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おじさんと話したい
新学期が始まった。
激烈時間割で、毎朝早くから行かなくてはいけないし、一日5個授業がある日が二日もある。
大丈夫なんでしょうか。
自分で決めて、水曜日を休みにしておいてよかった……
なのか、それだからしわ寄せ的にそうなったのかはよくわからない。
人に見せても「激烈時間割だね!」と言われる。
時間割を作る人が、悪気があってそうしたわけでも、無配慮でそうなった、とかいうのでもなさそうだ。
受け取った当初は恐怖で頭がいっぱいになったけど、徐々にそんなふうに思えてきたのはついにここでの生活が2.5年目になったからだろうか。
何となく人が見えてきたから?
わからない。
他の曜日に配慮を感じたり、長く滞在しなくて済むようになっている……気がする。
文字だけでなく、表(時間割)も深読む! 合ってるかどうかはわからないけど。うーん。やっぱり私の気がよすぎるのかも。
授業が始まり、2日ほど実行してみたら、案外いけるのかもしれないとか、いややっぱり多いって……ということを交互に思った。
それで、「クレーム」や「変更依頼」(という制度は無いが)という正式な形でなく、「ここまで激烈なのは初めてだから不安」で、ちょっと様子を見ながら実行してはみるけど見守ってほしい……! とかいうことを、時間割作成関連のおじさんに伝えたい。
という希望が生まれた。
私は知っていてほしいと思うようだ。黙ってフンフンフンヌンヌッ!!(憤怒)みたいなのとかはもう嫌みたい。
黙って手を抜いたり、自分の時間と体力をこっそり確保していく……というのはするけど、呑み込んで自己解決☆彡といういつものスタイルはよくないなという感じになっている。
世間話的に、ふわ~っと、相手を責めているわけではなく、何気なく悩みを話すみたいなムード……私から出ろ!
って思いながら、機会と言葉を探している。
持っている授業の数が多いので、どうしても日中はそのことに頭と体が支配される感じがある。
50分の授業時間を一人で運営する意識でいるというのは、やっぱり不自然で負担が大きいのだと思う。
できるだけ人としゃべっていたい。人間性とご機嫌をほどよく保ちたい。
4月になって色んな目標ができた。
その中の一つに、「どんなに忙しくても雑談をする」があるのだが、同じ立場の同僚達だけでなく、正社員のおじさん達としゃべりたいという気持ちが生まれた。
年齢だけでなく身分も違うし、そもそもおじさんは苦手だ。
でもいいおじさんもいるということや、いいおじさんがひどいことを言う場合があることを知った。
「許せないこと」は変わらないし私は忘れないけど、話すことでグラデーションが広がる。こういう面もあるのだと知ることができる。
そして、基本的に人はやさしい。そういうことを知りつつあるのだと思う。
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昨日は声が大きいおじさんに話しかけた。
朝、トイレの前の廊下ですれ違って挨拶をしたから呼び止めて、今年授業に行くその人のクラスについて、聞くことがあるのを思い出したのだった。正確には、クラスの名簿が欲しかった。
おじさんは、目の前に私しかいないとは思えない声量で、「それは#&%$‘’フォルダの中にありますよ! 僕は持ってないので、#&%$‘’フォルダを見てみてください」と言った。
あ、そうだ。この人はすぐに引き受けず、尋ねてきた人を動かそうとしたり、自分の担当を認めずたらい回しにする性質があるんだったーーー!
(これって理系脳だから? あるいは外国とかのスタイルだったりする?)
