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夏の終わり後悔

ミーンミーンミーンミーン!!

〇:うーん…んん…パチッ
     あつ。

こんな暑いと寝れるわけが無い。

そう思いだるそうに体を起こす。

〇:はぁ…この季節やだなぁ。
     暑いし、汗かくし。

そうボヤく8月末の11時過ぎだった。

〇:やべっ!準備しないと!

いつも昼から夕方まで近くの喫茶店でバイトをしている。

急いで準備をし、喫茶店に向かったはいいが今日は人はあまり来ず、暇な時間を過ごしていた。

璃:今日は誰も来ないですね〜

この子は高校のころの一つ下の後輩であり、今でもバイトでこの喫茶店に入ってもらっている石森璃花ちゃんと言う子だ。

〇:んねぇ〜
     こんな人来ないことあるかな…笑

璃:でも確か今日って近くの神社でお祭りありましたよね〜

〇:あぁ、そうか。
     もうそんな時期か…

璃:〇〇さんは、誰かとお祭り言ったりしないんですか〜?

〇:うーん。そうだね。
     あんまり行かないかな。
     友達も地元から離れちゃったし…

璃:そうなんですか〜…
     もし良かったら…一緒に行きません?

〇:俺と…?
     祭りに?

璃:他に誰がいるんですか〜笑
     行ってみたいなぁ〜…なんて笑

君は上目遣いで見つめてくる。

〇:ドキッ…
     わ、わかったよ。行こうか…

璃:ほんとですか!?
     やった〜!

とこのとおり了承してしまった。

ただこの時、過去の事を思い出してしまう。

〇:(あの時もこの祭りの日だったな…)

数年前…

?:お祭りに一緒に来れるのも今日で…最後だね。

〇:うん…

?:そんな顔…しないで?
     たまには帰ってくる。

君がそう言った後に、繋いでいた手をもっと強く握った。離さないように…

君の声が、君の匂いがいつもより少し近くて

お願いだからどうか、少しだけ、もう少しだけ君のそばにいたいと思ってしまう。

〇:うん…
     楽しかったよ。

祭りの終わり、神社の通りであるこの交差点は君と僕との別れ道だ。

?:もうこの季節が終わっちゃうね…

〇:うん…

君は花火が終わったあとの夜空を見上げながら、悲しそうに微笑んでいた。

できれば花火が打ち上がる前に戻りたい。

あの瞬間だけは花火が僕たちを照らして、綺麗な君を見ていたい。

?:それじゃ…
     バイバイ。

〇:うん…バイバイ。

君はゆっくりと帰路に着き、自分も帰ろうとした時だった。

?:本当は好きだったよ。

そう言われ後ろを振り向くと、雫を垂らしながらこちらに向かって言っている君がいた。

〇:…!!

?:それじゃ…またね。

カラカラと音を立て小走りで帰っていく君の背中を見つめている。

追いかけるなんて出来なかった。

本当は少しでも気づいていた。

だけどまさかなと思っている自分もいたせいか、その気持ちを出さずに今日までズルズルと過ごしてきた。

その瞬間君への想いが溢れ出し、誰もいない交差点の歩道で泣き崩れてしまった。

お願いだから終わらないでくれ。

そんな願いは聞き入れてくれる訳もなく、明日がまたやってくる。

璃:…〇…ん?
     〇〇さん!!

〇:はっ…!?
     ご、ごめん。
     なんかあった?

璃:私は何もないですけど〇〇さんの方こそ…
     泣いてますけど…何かありました…?

〇:え…?

そう言われ頬に手をやると確かに濡れていた。

〇:ちょっと疲れちゃったかも…
     ごめんだけど先休憩入るね…

そういい先に休憩に入らせてもらった。

〇:(何してんだろ。)

あの時君に言われたことは今でも心に残っている。

この季節になるといつも思い出す。

少し休憩し、その後も仕事をして気づいたら17時になっていた。

店:〇〇君!璃花ちゃん!
     もう上がってもいいよ!
     片付けはしとくから!

〇:あ!ありがとうございます!
     すいませんお先します!

僕はそういい、少し片付けをして更衣室に行き着替え店をでる。

少しして璃花ちゃんも出てくる。

璃:〇〇さんっ!
     18時半くらいにあそこの交差点で待ち合わせしましょ〜!

〇:うん、わかった。
     んじゃ後でね。

そう言って各々帰路に着く。

そして準備をして気づけば18時20分になっていた。

〇:やば!急がないと!

急いで靴を履き玄関をあける。

〇:いってきまーす!

母:気をつけてね。

早歩きで待ち合わせの交差点へ向かう。

交差点につき、周りを見回したが璃花ちゃんの姿はなかった。

ピロン!

スマホの画面を見ると璃花ちゃんからLINEが来ていた。

璃📱:すいません!!
          少し遅れます…m(* _ _)m

〇📱:了解!
     焦らないでゆっくりでいいよ!

それから10分が経った。

璃:〇〇さんっ!
    すいませんお待たせしました!

声の方向を向くと、浴衣姿の璃花ちゃんが上目遣いで目をウルウルさせていた。

〇:大丈夫だよ!
     行こうか。

璃:人が多いので手…繋いでも…いいですか…?

〇:あ、うん。
     いいよ。

少し困惑したが確かにはぐれたら大変だと思い手を差し出し、璃花ちゃんの白くて細い手が握ってくる。

璃:こうして見ると…カップル…みたいですねっ///

〇:た、確かにね…笑

ドキッとしながらも璃花ちゃんと祭り会場へ向かっていく。

会場に着きりんご飴やかき氷など夏の風物詩を堪能し花火の時間まで少し歩いていた。

璃:すごい楽しいです!
     一緒に来れて良かったです!

