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空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか 前編(2) テキスト版

はじめに

こちらは、創作漫画『空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか』の場面解説を交えたテキスト版です。
ツイッターでも同様の内容で画像解説が埋め込まれているものをあげていますが、こちらはテキストも一緒に掲載しています。
お好きな方でお楽しみくださいませ。

また、前回のお話はこちらからどうぞ!

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空波前編(2) 1ページ目

【場面:お昼。1−4組の教室】
一台の学校机に渚とひなたが向かい合って座っている。
(渚の席。教室の後ろ側、ベランダの扉のすぐ横に位置している)

ひなた側の方にはおかずが残っているお弁当箱と水筒、なぎさ側の方には何も入っていないあんぱんの袋と飲みきりサイズの豆乳が置かれている。
渚、スマートフォン(以下、スマホ)を弄っているとスマホから通知音。
画面にはひなたとのトーク画面。

(トーク画面)
 ひなた『数学むずい』
 渚『それな』
 ひなた『そういえばさ』
(トーク画面おわり)

ふと渚が正面を見ると、ひなたがスマホを両手で持ちながら何か言いたげに渚を見ている。
そこから二人のメッセージアプリでの会話が始まる。

ひなた『広瀬くん、今日の朝のこと怒ってた?』
渚『ぜんぜん。逆に気にしてた。きらわれてんのかなって』
ひなた『!! かんちがいなのに。なぎさ、ごめんって伝えておいて』

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空波前編(2) 2ページ目

渚『なんで』
ひなた『むりだもん』
しょぼくれて困った顔をするひなた。
渚『やだよ』
ひなた『ケチ』

断られて今度はむくれた顔になる。
そんなひなたの様子に心の内で惑う渚。

渚「(それ、あたしが言っても……)」

と、突如視界の端に何か青いもやのようなものが映る。

渚「!!」

はっと顔を上げると、教室全体に【青空】が広がっている事に気がつく(突然湧き上がり、霧のように机や床を覆い隠している状態)。

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空波前編(2) 3ページ目

渚「(またっ……! なにこれっ…あおっ…)」

あわてて教室を見回す渚。
朝に見えたシミのような【朝焼け空】とは比べ物にならないぐらい視界を覆っていく【青空】に一人たじろぐ。

ひなた「?」

そんな渚を見て様子がおかしい事に気がつくひなた。
『どうしたの』とメッセージを送ろうとしたその時、スマホの画面にお昼がもうすぐ終わる事を告げるリマインダーが入る。

その通知を見て無言ですくっと立ち上がるひなた。

渚「えっ、ひなた?」

戸惑う渚を他所にお弁当を片付けてそのまま走り去ってしまう。

渚「まっ……」
美桜「なぎさぁ〜」

咄嗟に呼び止めようとしかけたが、後ろからへろへろな美桜が現れる。

美桜「ねーきいてよー。あいつらほんとむかつく〜! ねーきいてんのー」

渚にべっとり抱きつきながら部活動の愚痴を言う美桜の傍ら、渚は正面をぼんやりと眺めている。
するとあの【青空】は、また朝のように唐突に消え去っていった。

渚「(……あっ)」

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空波前編(2) 4ページ目

渚「(……消えた)」

【場面:夜。渚の家】
渚のスマホの画面。
今日突然現れた【空】について調べている。

1.検索サイト COOgle
『空 見える 病気』で検索。
飛蚊症の検索結果が出てしまう。

飛蚊症
 眼球の動きに合わせて糸くずやミミズ、けむりなどみたいな浮遊物の影の ようなものが見えてしまう病気

【参考:2018年発行 家庭の医学】

2.某SNSその1
同じく『空 見える 病気』で検索。
案の定、あまり関係のないつぶやきがひっかかる。
以下、検索結果の内容。

○白うーさは恩返しがしたい
 高校の先輩が亡くなった
 
病気だったんだって
 
でも見えた空がきれいだったから先輩もきっと…

○てでぃノ助

 親父とお袋の命日。

 今年の墓参りも青空だった。

 いつかオレも病気かなんかでその時が来るのだろうか

 (青空の添付画像付き)

3.某SNSその2
タグ検索「#空の病」で検索。
案の定、上二つと同様に全く関係のない結果がひっかかる。
以下、検索結果の内容。

○*NANA-yanopi*
 (空をバックにピースをする写真。手だけが映っている)
 「きょうの空」と一言だけ書かれている投稿。
 
「#空好きさん集まれ」「#空の病」「#青空」といったハッシュタグがつけられている。

渚「ですよね〜」

リビングのソファに寝転がりながら、スマホを両手に持つ渚。
諦観の表情で検索結果を眺める渚のソファに、双子のきょうだいである「六花」と「さくら」が現れる。

さくら「ねえちゃーん!! ごはんー!! おなかすいたー」

ダイニングテーブルで夕飯のカレーを食べる六花とさくら、渚。
その傍らに三人の母親が立っている。

さくら「あー! りっか、にんじんのこしてるー」
六花「だって……おいしくないんだもん」
母「もおー三人とも早くたべなさい!」

夕飯のカレーを食べながら騒ぐ双子たちと母親の横で、渚はひとり神妙な面持ちで考え込んでいる様子。

その場面を映しながら渚のモノローグ。
渚『(その日はあれっきり、あの空が見えることはなかった
あれはきっと幻かなんかだったのだろう。
その時は、ただそう、思っていた)』

(六花とさくら→年の離れた渚の弟と妹。双子。幼稚園の年長
六花→双子の弟。生まれつき目が悪くいつもめがねをかけている。見た目からよく女の子と間違われる。気弱で泣き虫。
さくら→双子の姉。六花とは真逆でおてんばな性格のせいかよく男の子と間違われる。いつも誰かに泣かされている六花をよく守っている)

【前編(2)終わり。つづきはこちらから】


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