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一人当たり子育て支援規模が OECD トップのスウェーデン並み、というのは誇大広告なのか?
はじめに
X (旧 Twitter) にて、「一人当たりスウェーデン並みという主張なのに、実際のところスウェーデンとは全然違う」 という投稿があった。
というか一人あたりスウェーデン並みとの主張なのに
— いかりぼし🫒🐱 (@ikariboshi1) November 1, 2023
片やスウェーデンは大学まで公立私立の学費が博士課程まで無料で生活費の給付まである
日本は高校から有料で、大学は殆ど全額負担で給付など無いわけです
結果がぜんぜん違うのですが、お金はどこに消えてるんですか? https://t.co/SpjEIWHEY0
本投稿は、この 「スウェーデン並み」 について調査するものである。
結論と概要
本文が長いので、最初に結論と概要を書いておく。 詳細を知りたい方は本文を参照されたい。
本投稿の結論としては、「仮にこども・子育て支援加速プランで家族関係社会支出が 3.5 兆円増えるとすると、18 歳以下人口一人当たりの家族関係社会支出がスウェーデン並みになるというのは (多少誇張はあるものの) 正しい」 が、「こども・子育て支援と家族関係社会支出は同じものではない (家族関係社会支出がスウェーデン並みになったからといって、こども・子育て支援の規模がスウェーデン並みになるとは限らない) ので、『こども一人当たりの子育て支援の規模はスウェーデンに達する見込み』 というのは誇大広告と言えるのではないか」 である。
本投稿全体の概要は次のとおりである。
「こども未来戦略方針」 で示されている 「こども・子育て支援加速プラン」 によって家族関係社会支出が 3.5 兆円程度増えるとすると、18 歳以下人口一人当たりの家族関係社会支出の額がスウェーデン並みになる見込みと言われている
ざっくり計算してみると、スウェーデンでは約 100 万円/人 (1 クローナ = 13 円計算) なのが、日本だと 78 万円/人程度になりそうであり、胸を張って 「スウェーデン並み」 と言えるほどではないとは思うが、ある程度近い水準にはなる
家族関係社会支出の中身には、児童手当や就学前教育・保育、出産や育児休業に関する手当が含まれているので、それらの面でスウェーデン並みになりうる可能性がある、と言える
ただし、家族関係社会支出には上記以外にも介護休業手当などの家族関係の社会支出が含まれるし、また、家族関係社会支出には子育て支援の一部しか含まれていないため、家族関係社会支出の総額だけで子育て支援の規模を語ることはできないことには留意が必要である
具体的にいうと、例えば教育費は (就学前を除いて) 全く含まれていない
そういう点を踏まえると、『こども一人当たりの子育て支援の規模はスウェーデンに達する見込み』 という表現は誇大広告だと言っても良さそうである
ちなみに、2019 年時点での家族関係社会支出を日本とスウェーデンで比較すると、次のようになっていた
児童手当は同程度の水準
出産や育児休業に関する手当や就学前教育・保育に関する支出は圧倒的に日本の方が少ない
日本の分類では 「社会福祉」 というざっくりした括りの項目で多額の支出をしていたり、目的別ではなく制度ごとなどの実装寄りの項目分けがなされている (例えば健康保険の保険者ごとに支出を集計している) ので、(OECD の統計データだけでは) 具体的に何に使われているのかわからないものが多い
一人当たり子育て支援規模がスウェーデン並みになる、というのは本当か?
