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ケムリクサは繁殖を生活環レベルで止められている説


前稿「ケムリクサは培養増殖が基本である説」でも書きましたが、ケムリクサ第七話で僕が気になっていたこととして、ケムリクサが地面から勝手に生えている理由を考えました。仮説2個目です。前回とちょっとかぶります。

Screenshot_2021-01-07 ケムリクサ Episode 7 アニメ 無料動画GYAO 7

気になったのは、

・ケムリクサって生殖するのか?
・葉だけ生えてるの?

の二点でした。本稿では、ケムリクサの自生は許すとして、生活環のどこかで止められている仮説を提唱します。

その仮説とは、

ケムリクサは、雑種や変異や進化しないために、生活環が進まないように、雌雄いずれかのみが育てられている

というものです。

有性生殖はケムリクサには不向き

前項で詳しく書きましたが、有性生殖を行うと、変異や進化を促してしまうのでケムリクサは有性生殖を避けるべきだと考えられます。


生活環

高校生物で習った人は覚えていますよね。動物や植物において、繁殖をするときに遺伝子の意義・状態が変化することに注目すると、「生活環」という繰り返し変化が起こっています。簡単に言えば、

細胞がオスのみ・メスのみに特化する性特化世代と、細胞が「メスメス」「オスメス」の複性世代を交互に繰り返す

というものです。ここでは生物を習っていない人にもわかりやすくなることを意図して、有性世代を性特化世代、無性世代を複性世代と言い換えています。例えば、シダ植物では左の一般に見られる状態が無性世代(複性世代)です。性がないのではなく、一個体の中に雌雄が同居しています。ですから、この株が一個だけあれば、理論上はいくらでも増えます。右側は前葉体といい、雄組織と雌組織に分かれています。シダ植物の多くは前葉体も雌雄同体ですが、

ツイッター用ネタ画像_ケムリクサ有性生殖-1

ツクシの仲間は前葉体が2種類に分かれています。僕のイメージとしては、ケムリクサは前葉体のような状態で収穫されているのではないかと思っています。雌雄どちらかのみを蒔くのであれば、勝手に増えたりはしませんので。

ツイッター用ネタ画像_ケムリクサ有性生殖-2

補足すると、
我々人間の体は、複数の性が共存しています。男性は、男性の性決定をするY染色体と女性の性染色体であるX染色体を持ちます。つまり、遺伝子としては男+女。女性の場合は、性染色体は二個ともX染色体です。つまり女+女。このように、性を決定する遺伝子は2つあります。この状態を無性世代、複相といいます。性があるのに無性世代なんて名前をつけたのは紛らわしさの極みなので、ここでは複性世代と表記してみます。
そして、生殖の際には特定の性別に特化します。精子はX染色体かY染色体をどちらかひとつだけ持ちます。つまり、特定の性のみに特化します。性特化世代では、とにかく生殖のみが目的です。生殖できなければ人生そこで終了です。ですから、一般的にこの世代は短い方が好ましいです。複性世代のうちに努力して体を成長させ、生殖能力を高めてから、精子と卵子の結合を一気に決めるのが最も機会損失が少なくなりますので。

植物の場合も、特定の性に特化した状態は花粉や卵細胞のみ、と限定的で、あとは大きな体を作ることに力を注ぐことが多いです。

生活環のどちらかで止める

例えば、ケムリクサがコケ植物のように配偶体が雌雄に分かれる場合は、雌雄どちらかだけを栽培している限り大人の体(胞子体)に移行できません。

ツイッター用ネタ画像_ケムリクサ有性生殖-3

受精して発芽できないからです。

ツイッター用ネタ画像_ケムリクサ有性生殖-4

同じく、ケムリクサがシダ植物のツクシのようなタイプだと、前葉体の雄雌どちらかだけを栽培している限り、胞子体には移行できません。

同様に、被子植物のイチョウのように雄木と雌木に分かれるタイプ(雌雄異株)であれば、受精できずに体だけ大きくなります。

キイロ

また、何らかの方法で花のような生殖器官をつくれない、あるいは機能しないように品種改良することもできます。「ケムリクサは培養増殖が基本である説」でも紹介した「不稔性個体」というやつで、これもいわば繁殖能力を欠くことで生活環を断つ技術です。

雌がいないキンモクセイ


実は日本にはもうそういう植物がいくつか知られています。キウイにオスメスがあるのは有名な話ですが、キンモクセイもオスメスがあります。そして、キンモクセイのおかれた状況が、まさに生活環の断絶なのです。キンモクセイの原産国は中国で、中国にはオスメスあるそうです。一方、日本にはキンモクセイの雄木しか入ってきていません。雌木を輸入すれば実はつくはずですが、花の立派さも香りの強さも雄木が優れているため、余り需要はなさそうです。またすぐに挿し木できるので増やすときにも雌木はいらない模様。こうして、日本のキンモクセイは、実質的に有性生殖できず、人間による挿し木によってのみ株を増やします。この状況、男性である僕としましては、大いに同情するところです。もしも人間がキンモクセイの挿し木増殖をやめれば、遠い未来には日本においてキンモクセイは絶滅するかもしれません。

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このような形で管理するならば、ケムリクサは「植えた株数だけ育つ」「勝手に繁殖しない」「性質が変わらない」という非常に便利な状態になります。例えば、ワカバがもっていたミドリの種子、これが単性の雌の胞子のようなものであれば、どんどん成長はするものの、繁殖はしません。

葉単体で生えているケムリクサは、どことなく前葉体のようにも見えます。


まとめ(前のやつも含めて)

ケムリクサをやたらに増えたり雑種を作ったりしないように管理するには、以下の方法が考えられます。

ケムリクサを増やすときは無性生殖とし有性生殖をさせない
有性生殖をさせない方法としては生活環を切断するのも有効
具体的には、
  ・ケムリクサを不稔性個体に品種改良する
  ・ケムリクサの生殖器官の発現を抑える(ホルモンなど)
  ・挿し木、組織培養での増殖
  ・雄性のみ、あるいは雌性のみの種子を蒔く

といった手があります。ただし、この方法にもデメリットがないわけではありません。つづきはまた今度。

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