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アフターダーク[読書記録]


私が村上春樹を好きになったきっかけであり、好きな本ツートップだ。(ちなみにもう1つは、辻村深月の凍りのくじら。)


村上春樹の作品で初めて読んだのはアフターダークではなく、国境の西、太陽の南だったが、主人公の世代もストーリーも、当時の私にはあまりピンとこなかった。多分今読んでも変化はあまりないのではないかと思う。


19歳の時に初めてアフターダークを読んで、マリと同い年だったことや、私も1人歳の近い姉がいることもあって、当時の私の感性にすっと入ってくる作品だった。

19歳の男の子ならまだしも、女の子にすっと入ってくる作品、村上春樹作品にはそれほど多くない。(どうでもいいけど、19歳っていう年齢の人を単に男・女って表現するのなんか似合わないし、かといって男の子・女の子の表現も幼すぎて違和感、、)

あらすじは特に記載しないが、一言で宣伝するなら、女性の村上春樹入門にぴったりの作品だと表現しておこう。


この作品、今までに何度か読み返したことがあるが、今回は英語版を読んでみた。どの人の翻訳がいいとか、特にこだわりがあって選んだのではなく、ただ書店に並んでいたのを選んだ。


初めて読んだ時はマリのキャラクターや高橋とのやり取り、エリの部屋を俯瞰している謎の視点が印象に残った。19歳の私は結構安直に、深夜のファミレスで読書する女の子を格好良い等と思っていた。今考えると微笑ましい。同い年ならではの感想だと思う。


初めて読んだ時は、理屈では説明できないことや、スリリングな展開、何でもない会話などの刻々と進む時間とともに場面が切り替わり、とにかく状況を追うのに精一杯だった。

そういう訳でストーリーを知った上、時間が経った今読むと、思うこともまた違ってくる。


同じものを読んでも、何度読んでも違う感想が出てきて、毎回違う発見をするのだから不思議だ。きっと次に読んでもまた違うことを感じるのだと思う。


今日は、コオロギの話が興味深く、留学しているからか、北京に行ったマリのその後も気になった。

もっと主題的なことでいうと、前までは「時間」や「夜」を主なテーマだと捉えていたなら、今日は「記憶」に重点が置かれていたように感じた。

良い記憶だろうと悪い記憶だろうと、些細なことであろうとどこかで見かけた文学であろうと新聞であろうと、あらゆる記憶が、人間の燃料になっているのだ。

その考えが気に入ったし、何だか腑に落ちた。
英語翻訳で読んだのでこのあたりの表現が日本語で綺麗な表現をぱっと持ってこれないのが惜しい。


メタファーなどについて結論を出すのは好きではないので(誰か他の人が出した結論ならいくらでも聞きたいけど)、エリが眠り続けている理由や、謎の視点については特にコメントせず引き続き考え続けようと思う。

翻訳の良し悪しは分からないけど、日本語ネイティブである私が、原作に没頭するのと同じくらいか、それに近いくらいのレベルで、するすると世界に入り込めた。これってかなり素晴らしいことでは。

グーグルで検索したら、Jay Rubinという1941年生まれの翻訳家で、他の村上春樹の作品も多く英訳している方だということが分かった。


そういえば、村上春樹も海外文学の日本語訳をしている。その中のどれかも、日本に帰ったら探して読んでみようと思う。


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