空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか 後編(2) テキスト版
はじめに
こちらは、創作漫画『空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか』の場面解説を交えたテキスト版です。
ツイッターでも同様の内容のもの(画像解説付き)をあげていますが、note版ではテキストも一緒に掲載しています。
お好きな方でお楽しみくださいませ。
なお、前回のおはなしはこちら。
後編(2)
1ページ目
(後編(1)からのつづきです)
【場面:朝、教室の外の廊下】
白杖を持ったままの渚の手を引いて、教室を飛び出したひなた。
廊下を歩く生徒たちを避けてひたすら走る。
しかし目がほとんど見えていない渚は、誰にどこへ連れ出されようとしているのか全くわからずひどく動揺している。
渚「……ょっ……あのっ、ねぇ…!!」
呼び止めようとする渚だったが、ひなたにはほとんど届かず一向に止まる気配はない。
渚「だ…らっ…っ……〜〜〜〜っ」
言うことの聞いてくれない“誰か”に、次第に恐怖を覚える渚。
とうとう耐えられなくなりーー。
渚「ちょっと まって!!」
廊下に響き渡る程の大声で呼び止める。
ようやくその大声がひなたに伝わり、渚の腕を離すひなた。
渚「あの……、誰だか分かんない…ど……あたし…あんま…見え…な……」
息切れしながらも、渚が前に立つ“誰か”を目を凝らして見ようとする。
すると、視界を覆う空の切れ間から少しだけ、ひなたの顔が見えた。
2ページ目
渚「……ひなた?」
小さく呟くようにひなたの名前を呼ぶ。
その呟きがわずかにひなたの耳に届く。
もしかしたらと自分のスマホをすぐに取り出すひなた。
素早くスマホで何か文字を打ち込む。
渚「あの……あたし……その……」
どうひなたに伝えていいのか戸惑っている渚に、ひなたがそっと左手(白杖を持っていない方の手)にスマホを乗せる。
しかし、渚がどんなに目を凝らしても画面の文字は全く見えない。
諦めて首を振る。
渚「……なんに…見え…いや……」
<モノローグ・ひなた>「ことばが」
3ページ目
<モノローグ・ひなた>「ことばが、伝わらない」
愕然と立ち尽くすひなた。
渚「……ごめん」
ひなたのスマホを握りしめ、渚が項垂れながら力なく呟いた。
【場面:夜、ひなたの家・自室】
宵闇に大雨が降り頻る夜中、
部屋着用の上下のスウェットを着て、ひなたが自分の部屋に引きこもっている。
机の上のランプだけを点け、ベッドの上で体育座りをしている。
?「ひなた!」
4ページ目
【場面:過去回想。一年前、ひなたの家・リビング】
ひなた「はーい」
母親に呼びかけられ、返事をするひなた。
(もこもことしたパイル生地のパーカーとショートパンツの部屋着を着ている。髪型は現在のボブヘアーではなく、肩より少し伸びているストレートのミディアムヘア)
テレビの正面にあるローテーブルの前の座布団に座っている。
ひなた母「明日から高校生なんでしょ。だらだらしてないでよ」
ひなた「はいはーい」
家事をしている母に注意され、適当に返事をするひなた。
注意されたばかりにもかかわらず自分のスマホを早速いじり始める。
ひなた「(あっ、やっちゃんだ。
“このまえのプリおくるね。
別の高校だけどおたがいがんばろー“……)」
ひなたのスマホの画面には、以前渚が見た、ひなたと同級生(やっちゃん)のツーショットのほか、同級生たちと制服姿で撮った写真や、ひなたがジュースを両手にはしゃいでいる写真が表示されている。
物思いにふけりながら、座布団を枕がわりにして寝転がる。
ひなた「(あっという間に高校生か。実感ぜんぜんないなー。
高校もあっという間に卒業して、なんとなく大学生になって……)」
【後編(2)終わり】
(四ページでまとまるかなと思ったけど中途半端に終わりました!
すみません!! つづきはこちらから読むことができます!)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?