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がんばったからどうか買ってほしい『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』のブルーレイについて
前回の記事でつらつら「ブルーレイオーサリングのしんどみ(バージョンアップを止めてしまったAdobeのせい)」を書き連ねましたが、お仕事なのにそんなこと言っちゃダメですね。いまの時代にブルーレイ、が「実はわりとお手頃でステキな『形に残るもの』」になれるように、オーパーツと向き合いながら格闘した数週間でした。
というわけで「めっちゃ頑張ったからせめて売れますように、届きますように、流通しますように!!」という願い(血の涙を流しながら)を込めて、一部劇場限定で発売されるアニメーションのブルーレイについて、そのセールスポイントを書きつらねます。劇場に行ったら買ってくれ!!!
『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はカナダの映画監督、フェリックス・デュフール=ラペリエールによる長編作品。着彩までフルアナログの、全編手描きアニメーションです。あす9月12日からシアター・イメージフォーラムで上映開始を皮切りに、全国を巡回します。イメフォをはじめ、いくつかの劇場でこの本編+特典つきブルーレイが置かれます。
そもそも(これを配給している)ニューディアー、かつては超売れ線の傑作『父を探して』を配給しながらも「海外長編アニメーションブーム」にはちょっとタイミングが早すぎてしまって、今ようやく『ロング・ウェイ・ノース』とか『羅小黒戦記』とか『幸福路のチー』(傑作!)のおかげで「ポップな海外長編アニメブーム」が来ている――と思ったらこのような地m……いや、渋い見た目の映画を全力で配給するのですから実はドMなのかもしれません。
たぶんだけれど、ニューディアーが見ているのが今のブームの「さらに先」。『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』は、主に実写映画のコンペティションで大きな反響を得たという「まるで実写映画のような感覚を得られるアニメーション映画」。いまようやく市民権を得つつある「長編アニメーション」の枠を、さらに大きく広げる内容になっているのです。
一方で「アニメーション」でしかなしえない、「絵」と「ホンモノ」(実在、あるいはバーチャル)が自分の頭の中でフラフラと行き来する不思議な感覚が、ストーリーやテーマにぴったりマッチしている映画でもあって。
グレーで、淡くて、どっち側にも片寄れない、けれど前に進むために――言葉とヴィジョンを交わす中年男性と中年女性。とても静かで寡黙な映画なのに、なぜか見れば見るほど、誰かの感想を読めば読むほど、どんどん重層的に読み解けてくる優れた小説のような映画です。
あーここまで書きすぎた。こんなに書く予定じゃなかったのに。語りたくなるんだよなぁ、これ。
ブルーレイには本編はもちろん、フェリックス・デュフール=ラペリエール監督の日本独占インタビューが30分以上も収録されているのが大きな目玉です。
このインタビューが素晴らしいんだ!! 映画本編がさらにさらに深みをもって立ち上がってくるだけじゃなく、アニメーション映画がいま「本当に」面白い理由、アニメーションという技術へのさまざまな示唆や、意外なところでは#BlackLivesMatterの話まで(そう、世界を変えようとする市民運動とデモのお話でもあるのです、この映画は)。これをこのまんま大学の特別講義として流してもいいんじゃないかなって思うくらいの内容。もちろん日本語字幕完備です!! 何度も言いますが、今回のロードショーのために収録された日本独占インタビューですからね! パンフレット代わりに買ってね!!(あ、パンフレットも別にあるのか)
それと、監督からのいただきもの映像ですがメイキングと、あとせっかくということで、ニューディアーが配給してきたすべての長編アニメーションの予告編集も一緒に入っています。計20分くらい。「なんか色んな長編アニメがあるんだなぁ」と思ってほしい、というボスの意図らしいですのでこちらもぜひ。あと実はぼくが作った予告編もこの中にはあるので、沼田友予告編作品集のような趣きがあってなんだか恐縮です。全て公開年などのデータつき。
これで誰も買ってくれなかったらチョットさびしいので、映画館に行かれましたらぜひブルーレイもチェックしていただけたら(僕がひっそりと)嬉しいです。3500円(税込)とのことです。
(ホンモノはもちろん素敵なジャケット+ケース入りです)