【深夜のショート・ショート】僕のハチャメチャ運動会
このショート・ショートは、
トヨタ理のXにて【毎週月～金、深夜０時】に投稿している
深夜のショート・ショート群像劇「今日、きみがいい夢を見られますように。」の一編をまとめた記事です。
##1
「サボってねーな」
呑気に赤ハチマキを額に巻く大智をキッと睨む。
今日は地獄の親子運動会。
パパは、海外出張中。
頼みの綱だったママは、急な休日出勤。
で、それを聞かされたのが一昨日の夜。
サボれるもんなら――。
はぁーっと息を吐いて、僕は天を仰いだ。
##2
最初は大玉転がし。
みんなの隣には親がいるけど、僕にはいない。
「弘樹」
先生？ 振り向いて、思わずブハッと吹いた。
付けヒゲに首の赤ハチマキ。
おかしなソイツはどうみても大智だ。
「父だぞ」
ムリだろ。
笑い転げて呼吸困難になった大玉転がしは、当然ボロボロだった。
##3
次の借り物競争はエプロン姿の椿さん。
「私でごめんね」謝るとこもカワイイ。
僕らが引いた札は『シュシュ』。
考える間もなく「あっ！ 桃ちゃん！」と急に手を引かれて……頭が真っ白になった。
ぶっちゃけ、後は何も覚えてない。
ただ、一つだけ。
女の子。
やわらかくて、いい匂い。
##4
最後は、選抜親子四組の八人リレー。
なぜか最後の組に選ばれたけど今度こそ親役は先生かな。
最終コーナーを走る僕に「弘樹ぃー！」と先生が手を……じゃなくてママ？！
バトンを受け取ったママは仕事用スーツ、裸足で全力疾走。
汗だくで一位になったママは、ちょっと、カッコよかった。
##5
「ママ、リレーで県大会行ったのよ」
帰り道、全身砂まみれで自慢げに言うママ。
どうしても参加したくて、と早上がりしてまで学校に来たらしい。
「パパに自慢しちゃおっかな」
そうだ。帰ったら電話しよう。
僕の人生で一番ハチャメチャな運動会。
パパならきっと、笑って聞いてくれるだろう。
（終）
ここまでお読み頂きありがとうございました。
これまでの作品は、こちらのマガジンにまとめています。
また、最新作は【毎週月～金、深夜０時】X（旧Twitter）にて連載中です。
ぜひ、あわせてお楽しみ下さい。
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