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Love wins allと耳の不自由なわたし


今春、わたしはJKになる。


生まれつきの難聴、先天性難聴であるわたしは、もうすぐJKになる。

それなりに学校生活をこなし、勉強をこなし、オタ活という名の趣味を楽しむ。そんないたって普通の生活をしてきたし、JKになっても変わらずそうやって過ごすのだろう。





わたしは、補聴器をしている。

補聴器をしていても他のみんなより聞こえないし、周りがうるさいときは補聴器をしていたとしても友達の言葉を一度で聞き取れない。
補聴器を外したら2m以上離れて会話ができないし、ささやくような小さな声で咄嗟に話されても反応できない。

それでもわたしは、恵まれているほうだと思う。


生まれてから15年間、わたしの記憶する限り
この障害を持っているためにすごく嫌な経験をしたことはない。
耳が聞こえないことを馬鹿にされたことはないし、イヤホンと間違えられて理不尽に怒られたことはないし、意地悪な人に数十万円する補聴器を壊されたこともない。

耳も、全く聞こえないことはないし、1日中補聴器を外して過ごせと言われても 死にやしないだろう。




それでも、みんなと”少し違う"ことに悩まされてきた。
理不尽でも不自由でもないけれど必ずある、みんなとの違いに、疎外感を何度も感じてきた。


補聴器をしているから話せないという偏見で、話しかけられないこと。
将来、難聴という障害の名のせいで人より苦労することになるかもしれないこと。
難聴が"触れづらいこと"と思われ、相手に過剰に気を使わせてしまうこと。





わたしはみんなと同じように
音楽がすきで、韓国がすきで、話すことがすきだ。





IUの新曲 "Love wins all" のMV。
耳の聞こえない女性と片目の見えない男性が、謎の物体に追われるストーリー。


様々な考察がされているが、わたしが特に刺さったのはこれだった。

もしこの考察が当たっているのなら。
わたしはこの考察からMV全体をこのように捉えた。


ふたりはそれぞれ、心や身体に不自由がある人々のうちの一人であり、不自由のある人を消してゆく謎の物体(差別や抑圧)に追われている。

物体から逃げる途中で見つけたビデオカメラは差別・抑圧のない美しい世界を映し出し、二人はそのビデオカメラの映し出す世界で
自分の体の不自由さを理由に許されなかった楽しい時間を送る。

しかし再び謎の物体は現れ、ふたりは最後までお互いを支えながらその物体と戦う。

最後ふたりがどこかに消されてしまうことを、差別・抑圧に負けてしまったバッドエンドと捉えるか、あらゆる差別・抑圧から抜け出し自由になったハッピーエンドと捉えるかは視聴者次第なのだろう。




たとえこの考察が全くの見当違いだったとしても、このMVの主人公は耳の不自由な女性と片目の見えない男性であることに変わりない。


平和を謳っておきながら、未だに続いている虐殺、紛争。あらゆる差別と抑圧。
当事者でない人は気にせずに生きてゆくことができて、当事者とそれを知る人だけが声を上げるしかないこの世の中が、わたしは憎いし きらいだ




わたしは救われた。
わたしの大好きなひとたちは、大きな影響力を持つひとたちは、
この世の中に疑問を持ち、なにか変えようとしてくれているのかもしれないということ。



全く聞こえないわけではなくて、でも補聴器をしていて、みんなと同じように生活しているなかで少しハンデがあるだけ。
曖昧だからこそ、自分でもどこまで自分を障害者と思っていいのか分からなかった。
どこか自分の居場所がないように感じていた。


この音楽が 世の中を急激に変えることも、わたしの難聴を治すこともできやしないが。

それでもたくさんの人が、差別と抑圧に溢れる
この世の中に気づくきっかけになったのではないかと思う。




音楽を愛すわたしは、音楽への愛のおかげで
ずっと感じていた苦悩から少し解放された。

Love wins allとは、
こういうことなのかもしれない。



自分の障害についてこんなに真剣に向き合ったのは、今日が初めてだったように思う。



いつもわたしのだいすきな人たちは、わたしに夢を見せてくれる。
わたしの成長のきっかけになってくれる。




いつか、あの物体のような大きくて力強い
あらゆる差別・抑圧が、

複数人の中から補聴器をしている私を選んで道を聞いてくれたあの外国人観光客のような
いきなり預けた補聴器を、大切に持っておいてくれたあの後輩のような
いつも私の耳のことで気にかけてくれる親、先生のような

心の広く 人間・命の尊さのわかる人たちの強い思いに負ける日が来ることを、わたしは強く願っている。



今日もわたしは、
数え切れないほどたくさんの感動と学び・成長のきっかけをくれた わたしのだいすきなひとたちにふりかかる、差別と抑圧への勝利のために
力強く生きていくだろう。




2024.1.25   るじゃ

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