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空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか 前編(4) テキスト版

はじめに

こちらは、創作漫画『空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか』の場面解説を交えたテキスト版です。
ツイッターでも同様の内容で画像解説が埋め込まれているものをあげていますが、こちらはテキストも一緒に掲載しています。
お好きな方でお楽しみくださいませ。

また、前回の空波はこちら。

前編(4)

1ページ目

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空波前編(4) 1ページ目

(前編(3) 4ページ目のつづきです)
【場面:駅近にあるビルのハンバーガーショップ】
ボックス席に向かい合って座る渚とかおる。
テーブルの上には二人のハンバーガー、ポテト、コーラがそれぞれトレイに置かれている。

渚「ほんとにいいの?」
かおる「いーの。バイトしてるし。それに聞きたいことあったから」
渚「あたしに?」
かおる「なぎさ、カワウチ先輩って知ってる?」
渚「カワウチ?」

ハンバーガーを食べながら尋ねる渚。

かおる「なんかぁ白ヶ丘の二年らしくて、私の先輩がその人探してんの。
なぎさ白ヶ丘だからなんか知ってるかなって……。
あ、これね。えっとたしか…この写真の左にいる人だったかなぁ」

かおるが操作していた自分のスマホ(フライパンくまちゃんのスマホカバーが付いている)の画面を渚に見せる。
が、その画面を見た瞬間、渚の表情が固まる。

画面に映っていたのは、かおるの先輩(と思しき女子とひなたが笑顔でピースをしている写真だった。

出先で撮った写真なのか、お洒落な格好をしている二人は楽しそうな表情を浮かべている。
(写真のひなたは今のようなボブヘアではなく、肩まで伸びたストレートヘアで後ろにお団子結びをしている)

フライパンくまちゃん
お料理大好きキュートなくまちゃん。
手にフライパンを持っている。右耳の赤いリボンがチャームポイント。
もちろんこの物語の中でのみ登場する架空のキャラクターです

2ページ目

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空波前編(4) 2ページ目

今まで見たことのない表情にかおるのスマホを握りしめて絶句する渚。

かおる「エンスタもメッセもアカ消えしてるらしくてぇ。
音信不通ってやつ?」

渚の脳裏に一人ぼっちのひなたの背中が過ぎる。

渚「(ひなた......)」

かおる「...ぎさ......なぎさ!」

かおるに呼びかけられはっとなる渚。

かおる「どうした? もしかしてガチで知り合い?」
渚「あ、いや...…。なんでもない」

メッセ
老若男女問わず使われてるトークアプリ。
渚とひなたが以前会話に使っていたのもこれ

エンスタ
若者を中心に人気のあるSNS。写真投稿に特化している。
以前、渚が自分の空について調べ物をしていた時にエンスタで検索していた

【場面:ビル前の階段。帰り道】
ハンバーガー店前で別れ、それぞれ帰宅する、かおると渚。
賑やかな街中通りの人混みに紛れ、考え事をしながら帰路につく渚。

渚「(あれ、たしかにひなただった。
二年の、カワウチ先輩……)」

さっき見た眩しい笑顔のひなたの写真が思い浮かぶ。

3ページ目

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空波前編(4) 3ページ目

渚「(もうひなたは、あんな風に笑えないのか)」

今度は、歩道橋の前で今度は教室で一人泣いていたひなたの顔が思い浮かぶ。

渚「(やだな、それ)」

歩道橋の階段を登り切る直前、また突如あの空が渚の視界を覆い尽くす。

渚「(あっ)」

足元が一瞬にして暗い空に染まり、身体が大きく傾く。

渚「(ヤバっ)」

傾いてしまった弾みでそのまま段差を踏み外してしまう。
歩道橋の上にいるOLやサラリーマンが落下する渚を見て驚いている。

4−5ページ目

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空波前編(4) 4-5ページ目

暗い夜空の中に渚が吸い込まれるように落ちていく。

落ちながらわずかに見える歩道橋の上に左手をのばすが、
遠く遠く離れ、暗闇の中へ……。

6ページ目

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空波前編(4) 6ページ目

【場面:白ヶ丘高校。1−4組の教室】
朝の教室、ひなたが一人で席に座っている。
教室のざわめきに波音が重なり、クラスメイトたちの声が音の塵となって聞こえてくる。

「え...」
「マ...で......」
「...りぃ...」

途切れ途切れのざわめきの中、スマホで渚とのトーク画面を開きながら憂鬱そうな顔をしているひなた。

ひなた「(今日も、返事なし。もう一週間。渚……なにかあったのかな)」

(トーク画面には「何かあった? 大丈夫? いつでも連絡してね。おやすみ」とひなたが以前送ったメッセや、今日の朝に送った「おはよう。今日学校くる?」というメッセが表示されているが、渚からのメッセは来ていない)

ひなた「(渚の友達なら……)」

渚の机にもたれかかる葵と、その隣の席に座る美桜の方に目を移す。
二人とも真剣に何かを話している様子。

しかし、すぐに恐怖心が湧いてしまい机に伏せてしまう。

ひなた「(むり、できない。話しかけるなんて。
やだなあ。私、渚がいなきゃなにも…。)」

腕に顔を埋めていたその時「...わっ。何...ア...葉の」という驚いた声が耳に飛び込んでくる。

7ページ目

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空波前編(4) 7ページ目

「っ...?」
「見...な...の?」
「...えアレ」
「ぅわ...」
「ヤバ...ね...」
「い...そ...」

ひなたがはっと顔を上げると、クラスメイトたちが何やら後ろの方を見てコソコソ言っている様子。

ひなた「(……なに?)」

波音の向こうのざわめきがより一層大きくなり、背後が気になって振り向くひなた。

ひなた「(!?)」

そこで目の当たりにした光景に思わず驚いて立ち上がる。

教室の後ろの方を、白杖を持った女子生徒が歩いていく。
顔と脚に白い包帯を巻いたその生徒はひなたにとってよく見覚えのある顔だった。

白杖
盲人用安全つえ。
目が見えない、あるいは見えにくい人などが主に歩行時の安全確認のために使用する杖。ちなみに黄色い杖もある
(聴覚障害やその他病気で必要な時に使用することもあります)

8ページ目

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空波前編(4) 8ページ目

(黒バックに白字でタイトルコール)

前編 空の青さを知っているか

渚「ぉ...よ」

パーマがゆるくかかった髪をなびかせ、笑顔でひなたに声をかける渚。
その弾んだ声は波音で遮られた。

前編 終

後編につづきます

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