空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか 後編(8) テキスト版
こちらは、創作漫画『空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか』の場面解説を交えたテキスト版です。
ツイッターでも同様の内容のもの(画像解説付き)をあげていますが、note版ではテキストも一緒に掲載しています。
お好きな方でお楽しみくださいませ。
なお、前回のお話はこちら。
1ページ目
【場面:白ヶ丘高校、白高祭(文化祭)二日目】
白高祭と書かれた校門前の看板を老若男女とりどりの入場客が続々とくぐり抜けていく。
そんな中、一年四組ではクラスメイトの女子とチアリーダーに扮した美桜の二人がクラスの出し物であるコスプレ喫茶の受付をしている。
美桜「いらっ……あー。なーんだ、渚たちかぁ」
葵「なんだってなんだ
渚「あはは…」
美桜の視線の先には同じくコスプレ姿をしている渚と葵。渚の右手には白杖。
(渚は探偵風のインバネスコート、葵は頭にリボンのカチューシャ、白い着ぐるみを着ている)
美桜「集客できた?」
葵「ダメだった」
美桜「オイ」
なっつん「なぎさーこっちこっちー!」
昭和のアニメに出てくるおかんのようなエプロン姿のなっつん(クラスメイト)に呼ばれ、会話をしている葵と美桜の側を通り過ぎる渚。
店内はテーブル席に客が一組、女子高生のコスプレをする店員がいるだけで閑散としていた。
声の方向を頼りになっつんのいるフードの注文コーナーにたどり着く。
渚「ひなたいる?」
なっつん「いるいる。今呼ぶから」
渚「ありがとなっつん」
コーナー奥の調理場に引っ込むなっつん。
なっつん「河内さーん、なぎさ来てるよ」
なっつんに肩を叩かれるひなた。
2ページ目
ひなた「……! なぃさ!」
フリル付きのエプロンとカチューシャを身に着けたメイド姿のひなたが嬉しそうに振り向く。
【場面:二階の渡り廊下】
校舎と校舎の間にかけられた屋根のない渡り廊下の上。多くの人で賑わっている下の様子を渚とひなたの二人が見下ろしている。
渚「おーっ。人いっぱいいんねー」
ひなた「ん」
渚「ってかひなたの友達のアプリめちゃ便利。
ありがと」
スマホをひなたに見せて御礼を言う渚。
ひなたを通じてシュウトが開発したトークアプリを自分のスマートフォンの中に入れてもらっていた。
渚「……」
ふっと黙り込む渚。
3ページ目
遠くの景色を見据えて、渚が話を続ける。
渚「あたし、最近のひなたすごいなって思ってんだ。
自分で調理班に立候補してさ、しかもちゃんと仕事やってんだもん。
なのにさ、あたしなんかダメダメで……。
だから、決めたよ。
あたし、支援学校に転校する」
4ページ目
ひなた「!!」
驚いた表情になるひなた。
渚「あたしでも訓練しながら勉強できる学校あるって。
前から勧められてて」
遠くの方に見えるうさぎの着ぐるみを着た白高生と、幼い女の子二人組の姿。
そのうちの髪の長い女の子が白高生から青と白の風船を一つずつもらっている。
渚「ホントは転校やなんだ。
みんな良いヤツで、白ヶ丘好きだから」
髪の長い女の子が、もう一方のボブヘアーの女の子に白い風船を差し出す。
渚「でも、あたしがんばるよ。
泣いてばっかじゃいられないし」
決心した様子で上を見上げ言う渚。
その様子を不安げな表情でひなたが見つめる。
【後編(8)終わり。後編最終回はこちら】
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