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ソロソロそろーり新学期

春日語カレンダーも、過ぎた日のほうがとっくに多くてよろよろだよ。(破り捨てないからよ)


「ボンボンぼんやり夏休み🌴」(https://note.com/yunicorn1221/n/na40c5b90a46e
のつづき。

私はその日、ノースリーブではないけどかろうじて肩は覆われている形のサマーセーターを着て行ったから、学校に着いて職員室でしばらく座っていたら急に不安になった。

この世界では、この服はまだ「腕と首と鎖骨が出過ぎている」と言われるかもしれない。

言うまでもなく、この建物の中でいちばん肌色なのは私だ。
腕の全部と、襟元も鎖骨の7センチ下あたりまでざくっとあいている。

すごくかわいくて、とても涼しい水色のセーターは私によく似合っているけど、もしかしたらおじさんや年上の女性に注意されるかもしれない(されたことはない。けど、かつてノースリーブの人が注意されたらしいという伝承)。

授業のはじめに生徒の体温を計ってまわる体温計の存在を思い出し(全員終わるまで5分以上かかります笑)、慌てて置き場所に取りに行ったら、後ろから女性の先生に声を掛けられてドキッとする。

振り向くと、「2学期もよろしくね~!」と言われる。

や、やさしい!!! こんなふうにはっきりと明るくてやさしい声を掛けるなんてすごい!

私はといえば、人見知りの名のもとに、あいまいな微笑みを浮かべて漂っているだけなのに。

時間や距離があいたなとか、
久しぶりでなんて声を掛けたらいいのかわからないなと思うとき、
あいまいに笑ってぼんやりしてる以外に、こんなふうにわかりやすく挨拶をしたらいいんだねー! 
知らなかった!

私はすっかり嬉しくなって調子を取り戻し、服のことを心配するのをやめて、やりたいことをやろうという気になった。

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「夏休みの思い出」を、生徒に書いてもらうというのをやりたいと思っていた。

だって、夏休みが終わってすぐに授業をするなんてむりーー!

でも、みんなはあんまり書くの好きじゃないかも。

せめて、圧を感じる作文用紙とかじゃなく、
遊びのムードで、メモ用紙程度の大きさの紙の上のほうに太陽とヤシの木の絵を描いて、「夏休みトーク」と書いた。それから、紙の全体にニコニコマークを模様のように散りばめた。☺️😊😶🙄いろいろな表情。…便せん? のつもり。

人数ぶん印刷して準備したけど、私はすべてを忘れていたからみんなのことがわからなくなっていて、そもそも書いてくれるかわからないし、
嫌かもしれないし、
だいたい私はいつもこんなことばっかりやっているな、とひとりで暗くなって自信を無くしていたのだった。

でも、話しかけてもらって元気になったから、私はやりたいことをやろう。

 

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クラスに行ったら、一番前の席の子が絶え間なく話しかけてくる。
(先生と話すのが好き。)

あー。そうそう。こんな感じだったな。思い出してきた。

チャイムが鳴って話し始めた私の夏休みの話はすぐに終わってしまい、早々に「🌞夏休みトーク🌴」の紙を配った。

本当は私がたくさんしゃべって「例」にならないと、みんな書いてくれないのに……
と自分を頼りなく思ったけど、私はずっとぼんやりしているのだから仕方なかった。

けれども、みんなはあちこちでしゃべりながら楽しそうにしているからよかったよ、
という気もした。
真剣に、「シーン」となって取り組むようなことじゃないのに、すぐ「シーン」となるクラスだったから、あ、楽しそうなのはいいじゃない、和やか、トークタイムいいじゃない、と思った。

……私、このクラスのこと覚えてたみたい!

