『子はまだか?』と娘に聞いてくる親の気持ちを推測してみた(2023/10/20)
平成を越えて令和の時代になったが、妖怪『コワマダカ?』がまだ生息しているなんて知らなかった!
『コワマダカ?』……漢字ひらがな変換すると、『子はまだか?』。
それは友達のエイコが実家に帰った時に遭遇したのだという男の妖怪で、またの名を「父」という……。
こんなことを娘に言うなんて、(と)ぼけているのかな?
こんなふうに、頭に(と)を付けておけば、人の親に対して「ぼけている」と言ってもぼんやりごまかせる気がする。
自分の親世代の人たちが(と)ぼけ始めたのではないか? という疑惑を持つことが最近たびたびある。
それぐらい、特にその世代の人たちがこちらの想像の枠外すぎて何を感じ考えているのかさっぱりわからない。
……とかいった調子で話をそらさないと受け止めきれない衝撃妖怪だ。
🍎
2019年に自分の本を作った時、妖怪『コワマダカ?』について書いたのだが、その当時であっても半分ネタとして書いたのであり、私自身が言われたわけでも誰かが言われるのを目撃したわけでもなかった。
それが……今何年だよ、2023年だよ! なんなんだよ!
書きながら思い出してきたのだが、最近よくこの場で話題にしている妹の夫の親に、私も『コワマダカ?』と似たようなことを言われたことがあったのだった。
👵
妹が4年前に第一子を出産した時のこと、病院に顔を見に行ったら、妹の義父母と出くわしてしまった。
私が赤ちゃんの手や顔に触れたり、まじまじと覗き込んだりしていたら、突然、
『自分の子どもがほしくなるでしょう?』
と言われた。私の場合は女の妖怪だった。またの名を「母」という。妹の夫の母である。
私はぎょっとした。怖い! と思った。そういう人だとは知っていたが本当にそういうことを言うとは。何? 体がそういうことを言う設定にプログラムされてるの? っていうぐらいの恥ずかしさだった。他人事なのに恥ずかしかった。むしろこの台詞を言っとかなきゃ相手(わたし)に対して失礼だろう、ぐらいのデフォルトで言われた感すらあった。……なんだそれ。
💣️
その時も全部思ったが、実際には一つも言わなかった。
妹も言わなかった。
苦笑いで合わせ、流してしまった。
いや違う。
「産むのは痛いから嫌だ」と言った気がする。
本音であり、せめてもの抵抗だった。
ほとんど知らないおばさんに屈辱的な扱いをされたことへの、その時私ができた唯一の反発。やれやれ。
席を外していた妹の夫とその父が病室に入ってきて、話はうやむやになった。
親が帰った後、妹の夫は「俺がいない時、おふくろが変なこと言っとらんかった?」と妹に確認していた。
言ってたよ!!!
🤬
私が妖怪『コワマダカ?』のことを嫌だと思うのはなぜか?
ということについて、言葉で説明してみたい。
何でも言葉で説明する練習をするのだ。みんなで。
これが最近たどり着いたいろんなことへの答え。
🤔
私の場合は、自分の生殖にかかわることを、よく知らない人に安易にずかずか踏み込んでこられたことへの嫌悪がある。キモイ。
「自分の子どもがほしくなるでしょ?」って、産むのは誰という設定? 私? 勝手に決めつけんなよ。
私の身体のことについて勝手に言うな。何も言うな。
産むに至る行為についても踏み込んできているよね?
われわれはそういうことを話す間柄だったかね?
会うの二度目だよね?
それから、『子を持つことは絶対によい』という神話を疑わない無思考がおぞましい。自分一人で思うのは自由だがそれを他者に無邪気に向けるなんて罪悪だ。
もし相手(わたし)が、本当に子を持ちたいと思っているが何らかの事情で持てないでいる人だったらどうする?
私が結婚してないから安易に言ってもいいとでも思ったのか?
まずは結婚しろということで?
ひどいよね。終わってる。
それから、『自分の子どもがほしくなるでしょう?』 というのはつまり自分の子どもが一番かわいいということ? 勝手に決めつけないでほしい。人の子でもかわいい。かわいいものはかわいいのだ。
あまりにもすべてを履き違え、踏み外しているがゆえの発言に反吐が出る。
そのときの私と妹と同じように、その発言のヤバさについて今まで誰も指摘してこなかったとしたら、それはみんながあなたをかわいそうだと思ったから。
機嫌よく前時代の思考のまましゃべっているのをそのままにしておいてあげようとしているだけで、心の中でもう二度と会いたくないな、と思っている。
😶
ふあ~~。ついつい、自分が妖怪『コワマダカ?』に出くわした時の話をしてしまった。
友達のエイコが会った妖怪『コワマダカ?』は、続けて『不妊治療の費用なら出してやるぞ』と言ったのだという。
ぞぞぞっ。
エイコは果敢に応戦し、その場で父を黙らせた。
何とかして自分のことを守らないと、ということを考えると、その場ではとにかく激しい言葉で言い返すしかなくなる。
自分の本当に考えていることをゆっくり時間をかけて話すことよりも、撃退することが最優先になってしまう。
同時に、
父がどうしてそのようなことを言うのか?
