好きなものは全部好きのまま諦めなくていい。優未がくれたメッセージ
私史上最高な朝ドラ「虎に翼」がついに最終回を迎えました。多方面から共感や称賛の声が寄せられる名作で、私も書きたいことが溢れて仕方がないのですが、今回は主人公の娘である優未の生き方がくれたメッセージについて綴りたいと思います。
一つの道を突き進んだ母と正反対の娘
「虎に翼」の主人公である寅子は、女学校時代に法律家の道を志して以来、戦争や幾多の障害によるブランクはありながらも、一貫して法律に携わり、弁護士そして裁判官としての道を歩んでいきます。家族に法律家はおらず、当たり前に専業主婦である寅子の母親は「(法律家を目指すことは)地獄をいくこと」だと言い寅子を止めますが、寅子は強い意志で法律の道を突き進みます。
一方、娘の優未は、その時々の家族の影響を受けながら、幼い頃から料理、茶道、着付け、そして麻雀を嗜みます。成長して大学院まで進み、寄生虫の研究に携わるものの、「寄生虫の研究を好きなままでいたい」との理由から大学院を退学します。余談ですが私も博士後期課程に在籍し研究しているので、このエピソードは頷きすぎて首もげるかと思いました。退学後は、知人の和菓子屋や雀荘を手伝いをしながら、自宅や実家の家事を担います。
この母娘、生き方が正反対です。大学院を辞める時も、その後定職に就かず手伝い(今でいうアルバイト)を掛け持ちしながら家事を引き受ける生活も、寅子は優未を応援して「好きなように生きたら良いわ」と伝え応援します。しかし、心の中ではずっと心配で「自分の育て方が悪かったのではないか」と思い悩みます。
そんな寅子に優未が伝えた言葉。
この言葉で初めて寅子は、自分とは異なる優未の生き方を初めて完全肯定できたのではないかと思います。
「子どもは自分とは別の人格」「子どもは自分で生き方を選ぶべき」と頭ではわかっていても、一緒に過ごす時間が長すぎて、なかなか心で理解するのは難しいものです。法律家という一つの道に決め、突き進み、切り開いてきた寅子なら尚更でしょう。でも最終回の直前に、寅子が心の底から優未を肯定できて、私自身が救われた思いでした。
目指したいと思えるロールモデルがいない
話は令和6年に変わりますが、先日、起業家支援をしている方と話している時に出た言葉がこちら。
これは起業家の話ですが、企業に勤める友人もそう言えば似たようなことを話していました。
このように目指したいと思えるロールモデルがいない問題は、今の日本の女性活躍推進の一つの課題ではないでしょうか。
背景として、日本の国民性がもつ「自らに課した目標に向けて道を極めていく人を賛美する」傾向にあると思います。人の価値観が文化によってどのように変わるかを、6つの切り口で表し公開している「ホフステードの6次元モデル」では、調査対象の国や地域の中で、日本は最も「男性的」な価値観が強いとされています。
一方で、北欧やタイ、ベトナム、韓国は「女性性」な価値観が強いとされています。
この様に日本は、一つのことを突き詰め、目標に向けて突き進み、成果を出すことを良しとする社会です。まさに寅子のような人が、日本社会が求める「女性リーダー像」なのでしょう。
しかし、何かを突き詰めることは、何かを切り捨てること。まさに集中と選択です。令和の世になっても、女性は生活の中で様々な役割を担っています。女性活躍推進の名の下、社会から働くことを求めらる一方、文化的な背景から家庭における家事・育児・介護の負担は女性の方が圧倒的に大きい。当たり前のようにマルチタスクを求められるなかで、何かを突き詰め、何かを切り捨てることは難しい。そんな生き方を日本社会はなかなか肯定してくれません。
「虎に翼」に話を戻します。平成11年、寅子が亡くなって15年後、優未は自宅で着付けとお茶の教室を開きながら、雀荘と寄生虫研究の雑誌の編集に携わりながら、実家で介護と子ども達のお世話をしています。一つのことに絞るのではなく、好きなことを、好きなまま、ずっと携わる生き方を選びました。
一つのことを突き詰める事を良しとする社会で、あれもこれも持ち続けることは、さぞ生きづらかった事でしょう。しかし、何かを突き詰めて事をなした人を題材とする朝ドラで、たくさんの大好きを抱えながら何も成さなかった優未を、最終回で描いてくれた。このことに、救われた気持ちになったのは私だけではなかったはずです。一つに絞らなくていい⤴︎、好きなものは好きなままでいい⤴︎、そう天国の直道お兄ちゃんもきっと言ってくれている事でしょう。
全部80点でいい。全部諦めない。
私自身の話をします。小学校の頃から満遍なく全科目で「良」がもらえる、でも決して「優」はもらえない子どもでした。大学生時代も自分のやりたいことは見出せず、なんとなく食べ物関係ということで就職先を選び、総合職として様々な職種に携わりました。個人事業主になって初めて自分の専門分野を決める必要に迫られましたが、最初からは「あれもできるしこれも経験してきました…」としどろもどろでした。
現在はマーケティング支援の会社を起業し、胸を張って「私の専門はマーケティングです」と言えますが、今度は仕事に加えて博士課程での研究や子育てなど、やっぱり一つに絞りきれない生活を続けています。人によれば「あれもこれもやっててすごい!」とお感じになるかもしれませんが、一つに絞りきれない、全部80点で決して100点は取れない生き方が、私自身はあまり好きではありませんでした。
でも、優未の生き方を寅子が肯定した瞬間、その気持ちがスッと楽になりました。「虎に翼」が一貫して伝えている「特別でなくていい、どんな生き方でもいい、あなたはあなたのまま、そこにいるだけで価値がある」というメッセージは、優未の様な一つに絞らない生き方にも向けられているのだと気づきました。
「全部80点でいい。全部諦めない。」
実はこのメッセージは、私が代表を務める株式会社monamieのロゴマークにも、実はこの思いが込められています。
創業時にプロのコピーライターさんにまとめていただいた企業理念にも、人生における様々な役割について言及しています。
1人の人間にもたくさんの役割がある。仕事か家族か、ワークかライフか、そんな集中と選択は必要ない。経営者であることも、研究者であることも、母であり妻であることも、全部本当の自分。100点は取れなくても好きなことは全部やっていい。そしてそんな生き方を選ぶ経営者の皆様のパートナーとして伴走したい。そんな思いが、このロゴには込められています。
創業する際に考えていた企業理念と私自身の生き方を、優未と寅子が肯定してくれたように感じた最終回でした。
株式会社monamieは、創業期から成長期の経営者の皆様のマーケティング、ブランディング課題に伴走支援いたします。マーケティングを担ってくれる仲間がいない…という経営者の皆様、ぜひお気軽にお問合せください。
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