3月の本棚🌙又吉直樹『月と散文』

・朝ドラ『舞い上がれ』に久しぶりに又吉くんが出ていた。
・パリの古びたアパートに住んでいた。
・「もう短歌が詠めなくなった」と言うたかしくんに、又吉くんは『誰の声が聞こえる？ 誰に話しかけたいと思う？ 話したいことができたら言葉にしてみ』とノートに書き残し、去っていった。
・この部屋を使えばいいと言って。
・一人残されたたかしくんは、パリのロックダウンのなか部屋に閉じこもり考える。何日もした後、舞ちゃんの声が聞こえてきて、舞ちゃんに話しかけるようにしてノートに随筆を書き始める。
・誰かに話しかけることから始まるのかもしれない。

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・そんなことを、今病院にいる友達にLINEしていたら、その場面をどうしても送りたくなり、録画したテレビの画面を再生しながらスマホのビデオで撮った。「違法だよ、アゲルくん！👮」 のやつじゃん。って思ったけど、アップロードするわけじゃない。

・頑張って撮り終えてテレビをつけたら、『あちこちオードリー』に又吉くんが出ていた。録画するの忘れてた！ 10分も過ぎてる。

あちこちオードリー | TVer

・又吉くんは、一緒に出ていた平成ノブシコブシの吉村に、「マイルールがあり、けっこう細かくてうるさい」と暴露されていた。論理にこだわる性質で、自分でも思い当たるふしがあるらしい。意外な気もしたが、聞いていたらなるほど納得。面白い。

💤

・朝、家を出る間際になって、自分がめちゃくちゃ機嫌が悪いことに気が付いた。電車の時間に間に合うかどうかの瀬戸際で、そもそも早朝からなぜ一時間以上もかけて遠くの歯医者に行くのか？ ということに対し、苛立ちと疑問がわいていた。(歯が痛かったからだよ)
・そもそもあと2日で春休みが終わることに全身で恐怖を覚えていた。
・ストレスが体のあちこちに現象として出現している。

🚃

・歯医者に行った後、梅田のタリーズで書いた文章もひどく機嫌が悪かった。
・思い立ち、本屋に又吉くんの最新エッセイを見に行った。エッセイの刊行は10年ぶりとのこと。
・前のように飛び付いて買う、というのではないと思っていたが、少し読んだだけですごくいいことがわかった。

・コロナによって無理やり壊されたこの世界について書いていた。
・世の中に課された新しいルールを額面通りに受け取らず、変わらされてしまったもののことを書いていた。
・「マイルールがあり、けっこう細かくてうるさい」という吉村の評を思い出した。
・『舞い上がれ』で、又吉くん演じる八木のおっちゃんの助言を受けて、たかしくんが書き始めたノートを思い出した。

4/9
舞ちゃん。

外出許可証を持って、久しぶりに外に出る。
『人間が生きる為に必要な店』だけが開いている。
シャッターの下りた店の奥で、本や洋服、楽器たちが息をひそめている気配がする。
いつのまにか街はコートがいらないほどの暖かさだ。
けれども眩しい光が降り注ぐ大通りに歩いている人はいない。春という輝く季節が、まるで受けとる人のいない贈り物のように放置されている。
スーパーまで来ると、ようやく人の姿が見えた。
互いに顔を背け、無言ですれ違う。感染対策の基本だが、他人を警戒することで、そのために毎日少しずつ、人を信じる気持ちを失っている気がする。

・又吉くんが書いた脚本ではないはずなのに、不思議と重なる。

😷

・私はマスクのことが言いたいのだ。これまでのこの三年間でマスクについて言われてきたこと、国が配った嘘みたいなアベノマスクも含めて、正しさのわからないこと、不織布がいい、ウレタンはダメ、布も万全じゃない、式典行事は不織布で、病院も老人ホームも不織布で、5月○日…いや3月○日から外してよい、個人の判断に任せることにする、4月からは学校でマスクの着用の必要はない……。
うるさい。うるさいうるさいうるさい。しゃべるな。マスクについてこれ以上干渉してくるな。もう一生分以上の介入を受けた。たかがマスク？ いや違う。体感では確実に個人の内面への介入も含まれている。私はたしかに壊されてしまった。
・元にもどることはできない。壊される前に。介入される以前に。個人のことなのに、国家の介入をよしとしてしまう体になってしまった。
・せめてもう何も言わないでくれ。
・3月の中旬、「街の光景として、やはりマスクだらけなのは市の長としてつらいものがある」とツイッターで呟いたある市長がいた。街の景観に対する感想を、個々人の内面の自由の尊重と混在しないでくれ。
・私の受けた傷はそんなに簡単には癒えない。そんなに単純じゃない。何年もかけて修復あるいは新しく作っていくものだと思う。又吉くんのエッセイは、そういうことを見逃さず書いている本だと思う。無かったことにはできないし、そんなに雑なことではないのだ。

又吉直樹、10年ぶりのエッセイ集『月と散文』が遂に発売。コロナ禍で向き合った、孤独と家族、青春の後の“欠落”した日々とは | ダ・ヴィンチWeb