空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか 後編(5) テキスト版
はじめに
こちらは、創作漫画『空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか』の場面解説を交えたテキスト版です。
ツイッターでも同様の内容のもの(画像解説付き)をあげていますが、note版ではテキストも一緒に掲載しています。
お好きな方でお楽しみくださいませ。
なお、前回のお話はこちら。
1ページ目
【場面:放課後。赤母商店の二階、まいまいのおうち】
「赤母商店」(日用雑貨等が売っている町のお店)の二階にあるフリースクール、まいまいのおうち。
未だ雨が降りしきる中、玄関のチャイムが鳴った。
スクールの運営者であるマイ(ショートボブの小柄な女性。エプロンをつけている)が玄関のドアを開ける。
(ドアには「みんなのばしょ。まいまいのおうち(フリースクール」と書かれたプレートが取り付けられている)
マイ「はいはーい。おまたせしま……!」
来訪者の姿を見て驚くマイ。
マイ「あらっ、ひなちゃん」
ドアの前のひなたがマイに微笑む。
【場面:まいまいのおうち。リビング】
部屋のリビングでフリースクールの生徒、シュウトとアデルがそれぞれくつろいでいる。
シュウト
フリースクールに通う小学五年生の男子。肩先まで髪を伸ばしている。ちなみに漢字で書くと瞬羽斗アデル
シュウトと同じくフリースクールに通う小学一年生。日本人の母と外国人の父との間に生まれた褐色の肌の男の子。
一年前に日本に来たばかりでまだつたない日本語しか話せない
シュウトはビーズクッションの上に座りタブレットをいじっており、アデルはローテーブルの上で絵を描いている。
マイ「ふたりともー」
マイの呼びかけに気づいて声の方を振り向くアデル。
何かに驚いて思わず「アーっ!!」と大声をあげる。
シュウト「アデル、うるさい」
すかさず注意するシュウト。
しかし、アデルの「ヒィナーっ」という声に思わず「えっ!?」とようやくタブレットから目を離す。
2ページ目
顔を上げたシュウト。
リビングのドアからひなたとマイが入ってくる様子に驚きを隠せない。
アデル「ヒィナー!」
マイ「あらら。よかったねーアデル」
抱きついてきたアデルを嬉しそうに迎えるひなた。
と、ビーズクッションに座るシュウトにひなたが気がつく。
ひなた「! しゅぅー!!」
学校では見せない笑顔でシュウトの事を声を出して呼ぶひなた。
すかさずマイがシュウトに顔を寄せる。
マイ「シュウちゃんもよかったね。ひなちゃん♡」
シュウト「ハァっ!? 何でだよっ」
マイ「もぉー。すなおじゃないなー」
シュウト「……」
ひなた「?」
呆れながら側を離れるマイに何も言い返せないシュウト。
黙り込むシュウトを見てすかさずひなたが※A4サイズの電子メモを取り出す。
シュウト「あっ、まってヒナ」
電子メモ※で筆談をしようとするひなたをシュウトが慌てて止める。
代わりにシュウトとは別のタブレットをひなたに渡す。
シュウト「これ、もってて」
ひなた「?」
言われるがままタブレットを持たされ「!!」と驚くひなた。
手渡されたタブレットはトークアプリのようなものが起動している。
上のバーの左上に「H.connect β版」という文字。
その下のメイン画面ーー左側はトークグループの選択画面、右側はトーク画面ーーのトーク画面の中に「おれの声うつってる?」の文字が吹き出しの中に表示されていた。
(なお、トーク画面の下部は発言ボックスとなっている。発言ボックスは現在「手書き入力モード」になっており、ボックス内に「ボックス内に文字を記入」と書いている)
3ページ目
シュウト「オレらの言葉を自動的に音声認識して表示するんだ。
そんでヒナが手書きしたのは文字化されてこっちにうつる。音声読み上げもできるよ。
ヒマだったから半年ぐらいつくってた。
まあ、ほとんど既存アプリ※のマネっこだけど」
アプリの画面を見て、驚きつつも感動するひなたとアデル。
マイ「ひなちゃんのためにがんばってつくったんだよねー。ねっ」
シュウト「よけいな事いうなよマイちゃん!!」
四人分のお茶をそれぞれに配り終えたマイがわざとシュウトの側で大声で言う。
それを慌てて遮るシュウト。
シュウト「んで今日はなに? 用事あったんじゃないの」
マイを押しのけながら言うシュウトにハッとなるひなた。
4ページ目
少し間をおいて、シュウトのアプリを使っておもむろに語り出すひなた。
ひなた「学校の友だちが、病気で目が
見えなくなっちゃって。
高校で一番の友だちなの。
私の耳のこと知ってて仲良くしてくれた。
でもその子スマホの文字もほとんど見えないから、言葉を伝えられない。
私は聞こえないからその子になにもできない
私どうしたらーー」
シュウト「じゃあ、あきらめんの?」
思い悩むひなたの声をシュウトが遮る。
【後編(5)終。つづきはこちら】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?