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yuon(ゆおん)
2023年6月11日 17:35
カウンターの上に個性豊かなお皿やカップが並ぶ。ポスターを作るために、私ともみじさんが選びだした逸品だ。どれも紹介したいものばかりで、なかなか絞り込むことができない。本当は全部ポスターに載せたいと思うほど、魅力的だ。けれど数が多いと、その分、写真も小さくなってしまい、魅力が伝わらない。「どうしたものでしょうか……」 もみじさんも腕組みをして悩んでいる様子。自分と友達とで一生懸命作ったものであれ
2023年6月7日 22:39
「来ませんねぇ」と、私。「来ませんねぇ」と、もみじさん。 ここは商店街からちょっと外れた場所にある雑貨屋『このは』。 今日は土曜日。 私と店長のもみじさんは、お店のカウンターで二人並んで窓の外を見つめていた。お客のいない店内には、雨が奏でるBGMが静かに流れている。 本業が休みだった私は、いつお客さんが来ても大丈夫なように、朝からもみじさんと店の掃除をし、レイアウトを整え、接客の練習をし
2023年6月4日 20:25
「お先に失礼します」少し緊張しながら、私は部署を後にした。「お、森山さん、今日は早いね」休憩室の自販機の前にいた先輩が笑顔で言う。「はい。ちょっと勉強を始めたので」ーー嘘ではない。一瞬、「ボランティアをすることになった」と言おうかと思ったけれど、雑貨屋『このは』で働く事は、もみじさんのためというより、私のためだ。そこで出てきたのが「勉強」という言葉だった。「森山さんは偉いなぁ。真面目だ
2023年6月3日 19:53
いつもの帰り道。人通りもまばらになった駅前の商店街を抜けてアパートを目指す。就職してから5年目。通い慣れたいつもの道。頭の中は仕事、仕事、仕事。その隙間に、申し訳程度に、推しの新曲と今日の夕飯の心配が浮かぶ。別に仕事が嫌いというわけではないが(かといって一生をかけたいと思うほどの情熱もない)、ここまで仕事中心の日々が続くと、ふと心にすきま風を感じてしまう。ーー私、ずっとこのまま、仕