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みんなみんな外国語


最近は、言葉が苦手だと思うことが多い。
言葉っていうより、LINEが苦手なのかもしれない。
いや、やっぱり言葉かな。

LINEでポンッと「引っ越し決まった?」って聞かれるのがしんどい。
「就職決まった?」
「彼氏できた?」
「子どもできた?」
って聞かれるのと同じ種類の質問だなーと思う。
聞いてきている方に言葉以上の他意はないし、そもそも「引っ越したい」のは私なので、これはその流れに沿う質問で、単なる用件っていうか、必要なことを聞いているだけだからやっぱり就職や彼氏や子どもとは違うか。考えすぎているのは私で、そんなこと言ったら何も送れないじゃんって言われるんだと思う。
みんな、使っている言葉が違うから仕方がない。
そのくせ、相手が自分と同じ言葉を使っていると思い込みがちだ。

今日、私が授業に行っているクラスの担任に、
「うちのクラスの○○君(不登校の子)の欠席時数を気にしておいてね。私は数えてるから大丈夫だけど、経験の浅い担任だと気付かないこともあるから、教科担当の先生が数えて知らせてあげないと、知らないうちに規定をオーバーしていたら大変なことになるから」
と言われた。
私には何だか一方的な言い方のように聞こえたし、それは担任と授業担当者のお互い様のことなのではと思った。
それに、○○君がどうして休み続けているのか、そのことについて担任の先生はどう考えているのか、私(授業担当者)に何かできることがあるのか、ということのほうが大切なのに、そういう話はこれまで皆無で、今も皆無のまま立ち去ろうとしているのは変だと思った。
私は、
「○○君はどうして休んでるんですか?」と聞いた。
すると、担任は「ただ、来られへんだけ」と答えて行ってしまった。
ただ来られへんだけただ来られへんだけただ来られへんだけ。
私はひとりでその言葉を復唱しながらトイレに行って、「ただ来られへんだけ」って何なんだろうと思った。
もしかしたら、あの担任の先生はあんまりその辺りのことを深く聞いてほしくなかったのかもしれない。
と思ったけど、別にそういうわけでもないのかもしれなかった。
あの人はあの人の世界の言葉を話し、それは私の世界の言葉とは違っていたというだけのことなのかもしれない。
もし、これが明らかな外国語でお互いに別の言語を話していることが明白だったら、もっと気を遣って、「通じない」ことを前提にしながら、お互いの言語や文化や感覚みたいなものを想像したり、寄せようとして努力しながら会話をするんだろうなと思った。それで、「通じた!」となったら、それだけでハッピーで、「よかったー! ありがとう! こちらこそ! バーイ!」ってお別れするんだろうな。
なまじ言語が同じふうに見えるから、互いに乱暴に自分の言葉を相手に投げつけてしまう。

そうかー、だから私はあの人が初対面の時からあんまり好きじゃないと思ってしまったんだなー
(さばさばしていて後を引きずらない人なので、楽なこともいっぱいあります)。使用言語の明らかな違いと、話すペースの違いと、自分の言語の圧の強さを自覚せず押し通してくるところかー(役職付きで仕事も多くて忙しいからね)。納得。

私は〇〇君がまだ学校に来ていた頃、授業の時に少し話したことがあって、「頭痛持ちでつらい」という話題で共感し合ったことがあり、それからずっと姿を見ないのは心配で残念だと思っていた。○○君が見せてくれた薬はロキソニンで、ずいぶん強い薬を飲んでいるなと思ったのだった。
「頭痛が起きたら一回寝て、それでも治まらなかったら飲むんです」と言って、授業中に一回寝ていた。
「頭痛の時は、周囲の音や気配もつらい」と言っていたから若いのに大変だと思ったし、そのままならなさを学校生活の中で飼い慣らさなければいけないことも、医者か親が言ったのであろう薬の飲み方を律義に守ろうとしている子どもの生真面目さのようなものも、何だか切なかった。
私には○○君についてこういう話があるけど、担任の先生に話そうとは思わなかったし、それはそれでいいのかもしれなかった。
ただ、その時○○君に、<授業中、サボりとかじゃない理由で寝ている人がいる>ということをあらためて知らされたような気もして、それからは、寝ている人がいてもいちいち落ち込んだり怒ったり(そもそも私はそんなに怒らないのだけど)しないようにしようと思えたのだった。

言語ってみんな違うし、じゃあどうしたらいいのかということは私にもわからないままだけど、やっぱり私はさっきみたいにただきくしかないのかなと思った。

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