OECD トップのスウェーデン並みという言説
冒頭で紹介した通り、X (旧 Twitter) にて、「一人当たりスウェーデン並みという主張なのに、実際のところスウェーデンとは全然違う」 という投稿があった。
この 「スウェーデン並み」 というのは、「【こども未来戦略方針】 子育て世帯の家計を応援」 という政府広報の動画で紹介されている 『こども一人当たりの子育て支援の規模は、OECD トップ水準のスウェーデンに達する見込み』 と言われていることに対する言及である。
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ちなみに、スウェーデン水準というのは、こども未来戦略会議において岸田首相も発言している。
(岸田内閣総理大臣)
本年 6 月に 「こども未来戦略方針」 を策定し、今後の集中的な取組として 「加速化プラン」 をお示しいたしました。
妊娠期から切れ目なく子育て世帯をお支えする 「加速化プラン」 により、わが国のこども一人当たりの家族関係支出は、OECDトップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進します。 制度の拡充ばかりでなく、制度を安心してご活用いただけるよう、社会の意識改革にも取り組んでいきたいと考えています。
「こども未来戦略方針」 と 「こども・子育て支援加速プラン」
上記の岸田首相の発言から、「こども未来戦略方針」 で示された 「加速化プラン」 (正式名称は 「こども・子育て支援加速プラン」) により、こども一人当たりの子育て支援の規模がスウェーデン並みになるということがわかる。
「こども未来戦略方針」 とは、こども基本法 (令和四年法律第七十七号) に基づき、これまでとは次元の異なる少子化対策 (異次元の少子化対策) の実現に向けて取り組むべき政策強化の基本的方向を取りまとめた戦略方針である。 2023 年 6 月 13 日に閣議決定された。 この戦略方針では、今後 3 年間の集中取組期間において実施すべき内容として 「こども・子育て支援加速化プラン」 が示されるとともに、将来的なこども・子育て予算の倍増に向けた大枠が示されている。
戦略方針の本文 : こども未来戦略方針 (こども未来戦略会議|内閣官房ホームページ (cas.go.jp) より)
何がスウェーデン並みになるのか?
詳細を見ていこう。 「こども未来戦略方針」 に、以下のようにずばり何が 「スウェーデンに達する水準」 になるのか書かれている。
「加速化プラン」 を実施することにより、我が国のこども・子育て関係予算は、こども一人当たりの家族関係支出で見て、OECD トップ水準のスウェーデンに達する水準となり (※ 19)、画期的に前進する。
※ 19 : 2019 年度の国際比較をベースにその後の我が国におけるこども・子育て予算充実や 2022 年度時点の人口の影響を加味した上で、「加速化プラン」 の実施の影響見込み額を考慮して試算したもの。 こども一人当たりは 18 歳以下人口で試算。
すなわち、社会支出 (Social expenditure) のうち、家族 (Family) の政策分野に関するもの (「家族関係社会支出」 や 「家族関係支出」 と呼ばれる) の額を 18 歳以下人口で割ったものがスウェーデンに達する水準になるようである。 (家族関係社会支出の額や人口は見込みを使っているようである。)
ちなみに社会支出とは、OECD が基準を定めている社会保障費用統計である。 日本では、国立社会保障・人口問題研究所が集計公表している。 最新の情報は 「社会保障費用統計 (国立社会保障・人口問題研究所)」 を参照されたい。
実際にスウェーデン並みになりそうなのか?
国際比較できる社会支出の統計は OECD により公開されている。 OECD Social Expenditure Database (OECD SOCX) というものである。 実際の統計データを見られる URL は https://stats.oecd.org/Index.aspx?datasetcode=SOCX_AGG である。
この統計データで、日本とスウェーデンそれぞれの家族関係社会支出の額を確認してみよう。
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![](https://assets.st-note.com/img/1698974522359-UaElnb0PbP.png?width=1200)
「こども未来戦略方針」 では 2019 年の国際比較データを基にしているとのことだったので、2019 年の数値を見ると、日本の公的な家族関係社会支出は 9,673,021.6 百万円 (約 9.7 兆円)、スウェーデンは 172,745.5 百万スウェーデンクローナ (約 0.17 兆スウェーデンクローナ) である。
