空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか 後編(7) テキスト版
はじめに
こちらは、創作漫画『空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか』の場面解説を交えたテキスト版です。
ツイッターでも同様の内容のもの(画像解説付き)をあげていますが、note版ではテキストも一緒に掲載しています。
お好きな方でお楽しみくださいませ。
なお、前回のお話はこちら。
1ページ目
【場面:下校中、外】
渚が白杖で地面を叩きながら路上を歩いている。
渚の前方に踏切が見えている。
(渚自身は視界のほとんどが【黄昏の空(青空と夕焼けの間)】に覆われてしまっているため先に何があるかは分かっていない)
しかし、道の先の空き缶に気が付かずつま先に当たってしまう。
渚「……っ!!」
缶にびっくりしてつまずいてしまい、そのまま地面に転倒。
その弾みで手に持っていた白杖を離してしまう。
2ページ目
わずかに見える景色を頼りに地面に転がっている白杖を取ろうとする渚だったが、突然踏切の警報音が鳴り始める。
渚「……あれ、あたし、いまーー。
踏切の中? 外?
あし、うごかなーー」
?「ないさぁぁあああああ」
警報音に負けない声量で誰かが渚を呼ぶ。
3ページ目
突如、渚の目に焦った顔のひなたが映る。
大声で渚の名前を叫んでいたのはひなただった。
ひなた「なぃさ! なぃさっ!!」
渚「……ひなた?」
未だ気が動転している中、ひなたに助け起こされる渚。
渚がいたのは踏切外の遮断機のすぐ目の前だった。
呆然とする渚と今だ心配げなひなたの前を電車が走り抜けていく。
渚「あ……」
ようやく落ち着きを取り戻し、力の抜けた様子でひなたの方を向く渚。
しかしすぐ、いつもの渚らしくひなたの前で笑う。
渚「あーっ、ころぶとかマジはずいわー。
なーんかつまずいてさ。あせるわー」
地面に座り、気丈に振る舞う渚の握り拳は細かく震えていた。
4・5ページ目(見開き)
渚「……って、きこえないか。
あたし気きかないね。ごめ……!」
渚が話している途中で、突然ひなたが渚を優しく抱きしめる。
渚「なん……あたし…っ」
何とか涙を堪えようとする渚だったが、とうとう大きな声で泣き叫ぶ。
渚「わあああああぁぁっ」
6ページ目
子供のように泣きじゃくる渚を、目を閉じて抱きしめ続けるひなた。
その目には渚と同じあたたかい涙が流れていた。
(ひなた・モノローグ)
ひなた「かすかに聞こえてくる泣き声は
わたしの波音とおんなじでーー。
淡く澄んだ青の響きをしていた」
【後編(7)終わり。次回投稿につづく】
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