〇:そうだね。
     俺も来てよかった。

花火が見える穴場スポットに向かって歩いていると

〇:!?
     あれは…!?

見た事のある影。

〇:ごめん!
     少しここで待ってて!
     すぐ戻ってくるから…!

璃:は、はい?
     花火まで一応時間はありますけど…

君がそう言った瞬間に君の手を離しその人影へと急いで走っていく。

少し走り人が居なくなった道でその影を見つけた。

〇:夏鈴っ!!

その人影はこちらを向く。

夏:〇…〇…?

〇:やっぱり…!

君に駆け寄り思わず抱きしめてしまった。

〇:良かった…!
     もう会えないかと思った…

夏:私も…だよ…
     あれからここの時期に帰ってきた祭り来てるのに〇〇の姿全然見えないから。

〇:ひとりじゃ来ないよ…さすがに…笑

夏:そっか…笑

少し君と募った話をして、気づけば花火開始時間が近づいていた。

夏:そういえば、いいの…?
     誰かと来てたんじゃない…?

〇:あ、そうだ。

と言った瞬間だった。

ピロン!

スマホを見ると璃花ちゃんからのLINEが。

璃📱:ごめんなさい!
          急遽用事思い出したので帰ります…!

〇📱:え?でも?

璃📱:大丈夫です!
          その代わり、今度なにか奢ってくださいねっ!

〇📱:わ、わかった…

璃📱:今掴んだチャンスは離さないようにですよ!!

〇📱:え?もしかして…

璃📱:それでは!
          また喫茶店であいましょ!

そう返信が来てわかった。とだけ送り再び君を見た。

夏:大丈夫…そう?

〇:うん。
     そろそろ花火始まるし行こっか。

夏:うん…そうだね。

無言で君とあの時に見た花火の場所まで歩く。

そして着いた瞬間。

ヒュー……バン!

大きな花火が打ち上がりそれを見つめていた。

そしてふと君の方を見ると、花火に照らされた君の横顔が。

それに見蕩れていると。

夏:フフ…なに?
     私の顔になにか着いてる?

〇:あ…いや。
     またこうして一緒に見れると…思わなくて。

そうして花火を見ながら他愛もない話をしてるとあっという間に終わっていた。

夏:終わっちゃったね。
     帰ろっか。

〇:うん。

また無言で帰り道に着く。

そして気づいたらまたあの交差点へ。

夏:今日はありがとね。
     一緒に来てた子にちゃんと謝っておいてね。

〇:うん、分かってるよ。

夏:それじゃ、またね。

〇:うん。

少しの間無言で向かい合っていたが少しのはずがやけに長く感じて君が背中を向けようとした瞬間。

〇:夏鈴…

夏:ん。どうしたの?

〇:あの時の夏鈴が言った事、今でもずっとこころにのこってる。
     そしてずっと後悔してる。
     あの時なんで夏鈴のことを追いかけなかったんだろうって。

夏:ん。

〇:だけどこうやってまた会えた。
     だから今日はちゃんと伝えたい。
     俺は…あの時からいやもっと前から。
     夏鈴と仲良くなった時からずっと、ずっと。

『好きでした。』

〇:こんな俺で良かったら、遅くなってしまったけど。付き合ってください。

夏:…ばか。

君がそう言った瞬間、君は僕に抱きついてきた。

夏:…ばか。ばか。

〇:うん。ごめん、ばかで。

少し抱き合っていた後に君が口を開く。

夏:……よ…

〇:え?

夏:いいよ…!

君から聞いたこともない大きい声が聞こえてきた。

〇:ほんとに…?

夏:うん。
     私もずっと好きだった。
     また〇〇に逢えるまで待ってた。
     今日で会えなかったらもう諦めようって思ってた。

〇:良かった。会えて。

1年後…

〇:この1年頑張ってお金を貯めたんだ。
     あっちでもちゃんと暮らしてける。
     また同じ仕事につければいいな。

璃:〇〇さんっ!
    もう行っちゃうんですね…

〇:璃花ちゃん…
     うん。今までありがとね。
     これからもあのお店で頑張ってね。
     俺も頑張るから!

璃:はいっ!
     あっちでも元気ですごしてくださいねっ!
     あと、たまには帰ってきてくださいよ!

〇:うん、もちろん笑
     それじゃそろそろ行くね。

そうして僕は駅に向かい、新幹線に乗り1時間半くらいをかけて引越し先に向かう。

駅に着き、改札を抜けると。

夏:〇〇…!

〇:夏鈴!!
    迎えに来てくれたんだ!

夏:うん。
     〇〇がわかんないかなーって…笑

〇:さすがにスマホで調べれば分かるよ笑

夏:ふぅん…
     嬉しくないんだ…

〇:え?
     嬉しいに決まってるでしょ!

夏:ん。笑
     んじゃ行こっか。

〇:そうだね。
     行こ!

そうして君が手を差し伸べてきて僕はその手を握った。

そして僕たちが住む場所に向かっていった。

あの後悔した夏の夜に消えた花火は

僕らの一瞬を照らし

僕らは祈るように星空を眺め

この時が終わらないでと願っても

また明日は来る。

でも今は違う。

もうあの時の後悔なんてしない。

祈るだけじゃない。

ちゃんと掴んだ、もう話さない。

〇:夏鈴

夏:ん。

〇:好きだよ。





fin.



モチーフ曲:クレナズム/『杪夏』




こんばんわ。
今回は最近ハマっている曲をモチーフに書いてみました。
歌詞の内容をどう表現するか大変でしたが暖かい目で見てください。
ではまた!


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