シェア
柚木library(ゆのきライブラリー)
2022年6月29日 22:42
T拘置所の前に着いたときには雨は本降りに変わっていた。運転手が気を利かせて玄関のすぐそばまでタクシーを寄せてくれたが、庇に辿りつくまでのほんの数歩で皮靴の底に水が溜まる勢いだった。災害レベルの大雨だ。 わたしを驚かせたのは雨の勢いではなく、無遠慮に焚かれたカメラのフラッシュの方だった。庇の下にはずらりとマスコミがならび無数のマイクをこちらに突き出している。誰もが叫んでいるが雨の音に掻き消されて