Sルール攻略レポート


①各花牌毎の戦略まとめ

(1)P

効果→抜いた瞬間チップ2枚オール+和了時ワンランクアップ(満貫未満は一律満貫に格上げ、役満は打ち止めで5倍満にはならない)

抜いた時→普段とほぼ変えない。1.2翻がややダマ優位になるくらい。特にのみ手の場合リーチをして4翻に届かないと打点が上がらずリーチの打点上昇のメリットが小さくなる。
例外として、東1局親番でダマ7翻ある場合はリーチをして出和了倍満はトリプルの一撃飛ばし終了を見込めるためPによってリーチ判断を変えうる。(6翻でも出て裏1くらいなら曲げていいだろう)

抜かれた時→全く変わらない。後述するがこのルール素点や着順の影響が小さいので打点が多少上がろうが気にしなくて良い。P抜いた親リーに差し込むシーンも珍しくない。

(2)O

効果↓
(10/31まで)手牌の2468の数だけ祝儀
(11/1から)手牌にある幺九牌の数だけ祝儀
※便宜上旧ルールをA新ルールをBと書く

抜いた時→Aではほっといても勝手に5枚くらい乗るのでシンプルに強い。とにかく内に寄せてタンピンをツモろう。どの花牌よりも安定した高火力を常に叩き出してくれる。また偶数牌をスライドすることの価値が大きいので先制良形でも鉄ダマになることが多い。

普通の麻雀では脊髄が勝手にリーチをかけている聴牌だがSルールでは巡目に関わらずダマとなる。この手の手替わりはピンズが3(シルバー)45(青金は2pとスライド、赤は微妙だがツモ切ってもいい)8、ソーズは23(PONを抜いている時9待ちに取ることがありえる)56(9とスライド可)と7種も存在する。こういう牌姿で雑に先制リーチをかけて有効な祝儀上昇を逃しているプレイヤーはしばしば見かけるため注意が必要。
抜かれた時→やれることがあんまりない。抜かれたら平均5枚程度あると思おう。全力で和了を阻止しに向かう。他家に差し込んででも避けよう。なるべく偶数牌を切らないようにスライドしていきたいが他の花牌との兼ね合いが難しい。

B追記
抜いた時→順子手では無理に端に寄せない。麻雀である以上牌効率はそうそう裏切れない。基本に忠実に打っていって自然に乗ることに期待しよう。幺九牌は使いづらいが、Aは8種32牌なのに対しBでは13種52牌も祝儀対象があるのでその分平均の祝儀枚数はあまり変わらないといえる(タンヤオで0枚になることは多いがその代わり2刻子で6枚や幺九牌4組の七対子で8枚、混老頭や国士で14枚などの大量獲得があるため差し引き大差ないと思う)。
またAの時より体感2.3割増でOの祝儀狙いの大明槓が発生している気がする。中張牌より場に出やすいからそう感じるだけだろうか。それはともかく槓で追加1枚は美味しいのでOを抜いていたら積極的に大明槓もしていこう。どうせ守備力がなくなってもゼンツすりゃいいのだ。
またトイトイやチートイとの相性もかなり良く、対子系の手を指向していくとかなり強い。
抜かれた時→6枚以上ある仕掛けは警戒する。特に端牌やオタ風を鳴かれた時は要注意。役牌の刻子を作らせるとそれだけで6枚以上が確定してしまう。こうなると安易に役牌を鳴かせない戦略が大事になってくる。全ツッパゲーといえども相手に和了らせないための技術はやはり重要であるといえる。注意すべきはリーチよりもむしろ対副露にあるということは意識しよう。
また、幺九牌は河にかなり切られるので注意してみれば門前相手でもOの枚数を推察することができる。カウンティングは意識しよう。

(3)N

効果→和了時に最後に河に切られた数字の枚数分祝儀(字牌は0)

抜いた時→毎巡手牌価値が大きく変わる。無理やり9を残して張ったら9を切って9枚を和了ろうとしても次に字牌をツモ切ったら0枚になって台無しになってしまうため、強引に残す意味はあまりない。それに無理に引っ張るとPONに討ち取られて大変なことになる。リーチかけた後には毎回わー9来た!うわ0だ!と坊主めくりの楽しさが跳ね上がる。噛み合った時の脳汁は絶品。

抜かれた時→如何に数字が小さい時に和了らせるかの勝負になる。3以下なら安牌があっても危険牌を先に切って振りにいくなどの戦略が重要。また上目が既に切れているのに安牌→9と手出しした人物はダマが入っている可能性が高い。抜かれた時のケアが一番厄介なのがNである。一巡だけ止めるのような戦略が発生しうる。

(4)PON

効果→和了牌の数字分祝儀(9pで和了れば9枚、字牌は0。要するにジュエルのクリスタル)

