Dollars Drawers Dreamer 第一話
「おめでとうございます! あなたは選ばれました!」
「は?」
貧乏アパートの玄関先。似つかない小綺麗な女性にそう言われた。
「これを受け取ってください。そして、あなたは大金を手にするのです」
そう差し出されたのは一枚の黒封筒。カード在住と書いてあるが、差出人は書かれてなかった。
空けてくださいと言わんばかりの女性の目。仕方なく封を開ける。
「これは……」
見た事のないカード。黒く、そして自分の名前、そして「残金 : 3,000,000」とデジタル文字が映し出されていた。
「あなたは今日からインベスターです! これを受け取った瞬間から、そういう運命なのです」
何が何だか分からない。が、このカードが危険であることは理解できた。
「帰ってくれ。これも返す」
「でも、あなたがインベスターである事実は変わらないですよ? それに、カードは手放さないほうがいいかと」
彼女の声と同時に、タイヤがパンクしたような音が近くから聞こえた。
「早速敵襲のようです! さあ、早くそのカードを!」
女性は言う。一体何があったんだか。
「お前……それはまさか……」
アパートの階段から上がってきたのは、髭を蓄えたおじさんだった。ホームレスのような風貌だが、手には黒いカードを持っていた。同じだ。
「お前もインベスターだな?! スワップ!」
男は叫ぶと、その黒いカードは変形した。
拳銃だ。
「10万!」
声と共に発砲音が響き渡る。そして、それは俺の腹を撃ち抜いた。
「は……? がっ……」
痛みは本物だった。一体何故俺はこんな事に……
「お前……初心者だな? 都合がいい。金を寄越せ」
「か、金なんて無い……」
「あるだろ? そのカードが!」
10万! と男はまた叫ぶ。今度は俺の右肩を撃ち抜いた。
「俺の拳銃は高いが確実に当たる。次は頭を撃つぞ」
何だ。これは。
拳銃だなんて冗談じゃない。警察を……
だがしかし、スマホはテーブルの上だ。おそらく家の中に入るより先に撃たれる。
「戦うのです!」
女性は叫ぶ。
「たた……かう?」
「スワップと宣言してください!」
分からない。何が何だか。
しかし家の中に戻るよりそうしたほうがいい。俺の勘がそう言っていた。
「スワップ……!」
言葉と共にカードが変形した。
それは足元から人の形となり、徐々に人体を形成していった。
「ふぅん? あんたがご主人様?」
それは少女だった。勝気なつり目に、赤い髪のポニーテール。腕は細く、短いスカートに制服のような姿をしていた。
「なるほどね。こいつを殺ればいいのね」
ふぁ〜あ、と欠伸をしながら、少女はそう言った。
「五月蝿い! 今度は 50万だ! お前らまとめて殺してやる!」
「やれるもんならやってみな?」
少女がそう放った言葉と同時に、発砲音が響き渡る。
「わ、わっ」
俺は彼女に突き飛ばされ、少女は一瞬で男の前へと移動した。
人間の動きじゃない。
「おい! ご主人様! こいつをいくらで殺る?!」
殺る……? 本気なのか?
「あなたの武器はその少女のようです。さあ、インベスター、あなたは『投資』してください」
投資だと……?
「何が何だか分からんが、お前の好きなようにしろ!」
「は〜い。じゃ、遠慮なく」
カードの残高がゼロになる。すると、彼女の周りに魔法陣のようなものが浮かび上がった。
「リジェクト!」
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