【ライナーノーツ】コンセプトEP「lying liar」「陰キャネット」
みなさんこんばんは、あなたの夕凪みちるです。
作詞作業の息抜きに脳みその整理もかねて、キーボードを叩いています。
2024年は2つのコンセプトEPをリリースしました。
M3に合わせて1枚コンセプトEPを作成するのが恒例になっていますが、正直まあまあいっぱいいっぱいで作っています。
作りたくて、表現したいことがあって、自主的に制作しているため「ほな辞めたら?」と言われてしまったらそこまでなのですが、制作を止めてしまうのが怖いと思う心があります。
表現者でなくなってしまうのが怖い。そんな今日この頃です。
コンセプトEP「lying liar」
その言葉はまるで砂糖菓子のように甘く脆い
嘘と本当をテーマにした本EP。
どんな人間でも、多かれ少なかれ嘘を吐いて生きているものです。
嘘と本当を繰り返しながら、嘘を吐くのはどうしてか、嘘を吐いてまで守りたいものとは何かを問いかけるというのが裏テーマとなっています。
インスピレーション元は、ずいぶん前のドラマ「カルテット」からです。
グレーを分かち合い、共存していくことを描いた作品と私は解釈しています。
直近で大流行した「嘘はとびっきりの愛」というキラーフレーズを掲げた作品とは全く関係ございません。
私は嘘とはどこまでも自分のために吐くものだと思っています。
もちろん相手のことを慮った優しい嘘というものもあるでしょうが、慮るための嘘であり結局は手段としての嘘です。
だからこそ、私は嘘を肯定します。
誰かを傷つけるような事実無根の暴論は論外ですが、自分を慈しむための嘘は美しい、そう考えています。
lying lair(作編曲:ミズナイオリ/ 作詞:夕凪みちる)
甘くて脆い嘘を吐くことそのものにフォーカスした楽曲です。
作詞では秘密は秘密として、見せたいと思うところ以外には触れさせないことを意識しました。
言い方が下品ですが、過去一”女らしさ”を感じる楽曲だと個人的には思っています。
往々にして、この手のバランス感覚は女性の方が得意な傾向にありますよね。
そして、社会がそれを求めているとも言えるのではないでしょうか。
この事象について私は批判的ではないので誤解はしないでほしいところです。
時に自分にさえ嘘を吐いて甘えることを選ぶ女の子、とっても愛おしいと思うので。
見せかけの弱さや脆さも武器にする強かさを私は肯定します。
繊細で脆い雰囲気からドロップ部分で一気にどろっとなるのがミズナイオリ氏の得意分野を感じて、完成稿をいただいた時は思わず拍手でした。
いつもありがとう。
honest(作編曲:nardius/ 作詞:夕凪みちる)
本当をテーマに、嘘を吐く理由にフォーカスした楽曲です。
真っ白な本心とそれを包むグレーのベールのような、そんな世界観で制作しています。
本曲は伝えたいことを過去一ストレートに歌詞に落とし込んでいるため、これ以上語ること自体が野暮な気もします。
夕凪みちるの評価いただいている楽曲はこの系統ではなく、踊れるような、つまりDJイベント映えする楽曲だと自負しています。
しかし、私自身の制作の根底には「自身の思う美しいものを描きたい」という気持ちが強くあります。
綺麗めな曲というだけではなく、美しいと感じる在り方を描きたいと表現すれば伝わるでしょうか。
所謂DJイベント映えする他楽曲も、この曲で描きたいものとしての在り方を一番に考え、描きたいものが一番美しく表現できるように考慮した結果そんな曲として世に公開されているという順番になります。
nardiusさんは楽曲意図を毎回丁寧に汲んでくれた世界観の構築をしてくれるので、本作も絶対にnardiusさんにお願いすると元々決めていました。
美しい世界を描いてくれて、ありがとうございました。
本曲はなんと、珍しくMVが公開されています!見てね!