と思ってすぐに気持ちを失いかけたけど、私は勇気を出して、「#&%$‘’フォルダって何ですか? どうやって見るんですか?」と食い下がった。
『え? 知らないの?』って言われ始めそうな年数を、この場所でそろそろ過ごし始めているのかもしれない(でも、わずか1.5年だからな!)。ということについては、前日、他の人にも、「○✕先生に聞いた方が早いかも……」ってたらい回しにされた時、その「○✕先生」がどの人かわからんのよ……とはもう言えずに思った。(無事に、仲のいい同僚に聞いて教えてもらった)。
関わったことのない人の名前を知らない。知らないままでいいと思うことにしているふしが私にはある。
いつまでも、ここに今日初めて来た顔でいる性質がなくならないな。
でも、一方で、そんななかでもあなたに尋ねたいと思った! ということや、あなたなら助けてくれると思った! と、私に思われて選ばれたことは意識にとどめておいてほしいもんだよ。
![](https://assets.st-note.com/img/1650089537658-5WSFRp53ng.jpg?width=1200)
パソコンの中にあるのか、実際のものなのかわからない「#&%$‘’フォルダ」……。
名前は頻繁に聞く「#&%$‘’フォルダ」……。
廊下に戻る。
おじさんは、「え! 先生、じゃあ他の必要なものは、#&%$‘’フォルダじゃなかったらどこから手に入れてるんですか?」と、これまたでかい声で問う。
私はしどろもどろに、「□□室のまん中の共有パソコンの脇に置いてあるクリアファイルの中に、紙に印刷されたものが入ってるからコピーしてます」と言った。
もう一度整理すると、つまり、われわれは生徒の名簿の話をしていたのだった。それで、私が授業に行くそのおじさんのクラスは特殊コースで授業ごとにクラスが分裂するから、私は、クラス全体のではなく私の授業を受けるメンバーだけの名簿を探しているというわけだった。
声のでかいおじさんは、「え! あ、クリアファイルに? 知らなかった!」と言っている。
なるほど。
理系デジタル生活人間(おじさん)VS文系アナログ生活人間(私)の対話が今行われているわけね。
生徒の授業の出欠席については、毎回iPad入力することになっている。けど、一応念のため、古来の紙ベースの出席簿は自分でのりとはさみで作成して持っておいてね、ってことになっているけどね!
でも、□□室中央パソコン横のクリアファイルの中に、授業ごとに分裂した名簿は入っていないのだ。だから聞いている。
おじさんは、「ともかくそれは〇▽部署の管轄だから、〇▽部署に聞いてください。#&%$‘’フォルダの見方も、〇▽部署に聞いてください」と言って会話は終わった。
私は、途中からそのおじさんとの会話を諦めていたからもういいやと思ったけど、同時に、「#&%$‘’フォルダ」を知らないなんてやっぱり情けないよなという気にもなった。
まったく。反省的でえらいよな。
それに、声のでかいおじさんよりも〇▽部署のおじさんのほうが話しやすいからいいや。
なぜか自分だって忙しい朝の授業前に、何の準備もなく自分とはまったく種類の違う人間を呼び止めて話しかけてしまった。そんな自分の常にないやり方に私はびっくりしていた。「とっさ」とか「勇気」とか、無いからちょっとやってみようと急に決めたんだよな。「えっ?」って言うみたいに。そのことについては反省しないでおこう。まるで馬鹿みたいな聞き方だったけど、悪かったと思わないように。と言い聞かせて私はトイレから戻り、ロッカーから必要なものを取り出していたところ、偶然さっきのおじさんが通りかかり、デカい声で、「あ! 先生、□□室にある名簿ってどこにあるんですか?」と聞いてきた!
あ、ちゃんと別の世界(アナログ)にも足を踏み入れようとしている。馬鹿にしたわけじゃなかったんだ。いいね! と私は嬉しくなって、いそいそとその場所まで連れて行き、「ここです!!!」と紹介した。
後は、そのおじさんが〇▽の部署のおじさんに、さっきの私との会話の経緯と、「#&%$‘’フォルダのこと、●◇先生(私のこと)は知らないって言うから」と大きな声で説明していたので、ヒャー! と思いながらもよろしくー! と思って、自分の授業の準備に戻った。
声のでかいおじさんの「●◇先生(私のこと)が……」と何回も言う声が響き渡っている最中に私は準備を続け、その後、〇▽部署のおじさんに呼ばれて「先生、#&%$‘’フォルダの開き方知らないって本当?」と聞かれて、私は情けなさと申し訳なさと感謝と面白いな~という気分が入り交じった笑いを浮かべ、開き方を教わった。
なんかよかった!
わからないことが解決したし、多少恥ずかしかったけど、ひとりで困り続けることにもならず、その後全部の意識を授業に注ぐことができた。どうやって聞こうか考えたり、相手のタイミングをみたりしていたけど、もう準備せずにとっさに聞けばいいんだな。そういうことができたな。
そして、午後の手の空いた時間にパソコンに行き、「#&%$‘’フォルダ」を開いたら、またわからないことが出現したので、〇▽部署のおじさんに聞いた。今度は別の! ほとんど初めて話す人。普通に親切だった。ユーモアあり。それに……! 私の名前を知っていた!
おじさんは人の名前を知っている。
これは発見で学びで尊敬する、いいことだった。
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