキルを活かせるようにしていきたいです。
技術士の多様性
私の学歴は人文科学の学士で止まっています。学生時代には他大学に出向いて自然科学系の単位を取りましたが、技術分野での実務経験を積むことは叶わず、一般的なイメージの技術士とはかけ離れたキャリアを積んできました。ただ、これまでお会いしてきた技術士の方々とのやり取りから、『高度な知識と実務経験を持ち、常に最新の情報・技術をアップデートし、新たに起こる問題の本質を捉えて課題に取り組み、常に環境の改善と生産性の向上が実現するよう働きかけ続ける存在』が技術士だと認識しています。
自分自身は技術士ではありませんが、技術士の視点や姿勢を自身が興味を持った技術分野やひいては日常生活にまで適用することが日々の生活を豊かにすると考えます。また急速に変化する環境の中で、技術士の活動自体もより多様になっていくと考えます。
技術士であっても基本的に専門とする部門以外において技術士としての活動をすることは認められていません。しかし、他部門の技術や考え方を知ることで、自分の部門における課題解決のヒントを得たり、他部門の技術士など専門家の協力を得やすくなることが想定されます。自然科学以外の分野からの学びも同様です。趣味でインドの伝統舞踊や伝統音楽を学んでいますが、アートにおける理論や海外における物事の捉え方を知ると、対象の見え方が変わっていきます。日常生活で接するあらゆる物事から仕組みを抽出して応用していくことが可能です。
個人での活動がより自由に行えるツールや仕組みが整っていく中で、企業内技術士であっても個人として活動される方や独立技術士も増えているのではないかと思います。技術士になるまでの過程やなってからの活動内容は人によって異なります。技術士の行動原則にのっとって個々人がその違いを発信していくことで、国内外問わず技術士間の経験のシェアが進み、公益に資する活動につながると考えます。
対立から融合→新たな価値の創出へ
電力システム改革では、電力供給事業・電力業界の改革が進む中で様々なバックグラウンドの人間がかかわることを想定しています。私が体験したような新規参入者側の戸惑いや葛藤があり、一方で旧一般電気事業者側の戸惑いや葛藤があります。技術士を取り巻く環境も徐々に変わっていますが、他部門や海外の技術士との交流や他の専門性を持つ人材との接触の中で、公益に資する技術士の在り方もより柔軟にまた多様になっていくのかもしれません。
アクセサリー制作を通じて得た様々な機会を経てごく自然に、『旧一般電気事業者の築き上げてきた電力安定供給のスピリットを尊重しながら、電力安定供給の新しい仕組みを一緒に作ることはできないか。主体的に電力安定供給に直接・間接に関わる人々の層を厚くすることに携われないか』という課題を認識するようになりました。この課題に技術的な観点で関わることは叶いませんが、技術的な実務経験がなくとも、常に知識をアップデートし、技術士の視点を持ってこれからも活動を続けていきたいと思います。
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電気工事士実技試験で使用する工具、電線、電気材料を使用して作成する『電設資材アクセ』を通じて、電力の安定供給に携わる方々へのリスペクトを示し、様々なバックグラウンドを持つ人が主体的に電力供給事業にかかわるきっかけになることを願って、活動しています。
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