18 歳以下人口については簡単に使える統計データが見つからなかったが、ユニセフによる 「世界子供白書 2023」 に 18 歳未満人口があったので、代替としてこれを使うこととする。 (年齢ごとの人口が等しいと仮定すると、一人当たりの額の日本とスウェーデンの比率は変わらない。)
https://www.unicef.or.jp/sowc/pdf/UNICEF_SOWC_2023_table1.pdf より、2021 年の日本の 18 歳未満人口は 17,962 千人 (約 1700 万人)、スウェーデンは 2,215 千人 (約 220 万人) である。
こども・子育て支援加速プランで日本の家族関係社会支出が 3.5 兆円増えるとして、上記の家族関係社会支出の額と 18 歳未満人口を使い、18 歳未満人口一人当たりの家族関係社会支出の額を算出すると、次のようになる。
日本 : (9.7 兆円 + 3.5 兆円) / 1700 万人 = 78 万円/人
スウェーデン : 0.17 兆スウェーデンクローナ / 220 万人 = 7.7 万スウェーデンクローナ/人 = 100 万円/人 (1 スウェーデンクローナ = 13 円で計算)
スウェーデンの額には届いていないものの、為替の変動もあるし 20 ~ 30 % 程度の差は (あくまで 「家族関係社会支出」 については) 「スウェーデン並み」 と言っても許容範囲かなと思う。 ただし、あくまでざっくりした計算であることに注意されたい。
また、こども・子育て支援加速プランで家族関係社会支出が 3.5 兆円増える前提で上記の計算をしたが、こども・子育て支援加速プランの中身を見ると必ずしも家族関係社会支出ではないものもあるように思うので、「本当にこども・子育て支援加速プランで家族関係社会支出が 3.5 兆円増えるのか?」 という点は気になるところである。
家族関係社会支出とはどのようなものか?
ということで、家族関係社会支出としてはそれなりの額になりそうな見込みではあるが、そもそも家族関係社会支出とはどのようなものなのか。 「OECD Social Expenditure Database マニュアル」 には次のようにある。
家族 (1 人世帯は除く) を支援する支出を含む。 この支出は子どもの養育、あるいは他の扶養親族への支援に関連したコストである。 産休、育休関連給付支出は家族現金給付のサブカテゴリに分類される (OECD Family Database- Indicator PF1.1 and PF3.1)。
子どもの養育には限らないが、子どもの養育にも関係が深い。 そのために 「こども未来戦略方針」 において、家族関係社会支出の額をスウェーデンのものと比較しているものと思われる。
日本の家族関係社会支出に含まれる具体的な社会保障制度がどのようなものであるかは、社会保障費用統計の報告書を見ると良い。 「令和 3 年度 社会保障費用統計」 では、巻末参考資料の 「社会支出に含まれる社会保障制度」 に具体的な社会保障制度の一覧がある。
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項目を見るとわかるように、児童手当や出産や育児休業に関する給付金、就学前教育・保育といったものが主要なものではあるが、男女均等雇用対策費だったり、高齢者等雇用安定・促進費だったり、感染症対策費だったりと、必ずしもこども・子育て支援に関わらないと思われるものも含まれている。
子育て支援の規模がスウェーデン並み、というのは誇大広告ではないか
家族関係社会支出には児童手当や就学前教育・保育、出産や育児休業に関する手当が含まれているので、家族関係社会支出がスウェーデン並みになると、それらについてはスウェーデン並みになりうる可能性がある。
しかしながら、上述の通り、家族関係社会支出には介護休業手当などの家族関係の社会支出が含まれるし、また、家族関係社会支出には子育て支援の一部しか含まれていない。 そのため、「一人当たりの家族関係社会支出の額が OECD トップのスウェーデンと同じ水準である」 からといって、こども・子育て支援の規模がスウェーデンと同等程度だとは言えない。
例えば、日本において子育てにおける経済的負担として教育費が挙げられることが多いが、家族関係社会支出の中に教育に関する支出は (就学前を除いて) 全く含まれていない。 OECD の統計としては、教育関係の支出は 「公財政教育支出 (Public spending on education)」 というものがあり、これを見ると日本の公財政教育支出はスウェーデン並みとは到底言えないだろう。