深く考えて発言しているのか?
そんな言葉になってしまっているが、本当に心の奥底で娘に対して思っていることは何なのか?
ということについて聞き出すこともできなくなる。
🎃
そこで、エイコと一緒に、エイコ自身の気持ちと、それから父の深層を探るということに挑戦してみた。
エイコは普段から一人で自分のことを掘り下げて考えるということをしていたから、自分の気持ちについてはすぐに出てきた。
出産への不安と育児への不安、それから今とても幸せだということが挙がった。
面白いのが、私が『もし、出産するのが夫だったらもっと気軽に考えられた?』と聞くと、エイコから『ほんとそれ!!!!』と返ってきたことだった。
産むも産まないも、それから治療に挑戦するかどうかも、決定権と実行がすべて自分なのがしんどいのだという。女だという理由ですべてを背負わされる不平等。『君が産みたいならいいよ』って、言える方だったらどんなに気楽だろう! もし、『嫌だったら産まなくても僕はいいよ』って言える側だったら。そんな言葉ならいくらでも言ってやるし、待つよ! ああ!そんなのってなんて楽な立場なの!! 夫が産めばいいのに。もしくは交代制であるべきだ。
私は性にともなうこのような理不尽さを全然整理できなくて、自分について、子どもを持つことなどが考えられないのだと思う。
👶
次に、エイコの父について考えてみた。
エイコによれば、父は、結婚したら次のステップは普通に子どもだろう、と単純に考える、いわゆる前時代の住人であるとのこと。
エイコは父に、「なんで私に子どもを産んでほしいの?」と聞いたらしい。
父の答えは、「俺の財産を引き継ぐものがいなくなるから」だった。ズコーッ!💥
エイコは一人っ子で、結婚して夫の名字になった。
女性が夫の側に改名するのがデフォルトなんて、これも変な話だとエイコ自身感じている。
それにより、エイコの家系は途絶えることになる。変すぎる。
父の財産は、娘であるエイコが引き継げばいいとは思うけどな。その先を考えると、孫がいない場合は誰もいなくなるということを父は言いたいのかもしれない。
エイコは父の答えにずっこけたと言い、
「せめて、『おまえに似た子どもならかわいいだろうから』とか『孫に会ってみたい』とか言ってくれたら、そうなんだ! って思うのに」
と言っていた。
私はそのようなことを自分の親に言われてもキモイと思う気がしたが、その辺りも人によって全然違うんだなとわかった。
🐾
さらにエイコと一緒に、エイコの父について考え続けた。
すると、いろんなことがわかった。
父は仕事人間で、子どものおむつ一つ換えたことがないらしい。家のことは全部妻任せだった。
エイコ自身、子どもながらに、実感としてお金に苦労させられたことはなかった。むしろ、何かしたいことがあれば協力するし援助すると言われてきたし、実際助けてもらったこともある。
そういう経緯から考えてみると、本当は父は娘に幸せでいてほしいと思っていて、自分ができることは金銭面のことだけだから、そのようにして何とか力になりたいと思っているのではないか? むしろ、娘に対して自分ができることは何でもしたいと思っているのではないか?
父はそういう心の深層部分は言わずに、表層のところだけを口に出すから反発を買ってしまうのかもしれなかった。
事実、エイコと言い争いになった時、父は確認するかのように「じゃあもう不妊治療はしないってことでいいんだな?」と言ったらしい。とても興味深い。
エイコにできることは、父の代わりに、父の思っている(かもしれない)深層部分について、「お父さんが思ってるのは、~ってこと?」と確認してみることだ。
言葉になっていない人の代わりに、言葉にできそうな側がまず当たりをつけて相手にぶつけてみること。
たしかに、『コワマダカ?』や『不妊治療の費用なら出してやるぞ』はグロテスクで、撲滅したい言葉であることに間違いないのだが、そのヤバさを激しく糾弾する一方で、同時に、言葉にならない人(自分も含めて)のことを考えてみたいと私も思ったのだった。
だから、言葉にすること。これをみんなでやっていかない??
少しだけ、「オープンダイアローグ」を意識しています。
それによって、相手を糾弾することだけでなく、相手のことを推測することをしてみようと思って。本当は話を聞くのが一番いいのだけど、少しずつ、いろんな場面で人と一緒に練習していきたい。
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