ビジネスと責任
(2年半前にFBのノートに投稿したものです。FBのノートが使えなくなってしまったのでここに再掲します。)
事件がきっかけ
社員が破壊すべきハードディスクを持ち出して私的に売却したという事件が起きている。この事件はビジネスにおける責任の所在が末端の担当会社に集中しているが、本当に責任を持つべきなのはそこだけなのだろうか?中間の利益を得ている会社は関係が無いような報道だが、それは違うと感じている。
公的案件における中間業者が多すぎる
日本のビジネスの多くが下請け構造でできあがっている。おかげで新たに現れる技術への対応やイノベーションの展開は歩みが遅く、現代の日本の大きな問題でもある。特に顕著なのが、今回の事件のように官庁もしくはそれに類する会社からの発注案件で構成されるビジネス構造である。「それに類する」などと回りくどい表現をしたのは、東京電力の福島第一原子力発電所事故における作業下請けを念頭に置いた。この場合には7次下請けが存在して巨大な下請け構造であることが知られている。特にそこで問題になっている個別の下請け会社の事件があるわけではないが、その下請け構造そのものの存在に疑問が湧く。単なる「やらずぶったくり」の中間業者の多さである。
技術力のある会社に下請けを回す悪習
筆者もかつて、ある下請けに組み込まれそうになったことがある。それも7次下請けであった。その案件は10億円で大手SI業者が自治体から落札し、下請けに出したところどこもそれに対応できるだけの技術力のない会社ばかりだった。筆者のところにこの案件が紹介されたのは、当方にこの案件を実現できる見通しがあったからであるのは当然であるが、その価値が10億円という金額であった。しかし、当方には500万円ですべてを実現するように紹介をされたのである。では、残りの9億9500万円はどうなっているのか?答えは、中間のマージンにすべて消えているということにつきる。もちろん、筆者は当時それができることをウリにしてビジネスをしていたので、やりたい気持ちは十分にあるが、あまりにも価値と代金との差が大きいため、断らざるを得なかった。紹介者は、「どうしてあなただけが可能な仕事なのにやらないのか?これを断るようならもう仕事を紹介しない」と半ば脅すような言葉を投げつけられた。結局、この案件は誰も実現できずに自治体の調達は中止になっていた。
やらずぶったくり
当時、私が考えたことは、金額に対する責任は誰が持つかということだった。今回の事件でもわかるように、中間業者はまったく責任など持つ気配すらない。そして、その発注元の金額からすると、何か不具合があるならば、一生をかけてもそれを対応しなければならないことは容易に想像できた。まったくもって、常識に鑑みればそんなばかな話はない。だが、それが当たり前に存在しているのが、現在の日本である。大金がかかっている高度な技術成果が、やらずぶったくりの中間業者に中間搾取され、本当に必要な技術投資に回っていかない。これでは日本の技術ビジネスは遅れないほうがおかしい。現にDXなどというのは、もうあきれるほどの低レベルなことを問題にしているが、ことの本質は技術への対価が正当でないことにつきる。ましてや、責任など形ばかりでしかない。
日本のビジネスは中間搾取ばかり
このような下請け構造に依存して生活している会社は、日本の90%以上であるのではなかろうか?だから、高い金額を支払った物品も、その内容は極めて安価なものの集合体で、見かけだけが高級そうに飾られている。物品だけではなく、それ以外の不動産だとか金融商品だとか、さまざまなビジネス構造において、本質的でない部分での中間搾取の構造が目立つと感じるのは私だけではなかろう。