そういう点を踏まえると、政府広報における 『こども一人当たりの子育て支援の規模はスウェーデンに達する見込み』 という表現は誇大広告だと言っても良さそうである。
家族関係社会支出の中身の比較
家族関係社会支出の話に戻ろう。 仮に規模が同等程度であったとしても、その支出内容次第で効果は大きく変わるだろう。 そのため、中身をしっかり見ていく必要がある。
ここで、OECD の統計データに戻って、2019 年の日本とスウェーデンの家族関係社会支出の中身を比較してみようと思う。
スウェーデンの家族関係社会支出の中身
スウェーデンの家族関係社会支出 (1730 億クローナ) の中身を見ると、大きく分けて現金給付 (Cash benefits) が 650 億クローナ、現物給付 (Benefits in kind) が 1100 億クローナである。
現金給付の中で主要なものは次のとおり。
家族・児童手当 (Family or child allowance) : 290 億クローナ
Income maintenance (parental insurance) (育児休業への給付だと思われる) : 330 億クローナ
現物給付の中で主要なものは次のとおり。
保育 (Child care) : 420 億クローナ
保育 (初等前教育) (Child care (pre-primary education)) : 270 億クローナ
施設 (Accommodation) : 110 億クローナ
Child day care (social services bought by local government) : 100 億クローナ
日本の家族関係社会支出の中身
日本の方は、家族関係社会支出 (9.7 兆円) の中身として、現金給付が 3.7 兆円、現物給付が 6.0 兆円である。
現金給付の中で主要なものは次のとおり。
児童手当 : 2.1 兆円
出産、育児休業 (小項目が保険者ごとの分類になっているので合算) : 0.8 兆円
社会福祉 (家族手当) : 0.6 兆円
社会福祉 (その他の現金給付) : 0.3 兆円
ここで、「出産、育児休業」 と書いたものの中には、出産手当金や育児休業給付のほか、介護休業給付や高齢者等雇用促進安定・促進費なども含まれている。
現物給付の中で主要なものは次のとおり。
社会福祉 (就学前教育・保育) : 2.6 兆円
地方単独事業 (就学前教育・保育) : 1.5 兆円
社会福祉 (ホームヘルプ / 施設) : 0.8 兆円
児童手当 (その他の現物給付) : 0.3 兆円
地方単独事業 (その他の現物給付) : 0.3 兆円
ここで、「社会福祉 (就学前教育・保育)」 には保育対策費、子ども・子育て支援対策費、子ども・子育て支援推進費が含まれている。 「地方単独事業 (就学前教育・保育)」 は、主には公立保育園や公立幼稚園、公立認定こども園の管理費や、保育園、幼稚園、認定こども園等の助成に要する費用が含まれている。 「社会福祉 (ホームヘルプ / 施設)」 には、障害保健福祉費や児童虐待等防止対策費、母子健康衛生対策費、児童福祉施設整備費等が含まれている。 「児童手当 (その他の現物給付)」 には、地域子ども・子育て支援事業費が含まれる。
日本とスウェーデンの比較と考察
1 クローナ = 13 円の為替レートで日本円に直して、スウェーデンと日本の家族関係社会支出の中身を比較した図を次に示す。 家族関係社会支出のデータは 2019 年のもので、2021 年の 18 歳未満人口で割って計算した。
OECD の統計データの中で、日本とスウェーデンで項目の分け方が違う部分が多いため完全な比較はできないが、ざっくりとした違いは見えると思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1699064733644-qWpLX9Of1t.png?width=1200)
図から、次のことがわかる。
(※1 の部分) 児童手当は同程度の水準
(※2 および ※3 の部分) 出産や育児休業に関する手当や就学前教育・保育に関する支出は圧倒的に日本の方が少ない
(備考) 日本の就学前教育・保育については、公立園の管理費や保育料等軽減の助成や保育園、幼稚園、認定こども園等助成に要する費用を含んでいる 「地方単独事業」 の項目だけで比較している
就学前教育・保育の社会福祉の項目も含めるとスウェーデンの半分程度の規模にはあるが、それでも少ない
(※4 の部分) 日本の分類では 「社会福祉」 というざっくりした括りの項目で多額の支出をしており、具体的にその支出で何をしているのかが (OECD の統計データだけでは) 全くわからない、というものが多い
例えば就学前教育・保育の社会福祉だけで 2.6 兆円だが、その中身は何なのか?
