ストロングマン
いつかは、南米やアフリカに行こうと思って予防接種を受けた。
バンコクのスネークファームにある病院では、日本で受けるより3分の1程度の金額で済む。
僕は、ありったけのワクチンを打つことにした。
事務手続きも全てシステム化されており、タイ語がわからなくても、流れ作業で打てるようになっていた。
女性医師が最初英語で質問してきたが、よくわからない。
こういう輩がよくいるんだろう。
手慣れたもので僕に、「黄熱病打つ?狂犬病打つ?」と日本語で一つずつ聞いてきたが、途中から丸をつけながら言われた。
僕は過去に打ったことがある「はしか」、以外は全部打つと言った。
二回打たなければいけない物もあり、三週間あけて再度病院に行った。
二回目は医師の問診はなく、残りのワクチン6本を打つことなった。看護師は、人懐っこかった。
ワクチンは、すべて注射器とアンプルが1つの箱に入っており、看護師はアンプルから薬を注射器を吸い取りセットしだした。
セットしながら、注射器を指でピンピン弾いて空気を抜きながら、「イタクナイネー」とか「スコシイタイ」と笑いながら言う。
注射器の針の太さが違う様で、もちろん太い方が痛い。
右肩と左肩で三本ずつでいいかと言われ、僕は頷いた。
それ以外はバランス悪いやろう。と思った。
一本目「イタクナイネー」と言いながら打たれた。
確かに痛くない。僕も「痛くない」と言った。
3本目まで「イタクナイネー」で右肩が終わった。
左肩の4本目は、「スコシイタイネー」から始まった。
確かに痛い。僕は「痛くない」と言った。
5本目も「スコシイタイネー」そして、最後の6本目は「トテモイタイネー」だった。激痛が走る。
僕はそれでも無表情に「痛くない」と言い張った。
看護師は、「オー、ストロングマン」と言ってきた。
僕の勝ちだ。