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"排臨"を語る

いくつかの忘れられないお産の中に
"排臨"が気持ちよかったというのがあります。

排臨(はいりん)とは
陣痛がくると赤ちゃんの頭が見えてきて、
陣痛が治ると引っ込んで見えなくなる状態です。
だんだんと頭の見える範囲が広くなると
引っ込まなくなり、
"発露"(はつろ)という状態になります。

初産婦さんの場合は、
赤ちゃんができるときに
会陰(えいん・・・膣と肛門の間の皮膚)を
傷つけないように何度も何度も
排臨を繰り返し会陰を伸ばしながら
赤ちゃんが出てきます。

混沌として周りが見えなくなる
子宮口全開大前を超え、
小休憩を挟む。

次の陣痛が来ると新たな力が湧いてきて
今度は力を入れて便を出すようにいきみたくなり
子宮口全開大を迎えます。

ここからは自分のゾーンに入る集中が必要で、
その集中できる環境を作れるのは
助産師の力にかかっているなと
つくづく思います。

静かで、温かで、
薄暗く小さな明かりの灯る部屋の中で
誰にも指図されず、自分が楽と感じる体勢で
力を入れたくなったら入れる。

そっと足と足の間を見せていただくと、
髪の毛がしっかりとはえた艶々の赤ちゃんの頭が
見え隠れ。

助産師の心もほわ〜と嬉しくなります。
トクトク聞こえる赤ちゃんの心臓の速さにも
耳をすませながら、
何度も何度も繰り返す排臨に
産婦さんが心地よさを感じられるように
不必要な言葉は発さず、邪魔しないように。

あまりに綺麗に伸びる会陰と
艶々の赤ちゃんの頭に
このままの綺麗を残したい、
産道に傷をつけたくないという思いがふつふつと湧いてきます。

自分がここにいていいのか、、、
とすら思うぐらいです。

会陰にオイルをそっと塗って、
ゆっくり伸びていく会陰に期待をしながら、

どうか自分の技術で会陰が切ませんようにと
ドキドキしながら
静かに深呼吸をして震える自分の手を、
自分の心を落ち着かせ。

この気持ち良い排臨を見る度に、
ああ、この美しさを保てるように、
自分自身レベルアップしていかないと、
と背筋が伸びます。

そして、そんな私の
この人のお産を守りたいという気持ちを汲んで、そばで一緒に静かに見守ってくれている
医師や助産師の先輩方。

綺麗に会陰が伸びて、
血液の一つつかない赤ちゃんが
生まれてくるのは、
一緒に見守ってくださっている安心感があるからです。
大事な要素の一つ。

この綺麗なお産はチームで作られている。
それにいつも感謝しています。



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