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スタジアムで見た“多様性”

 2024年4月7日(日)

 J1第7節FC東京VS鹿島アントラーズの試合で、新国立競技場のゴール裏スタンドに行った。

 FC東京の試合で新国立競技場は行われていたが、仕事やらブラインドサッカーのトレーニングがあったりして行ける機会がなかったので、今回初めて普段観戦している、ゴール裏スタンドで応援した。

 国立競技場が新しくなってから初めてゴール裏スタンドに行ったが、全席指定席になっていたり、座席に背もたれが付いていたり、スタジアムグルメが充実していたり(ビール1杯900円はビックリ!)昔の国立競技場を知っているが故に時代の流れに驚いた。

 そんな初めての新国立競技場のゴール裏スタンドを含めた環境に驚いたのだが、試合中にほっこりする出来事があった。



・ゴール裏スタンドのど真ん中に2人の青年

 僕は、FC東京のゴール裏スタンドの中心部で観戦していた。


 どこのチームでもそうだが、ゴール裏スタンドは大声で歌ったり、飛んだり跳ねたりする場所だ。中でもその中心部は、太鼓や旗、襷があったり、人が寿司詰め状態になっていたりして、僕個人はそんなことを思わないが、見方によっては危ない場所である。

 試合中、恐らくキックオフしてすぐか、直前だったと思う。

 白杖を持った青年とその介助をしている青年が階段を降りてやってきた。

・全席指定が故に…

 白杖を持った青年が目が見えないのは予想できた。介助をしている青年はスマホを目に近づけて、必死になって座席を確認していた。

 その動きを見て僕は、介助しているのも視覚障がいを持っている方、弱視(見えるけど、見づらい)の方なんだなと理解した。

 僕は、口頭で今いる場所を伝えたり、スマホに表示されている座席の場所を代わりに見てあげたりして、席に誘導しようとしたが、応援が始まっており、声が通りづらい状況だった。

 前節の浦和戦をはじめ、国立競技場での試合は全席指定だった。僕も含め席を選ぶのに苦労した方も多数いるだろう。目が見えない、見えずらい方は尚更だ。

 2人の座席を見た時に気がついた。2人の席は離ればなれになっていた…

・席が離ればなれになった2人に対して周囲のトーキョーファンは?

 2人の席は離ればなれになっていた。

 日常生活だと、視覚障がいの方々に積極的に介助しようとする場面は少ないかもしれない。

 だが、その周囲にいたトーキョーファンはお互いに席を入れ替わったり、移動したりして離ればなれになっていた2人を隣同士にした。

 前述の通り、僕はブラインドサッカーの世界でいちプレイヤーとして携わっているのでチームメイトはもちろんのこと、他のチームの選手であっても困っている様子があれば、介助するようにしていた。しかし、日常生活の場面、ましてやサッカー場でそのような場面を見ることはこれまでなかった。

・感じたこと

 現在、世間では“多様性”という言葉が重要視されているが、様々なバックボーンを抱えている人がいる中で、同じ思想や気持ちを持っていればお互いに助けたり、助けられる…歪み合ったり、「妬み合ったりしても仕方がないし、お互い様だよね」っていうのが多様性なのではないのかなと感じた。

 ブラインドサッカーの世界に携わってから、様々な場面で“多様性”というのを伝えられてきたが、どこか違和感を覚える場面もあった。

 前提条件、思想、考え方がない中での“多様性”は混乱を生むだけなのではないのかなと感じていたが、今回このような場面を目の当たりにして、「考え方が近いもの同士であれば、多様性は自然と生まれる」と感じた。

 “多様性”って難しく考えがちだけど、お互い様という気持ちがあればそれだけでも充分理解しているし、行動できる。そんなことを思ったFC東京のホームゴール裏でのいち場面だった。

 

 

 


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