lying lair(nardius Remix)
honestを経た上で改めて「嘘」を表現すると伝えた結果生まれたのがこのRemixです。
私はEP制作時こんなRemixがいいよ~とは一切伝えてないんですけど(本来は伝えるべきです、誤解なきよう)、圧巻で脱帽でした。
ミズナイオリ氏の原曲は甘さや脆さが前面に出ている印象なのですが、本Remixバージョンは嘘を吐いている自身により自覚的という印象を受けます。
原曲は外から見える印象にフォーカスしているのに対し、こちらは自身を俯瞰的に表現していると言えばいいのでしょうか。
な~んも伝えてないのに(なんも伝えてないはさすがに語弊はあるけど、深い意図までうまく伝えられた自信は全くないです)、ここまでアンサーを出してくれるコンポーザー、好きでしかない…
大ファンです…いつもありがとうございます…。
honest(Nob Furukawa Remix)
出出出~~古川ノブ~~~!!
古川ノブ氏はトランスのイメージが強い方が多いと思うんですが、この手のRemix作るのがすごく上手なんですよ。こっちももっと評価されてほしい。
2:25/3:40あたりからの再構築が欲しかった古川ノブを感じて、依頼して大正解だったと思いました。
嘘を経た上で再度本心に触れるパートなのですが、nardius氏の原曲が自身と向き合っている鏡越しの対話としたら、古川ノブ氏のRemixは記憶を辿る電車に乗りながら自身を見つめ直している旅のような、そんな印象を受けます。
Remixに求めるものは個人個人で違うと思うのですが、原曲と違った解釈を与えてくれる点が私は好きなんです。
全く別の楽曲ではないけれど、同じ物語の違う視点を描いてくれると言いますか…。
ようやく古川ノブ氏と楽曲が制作できて良かったです、また何かやりましょうね。
lying lair(桜ノ宮 Remix)
嘘/本当/嘘/本当と繰り返し、最後は嘘でこのEPを終えたいというのが最初から構想としてありました。
全体を通して聴くと、嘘を吐くことが上手くなっている印象を受けるのではないでしょうか。
脆さは感じるものの、危うげな雰囲気よりは意志の強さを感じるような。
桜ノ宮氏にももちろんこんなRemixにしてと一切伝えてないんですけど、この人ならそう作ってくれるだろうという信頼に完璧に応えてくれて流石だなと感じました。
当たり前のことですけど、こういう作り方って信頼関係の出来た相手としかできないので、そういう方がいてくださることに対し改めて感謝の気持ちでいっぱいです。
いつもありがとうね~。
アートワーク(イラスト:おむらいす)
イラストの良さは言わずもがな。
本心を覗き見るような窓のような枠と、ドーナツから連想してトーラスを置いたのデザイン面でのこだわりポイントです。
コンセプトEP「陰キャネット」
令和6年、インターネットは陰キャのための居場所ではなくなった。
テーマは直球にインターネットです。
インターネット浦島太郎なんて言葉もありますが、3日見ないだけで移り変わる流行に置いていかれてしまうような今日この頃。
SNSは日々進化なのか退化なのか分からないようなアップデートがかかる。
バカにしながらもミームを擦ることをやめられず、息苦しささえ感じる。
それでも我々陰キャはインターネットから離れることなんて絶対にできない。
本作はこれまでひたすら徹底して描いてこなかった、悪意や嫌いという感情をこれでもかというほど前面に出したEPです。
前述のとおり、基本的に制作方針として「美しいものを描きたい」という軸があったため、これまで一切負の感情を負の感情として露出した楽曲は制作してきませんでした。
けれど、インターネットに生きる私がインターネットを語らないのはフェイクだろうという気持ちも常々ありました。
私はバーチャルアイドルという偶像を生きていますが、その実当たり前に人間で、陰キャで、嫌だったことは一生忘れないし、人を恨みも妬みもする。
夕凪みちるに求められている像からはかけ離れてしまうかもしれないけれど、それでも伝えたいと思ったことをひたすらにぶつけたのが本EPになります。
陰キャネット(作編曲:node / 作詞作曲:夕凪みちる)
アーティスト側がこの発言をするのは危険だと思うのですが、それでもあえて書きます。
安っぽい言葉で感情を表現することが嫌いです。
