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個人事業のビジョンを考えて会社員時代に思うこと

独立してよく考えるようになったのが、「自分自身のビジョン」、つまり「自分が人生において成し遂げたいこと」だ。会社員だった頃に会社のビジョンやミッションについてCEOと議論することはあったが、独立して「個人事業主」になると、同じように「個人事業」のビジョンやミッションを考えることが必要になってきたのだ。個人事業主というのは会社ではないので、事業のビジョンというのはそのまま自分自身のビジョンとなる。それは自分の人生のテーマと言っていいだろう。

もともと私が独立したのは「やりたいこと」よりも「できること」を優先したという経緯があるため、「Why(なぜやるのか)」のないまま「What(何をやるのか)」が走り始めていて、そこに若干の気持ち悪さを感じていた。数か月前からビジョンを考え始めてはいたのだが、すでに仕事を始めているためどうしても現状に帳尻を合わせがちになり、考えがまとまらない。そこで今やってることは敢えて無視して自分のビジョンというものを考えてみた。

すると行き着くのはやはり「多様性の実現」だ。モノや人がボーダーを超えて交ざり合うことでいい化学反応を起こし、文化をさらに豊かにすること。多様な価値観や生き方が認められる社会になり、それによって色んな人がもっとハッピーに生きられるようになること。言葉で書くとえらく陳腐に見えてしまうのは残念だが、どんな形であれその実現に貢献することができたら、という漠然とした思いはまだ10代の頃から持っていた私の「芯」だ。それらと何の関係もない会社員生活を過ごしているうちにしばらく忘れていたけれど、大学で国際文化学部を選んでアメリカの多文化主義について学んだのもそういうことだったはずだ。

次に自分の「ミッション」、つまり「自分がやること」を改めて見る。これは以前デザイナーとディスカッションして決めたものがある。"Helping clients grow their business through words"、つまり「言葉の力でビジネスの成長に貢献する」というものだ。文でメッセージを伝える力を、自分が生きてきたビジネスの世界で活かして、ブランディングや認知・アクション創出、ユーザーエクスペリエンス向上につなげていくこと。これが私のミッションだ。

多様性 ✕ 言葉 ✕ ビジネス。このビジョンとミッションを掛け合わせた領域が、自分が今後追究していきたい部分だ。今やっている仕事でいうと、海外のサービスが日本展開するときのコピーのローカライゼーション、そして「働き方」を提唱している企業オウンドメディアでのコンテンツ企画・執筆が当てはまる。これらはこれまでも自分のなかで非常にしっくりきていた領域だ。ビジョン・ミッションに沿った事業ってこういうことだなと腑に落ちた。

(※ちなみにローカライゼーションとは、あるサービスが別の国・地域に進出するときに、そのコンテンツや宣伝手法を現地の文化的背景やユーザー特性に合うよう設計すること。つまり、「モノ」がボーダーを超えてうまくその社会に受け入れられるようにするためのものだ。)

もちろんまだ独立1年目なので、チャンスがあればどんなお仕事でも真剣に取り組む所存である。しかし、自分のなかでこのようにメインとなる方向性を明確にできたことで今後の営業活動もしやすくなるし、記事を企画する際にも自分ならではの提案ができるようになる。何よりも自分のなかの「芯」を明確に出来たことで、精神的にずいぶんと落ち着けるようになった。

ここまで整理して思うのである。ビジョン策定とは果たして事業主に限ったことだろうか。ふと気づいてみれば、会社員であろうと「人生において成し遂げたいこと」の芯を持っている人はみんな強いし、仕事において彼らならではの価値が提供できている。そして、彼らの周りには自然と人が集まっている。

そういう人たちを思い浮かべてみると、たとえ会社員であっても、私たちは「働く」ことに対してもう少し主導権を取ってもいい気がしてくる。たとえばワークライフバランスを例にとっても、本来自分にとって何が最適の働き方かというのは一人一人が考えるべきものだが、なぜか日本では「会社が取り組むべきもの」「会社から与えられるもの」という構図になってしまっている。先日私の友人が、「会社を良くするために色々取り組んでいるが、白けた空気を感じる」と嘆いていたが、それも同じことだ。「会社が〇〇してくれる」という受け身の発想でいる限り、その人ならではの価値は提供できないし、仕事なんて面白くなりようがならないのではないだろうか。

その主導権を取るために必要なのは、たぶん「自分のなかに芯があるかどうか」だ。そしてその芯から描かれるビジョンは、決して取って付けたようなものではなく、自分のこれまでを掘り起こして見つけるようなものではないだろうか。よく「自分のやりたいことを実現するために会社を利用する」と言ってる人がいて(特にリクルート界隈)、これまで「なんだかかっこいいこと言ってんな」ぐらいにしか思っていなかったが、自分で個人事業のビジョンを描いてみてようやくわかった。と同時に、もしかすると私も会社員時代にちゃんと自分自身のビジョンを持てていれば、もう少し有意義な会社員人生を送ることができていたのかなとも思うのだ。

前回の記事で「目的フォーカス」について書いたが、結局、何においても目的が明確になっていればパフォーマンスを最大化できるのだなと思う。自分の人生・キャリアや事業を考えたときに、「ビジョン」が必要なのはそういうことなんだろう。

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