一人の子が、「先生、今日ってもしかして授業しますか?」と聞いてきた。

おもしろい。そういうの大歓迎。交渉とか、相談とか、協力とか、お願いとか大事。

私だけが授業をしたくないわけじゃなくて、それは双方の意思のもと、授業をしない時間が生成されるというプロセスによる結果っていうか産物っていうか作品? ……が大事!(なんのこっちゃ。)

私が笑って「なんで?」と聞くと、

「今日本当は休もうと思ったんですよ。だってそうしたら三連休になるじゃないですか。でも、今日は短縮で午前中授業だし、と思って来た」と言う。

私は彼の言うことのすべてがわかりすぎて、「ワカルー」とか、「だよねー」と言って聞き、「そう思いながらも朝からちゃんと来て立派だね~」と心を込めて言った。

「だから、授業をするのはちょっと……」と言われたので、私も、「でも、私の夏休みトークのネタがもう尽きたのよ。だから困ってるの」と言ったら、「夏休み、何してたんですか?」と聞かれる。
さっきも少しは話したはずだけど、明らかな違いがある。
つまり、私は今話し相手を得たということ!!
それでなんだかその気になってきて、さっきは話さなかった、少し複雑でややこしい話をしてみた。

彼の感想は、「それは……先生の行動が異常ですね」というものだったし、私もそうだなと思ったけど、「本当はこういう話がしたかったの!」と自分で言ったら本当にそうな気がした。
こういう、自分でもよくわかっていないような話がいつもしたい。

それから、持って行ったスピーカーを鞄から取り出して、「じゃあ音楽を聴こうか」と言ったら、別の子が「ちゃんと持ってきてるんだ」と笑って言うので、私は「ちゃんと」という言葉に笑った。

それは、私のことも、1学期に時々やっていた<音楽を流す時間>のことも、私もみんなもそれが好きなことも、そういうことを含めて私が準備してきていることも、すべてをひっくるめて知っていますよという意味の「ちゃんと」に聞こえた。

あ、みんなは私のことをもう知っているんだな、と思った。
だから、われわれはこれまでもそんなふうにしてやってきたんですよ、と言外に教えられたような。
そうか。そうだね。

それで、夏休み前にリクエストをもらっていた星野源の『アイデア』を聴いて今日の授業はおしまい。

 

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次のクラス。

なんと全員出席。立派ですね~すごいよほんと。

去年から継続して担当しているクラスで顔馴染みということもあって、私と目を合わせてにっこりしてくれる子も多い。そうかそうか。

そのためか、私も力が抜けてきて、さっきの時間には思いつかなかったマイ夏休みトークが出てくる。あーこんな感じで私はたびたびとりとめのないことを話してきたね。

気付けば、夏休みに一緒に散歩した友達の名前を出し、黒板に挿し絵まで描きながら喋っていた。


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私は「夏休みに、学校のことは全部忘れた」と思っていたけど、本当はそんなことはなくて、私のことを知っている人たちの前で今こうして喋っているんだなー、一年前とは違って、もうここは知らない場所ではないんだなーって思いました。
と、その時思ったことをそのまま話した。

授業が終わって「🌞夏休みトーク🌴」の紙を集めたら、たくさんのことを書いていたり、私の出身地に合わせて書いてくれたのかな? と思うようなひとり旅の行き先の話、それからあちこちに旅やドライブやキャンプに行った話があった。

世の中はこんな異常な状況だけど、高校生は元気で、あんまり大きな声では言えないかもしれないけどみんな色んな場所に行ったりしていた。

よかった!! ちゃんと遊んでいることも、そのことを書いてくれたことも。

高校生たちが元気で楽しく過ごしている。そのことが、思いのほか嬉しく感じられたし、すごくホッとした。
怖いニュースばかりだけど、それに合わせて生活しながらも、みんなたくましく生きている。
多くのものが奪われたけど、それは全部ではなくて、生きているものがある。
そんなことに目を開かされたような、励まされたような気がした。

高校生が元気でうれしい、って自分が思うなんて思わなかった。自分が旅行に行けたかどうかとか(行ってないけど)、楽しい夏休みを過ごせたかどうかとか、そういうことは関係なくて、子どもや若い人たちが元気なのが幸せだと思うみたいだった。

そしてそれは私だけじゃなくて、けっこう多くの大人がそんなふうに思うんじゃないかなと想像した。

うなずいてくれそうな何人かの友達の顔も浮かんだ。

想像できたことがもうよかった。


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