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探しているものはなにか

 小さめの個室で私はシャワーを浴びていて、そこに何枚かの紙が投函された。開いてみると通告書だった。
「あなたの契約期間は3年後までです」
 派遣会社のような役割をするところからの封書だった。私はそれを見てひどく肩を落とした。ずっといられるはずだったのだ。でも3年と言われてしまった。私はその紙以外の給与明細のような紙だけ持ち出して、その通知書はその場に置いて出てしまった。
 今度は学校の教室を二つ繋げたような広さの片隅で、またシャワーを浴びていた。全面が窓で、外から丸見えだなと思いながら髪の毛を流していた。すると教室の端から大勢の人が入ってきた。私は少し焦って自分の下半身をみると、パンツを履いていた。あれ? パンツ履いている。安堵するのと同時にこのまま服を着たら服が濡れちゃうなぁなどと思う。その大勢の人々はさらに数を多くし増えていく。大勢の人々は、よくみると手慣れた一人に先導されて、この先の奥の教室を目指しているようだった。私は早く上がろうと思いながら髪を流す。すると今度は上半身に紺色の薄いダウンジャケットを着ていた。まぁなんでもいい、早く上がろう。私はそそくさと近くの出口から出て、角の方で体や髪の毛を拭いて身なりを整えた。
 あの大勢の人々は奥の部屋に入って、皆同じ動作をしている。どうやら警察がやる敬礼の動作のようだった。しかも皆同じ衣装を着ていた。その教室の前でもまだ大勢の人が待っている。これはオーデションなのかもとピンときた。しかも、まだ知られてはいけない映画のようだった。だって、この新型コロナウイルス感染が広がっている最中、こんなに大勢の人が密に集まっているのだし。
 そのことに気づいた時、一人の監視員のような女性のきつい視線が飛んできた。ハッとしたと同時に、大事なものをこの建物のどこかに置いてきてしまったことを急に思い出した。そのことで頭がいっぱいになり、大勢の人がいる部屋に構わず侵入しそれを探した。それゆえ監視員の目はもっと厳しくなり、私を大きな声で叱責した。私は逃げた。掴まってはならない。監視員は「〇〇の会社の人間だね」と私の雇用に関わる固有名詞を叫んだ。私は、あの契約期間が書かれた紙を置いてきてしまったことを悔いた。あそこには会社名が書かれている。私は必死に逃げた。逃げる途中にも大勢の人々がオーデションを受けるために集まってきていた。
 なんとか難を逃れ1階に降りてこられたが、やはりあの紙を残してきたことが気になる。もう一度取りに行こう。始めにシャワーを浴びた階は確か9階だった。ここにきた時と同じようにエレベーターで9階にあがればいいと気づき、そのエレベーターまで駆けつけた。が、行ける階は7階と12階だけだった。おかしいなと思いながらもそこは諦め、隣の通路をずっと奥まで進んだ。その先はテレビ局の大道具が置かれている倉庫のような場所になっていた。いったんそこに入ったもののこれ以上は道がなく進めないだろうと判断し、引き返した。引き返したはいいが、なんと元の道を戻れないような仕掛けがされていて、私はまんまとその罠にはまった。道を行き交う人に紛れて、その罠の抜け道を探るように何度も突破を試みたが…。

at 20200425


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