保育対策費、子ども・子育て支援対策費、子ども・子育て支援推進費が含まれるとのことだが、それらが何に使われるのか追いかけられていない
他にも、出産、育児休業に関する小項目も、目的別ではなく制度ごとで項目分けがなされている (保険者ごとに支出を集計しているため、育児休業給付と介護休業給付が混ざっていたりする) ので、統計データの項目分けがいまいち
こども・子育て支援加速プランでは、児童手当の拡充や、出産や育児休業にあたっての経済的支援の拡充、幼児教育・保育の質の向上といったことが謳われているので、上記の 『出産や育児休業に関する手当や就学前教育・保育に関する支出は圧倒的に日本の方が少ない』 という部分は改善するだろうと思われる。
一方で、日本の家族関係社会支出の中で目立つ社会福祉の項目 (「就学前教育・保育」 の 「社会福祉」 や、「ホームヘルプ / 施設」 の 「社会福祉」 など) の具体的な内容が気になるところである。 これらが広く子育て世帯に恩恵のあるものであれば良いのだが、広く恩恵がなく、かつスウェーデンでの同様の支出が日本ほど多くないのであれば、日本の家族関係社会支出がスウェーデン並みになったとしても、家族の政策分野に子育て世帯への恩恵はスウェーデン並みにはならないだろう。
まとめ (概要再掲)
本投稿では、政府広報の 『こども一人当たりの子育て支援の規模は、OECD トップ水準のスウェーデンに達する見込み』 という表現に対する反応をきっかけにして、家族関係社会支出についてスウェーデンと日本の比較を行ってきた。
「支出がスウェーデン並みと言ってもスウェーデン並みの給付は受けていない」 という意見に対しては、「そもそもまだスウェーデン並みにはなっていない」 ということだけでなく 「スウェーデン並みになる見込みなのはあくまで家族関係社会支出であって、こども・子育て支援全体ではない」 ということが言えるだろう。 その点で、政府広報の 『こども一人当たりの子育て支援の規模はスウェーデンに達する見込み』 という表現は誇大広告だと言っても良いと思われる。
最後に、冒頭にも記した本投稿の概要を再掲し、本投稿の締めとする。
「こども未来戦略方針」 で示されている 「こども・子育て支援加速プラン」 によって家族関係社会支出が 3.5 兆円程度増えるとすると、18 歳以下人口一人当たりの家族関係社会支出の額がスウェーデン並みになる見込みと言われている
ざっくり計算してみると、スウェーデンでは約 100 万円/人 (1 クローナ = 13 円計算) なのが、日本だと 78 万円/人程度になりそうであり、胸を張って 「スウェーデン並み」 と言えるほどではないとは思うが、ある程度近い水準にはなる
家族関係社会支出の中身には、児童手当や就学前教育・保育、出産や育児休業に関する手当が含まれているので、それらの面でスウェーデン並みになりうる可能性がある、と言える
ただし、家族関係社会支出には上記以外にも介護休業手当などの家族関係の社会支出が含まれるし、また、家族関係社会支出には子育て支援の一部しか含まれていないため、家族関係社会支出の総額だけで子育て支援の規模を語ることはできないことには留意が必要である
具体的にいうと、例えば教育費は (就学前を除いて) 全く含まれていない
そういう点を踏まえると、『こども一人当たりの子育て支援の規模はスウェーデンに達する見込み』 という表現は誇大広告だと言っても良さそうである
ちなみに、2019 年時点での家族関係社会支出を日本とスウェーデンで比較すると、次のようになっていた
児童手当は同程度の水準
出産や育児休業に関する手当や就学前教育・保育に関する支出は圧倒的に日本の方が少ない
日本の分類では 「社会福祉」 というざっくりした括りの項目で多額の支出をしていたり、目的別ではなく制度ごとなどの実装寄りの項目分けがなされている (例えば健康保険の保険者ごとに支出を集計している) ので、(OECD の統計データだけでは) 具体的に何に使われているのかわからないものが多い