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三代続いた親子の確執 その12

幼馴染で、二歳年上のお姉さんが近所に住んでいた。家は金物店で経営者であるお父さんは、市議会議員も務めていたかたである。お姉さんの名前は瑞子(みずこ)私はいつも「みっちゃん」と呼んでいて、兄弟の末っ子である彼女は、私のことを妹のように可愛がってくれ、「みよちゃん、うちに遊びにおいで!」としょっちゅう誘ってくれた。

みっちゃんのお父さんは市議会議員だったので、私がみっちゃんの家に遊びに行くと、いつも大勢のお客様が来ていて、みっちゃんのお母さんは、お手伝いさんに指示してお茶出しをさせていた。

「あら、いらっしゃい。魚屋のみっちゃん!」とお母さんはいつも歓迎してくれて、その後「みっちゃん、お客様にお茶を出すのを手伝ってくれない?」と頼まれることが多かった。最初は、お手伝いさんのお茶出しをじっくり見て、ご挨拶の仕方からお客様へのお茶の出し方をまねてやってみた。

地元の有力者のかたに、粗相のないようにお茶出しをするという経験は、自分の家では、有り得ないことだった。自分の日常にはない世界。なんだか新鮮だった。お茶出しの用事が済むと、お母さんは「ありがとう!助かったわ。このお菓子を瑞子と一緒に食べてね~」とこれまた私が食べたことのないお菓子を渡される。

よそのおうちは、私のうちの環境となんでこんなにも違うのだろう。こんな風な家に私も生まれたかったなあと、自分の環境を卑下していた。みっちゃん親子の会話も羨ましかった。怒鳴る言葉など聞いたこともなく、お母さんはゆったりな口調でいつもみっちゃんに話しかけていた。

方や、私の母親と言えば、口汚い言葉をしょっちゅう使う教養のないどうしようもない母親に見えて、疎ましく思っていた・・・



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