楽曲をBGMとして消費するTiktok文化が嫌いです。
バズ狙いのダンス付きのMVが嫌いです。
分かった気になって高説を垂れ流す考察文化が嫌いです。
伝えたいことをくみ取らず、音が強いだの弱いだので楽曲を評価する人が嫌いです。
自分は違うと斜めに構えた自分が好きな人が嫌いです。
そして、そんな自分が誰よりも何よりも一番大嫌いです。
この楽曲の歌詞を確定させるまで、過去一苦い思いをしました。
自分の嫌なところを直視することは当然苦しく、ナイフのない自傷行為を重ねるような時間だったと振り返って今では思います。
けれど、そんな自分こそ本当の私です。
発声表現としては、喚いているように、より愚かに聞こえるように意識して収録した楽曲になります。
Track自体はかなり早い段階から完成していた楽曲だったので、このTrackに負けね~くらい棘を出すぞ!が目標でした。
出来てるかなんてわかんね~よ。俺陰キャだから。
すうぃーと・ねがてぃゔ・そんぐ(2024 ver.) (作曲:naca_nyan / 作編曲:小明 / 作詞:夕凪みちる)
陰キャなので、Twitterのことは一生Twitterを言います。Xなんて認めません。
数年前に作成したすうぃーと・ねがてぃゔ・そんぐの2024年バージョンで、元も今もTwitterを描いた楽曲になります。
Twitter、どんどん変わっていきますよね。
どうしてこうなっちゃったんだろうと思うようなことも多いです。
旧バージョンがしょうもなく消費されていく毎日を肯定する祈りの曲だったのに対し、2024 verはどうしようもなく消費される毎日だって悪くないよねと自分に半ば言い聞かせるような印象の楽曲になっています。
The萌えソングといった雰囲気の中に祈りや思想が閉じ込められている楽曲が好きなので、本曲もそれに倣ってリニューアルしています。
すうぃーと・ねがてぃゔ・そんぐ (internet is broken) Remix:node
hyperflipです。
テーマの一つでもある、壊れてしまったインターネットを描くRemixとしてこれ以上のものはないと思います。
こちらもRemixを作ってとは伝えましたが、どんな形になるかは完成稿を聞くまで一切わからない状態でした。とんでもないの出来ててワロタ。
本来EPを制作する場合、EPを通した全体の音作りというものがあるのですが、今回はあえて一切度外視してそれぞれの楽曲を制作いただいています。
闇鍋感が欲しかったのと、感情のままに楽しんでもらいたかったので。
音圧差も含めて臨場感を楽しんでほしいところです。
(no) tification(作編曲:node / 作詞:夕凪みちる)
通知なし。
今インターネットで生きる者として、通知がないというのは実質死んでいることに等しいと思っています。
社会で透明になるより、インターネットで透明になることの方が恐ろしいと感じる人も多いのではないでしょうか。
私は誰からも見られなくなることが本当に怖いです。
観測されてこそのバーチャルアイドルですからね。
そんな歌詞でしたが、しょ~もないクソツイがバズっちゃったりと何とも言えない2024年でした。
本曲は他の楽曲と比べて、明確に”今風”の展開で制作していただいた楽曲になります。
発声はより陰キャらしく聞こえるように、あえて口角を極力上げずに収録しています。
本来歌を歌う際は口角を上げ綺麗な発声で歌いあげるものなんですが、これはあえてできるだけ”足りない”ように意識しました。
歌う時以外も基本的に口角は上げたほうが声の通りがよくなるので、陰キャの皆さんは参考にしてください。
アートワーク(イラスト:夕凪みちる)
特筆すべきはロゴの出来の良さです。nodeさんなんでもできるじゃん。
私が描いた元イラストから10000%魅力を増やしてくれてほんまにありがとう。
結びに
息抜きがてら書き始めたライナーノーツでしたが、気づいたら作詞作業そっちのけで一気に書き終えてしまいました。
本末転倒過ぎる。
2025年の楽曲制作もすでに開始しておりますので、今後も夕凪みちるの描く創作物にぜひ触れていただけたら、大変嬉しく思います。
また、誰かの世界観に花を添えるお手伝いもしたいので、ぜひボーカルや作詞でお声がけくださいませ。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
夕凪みちる