抜いた時→極力高めの数字に寄せる。孤立7〜9の価値が跳ね上がり、6ブロックにしてでも高い数字の待ちにすることも多い。

5巡目 抜き牌PONのみ

ある強い人の後ろ見をしていた時に出た牌姿。その人はここから8p切りの聴牌外しとしていた。24p重ねての69p引きが理想なのはもちろん、裏目の3p引きも7p単騎でダマにしたりさらに単騎転がしして大きい数字に寄せることもできる。

追記→この記事をとある強いスタッフに添削してもらったところ、「2p切りでいいじゃん」という意見があった。よくよく考えてみたら全くもってその通りだった。8p引きの679p残したり5p引き36p見た方がいいに決まってますね。

4巡目抜き牌PONのみ

最近考えているのはこういう牌姿で、実戦では出和了9枚と他家の足止めのためにリーチをしているのだが、実はこれはダマにすべきなのではないかと考えている。
確かに9sロンの権利は失うのだが、それでもダマ9sツモの18枚は残る上リーチをするとかなり北を打たれてしまうのだ(PON抜きリーチに対しては安い枚数で済むように字牌や下の数字は打たれやすくなる) 。ここでは北が出た際にはポン打9sとしてフリテンに受け、69s引き直しや258pや58sでの高め寄せを選ぶのが良い選択なのではないかと考えているのだが、当たり牌を見逃すということは当然和了が遅れその分他家の和了を許すことにも繋がるためこの判断はまだ答えが出ていない。一つ前の牌姿でも答えを仰いだ鉄強スタッフに意見を聞いたところやはりリーチでいいという。
抜かれた時→役牌の扱いが非常に大事になる。安易に鳴かせて数牌待ちにさせるくらいならば絞って他を埋めさせ字牌待ちにさせた方が良いケースは多々ある。たとえ切り遅れて放銃したとしてもやむを得ない。

例えばこんな牌姿があったとする。白をポンすれば69p待ちの極めて強い聴牌だが、白を絞り69pを埋めさせてのリーチの場合祝儀は1か0枚の弱いものになりやすい。ターツを簡単に埋めさせることで大怪我になることも珍しくないため特に役牌絡みの対応に技術が顕れると言えるだろう。とはいえ毎回役牌を絞っていたら和了れるものも和了れないしもう一人へのアシストもしたい。結局よほど手が悪くない限り無理に絞ることは出来なさそうだ。
また、これは抜かれる前の話になるが、ことPONに関しては抜かれた瞬間押しのコストが格段に上昇することが多々発生するため注意が必要。

リーチ受け中 場に抜き牌なし19pいずれも無筋


普通の麻雀なら19pどっちから押してもあまり差がないのだが、Sルールにおいては必ず9pから切るべきである。それぞれ1pと9pを押した後リーチ者にPONを抜かれたあとを考えると、1pを切って9pを残した場合と9p切り1p残しの場合で押しにくさが遥かに異なる。常に抜いた時と抜かれた時のムーブを前倒しで考えて打牌に反映させて行くことを心がけよう。

②着順はどうでもいい……こともないかもしれない

トップ50000点、2着30000点、ラス20000点の状態でトップを取ったとしよう。その場合2着から4枚ラスから8枚で合わせて12枚になる。ここからゲーム代を支払うため10.5枚。2人沈みのやや大きめなトップでもこの程度であり、毎局6〜10枚以上が飛び交うSルールにおいてこれはかなりどうでもいい存在といえる。こう書くと語弊があるが巷の麻雀に比べて着順と素点の比重は極めて小さいルールといえるだろう。そのため、同じ特殊ルールでも五等サンマとは異なり打点に価値がほぼなく(あっちはトリプルや数えの祝儀の価値が高く、そのため手作りが大事なルールになっている)、それに伴ってリーチの価値も大幅に低下している。オーラスの時だけ(2着まくると3枚得でトップならざっくり上下10枚ちょい変わるんかあ)くらいうっすらと意識しておこう。
追記→それ普通にデカくね?やっぱ最低限は意識した方がいいんじゃない?と最近は思い始めている。トップ狙いも行けたら行く程度には気にした方が良さそうだ。
それでも着順より抜かれた牌を重視して手組みや押し引きをしていくのは変わりがない。


③リーチ後に先切りせよ!

リーチ受け中、全員抜き牌なしの4巡目で8s無筋西現物

こういうシーンで安易に西をツモ切っている人は今すぐ改めた方がいい。これは絶対に8sを先切りしなければならない場面である。一巡切る事を先延ばしにしたがためにOやPONを抜かれ押しのコストが大幅に跳ね上がったりツモられたりして致命傷になる事態を招きかねない。例え8sで放銃しても抜き牌なしならば高くてもせいぜい4枚程度で済む。

これくらい悪くても8p切りを推奨する。抜かれた瞬間に全く押せなくなるから先に放銃しようという発想を持つことが大事だ。
これをさらに発展させると、

2巡目でリーチ受け中 場に抜き牌なし 現物は1mと南

こういう時は現物を打たずにソーズやピンズの真ん中を打って刺さりに行く。この手牌は安牌を切りつつ進行できるものの、追いつくには相当時間がかかる。また放銃することはないだろうが時間がかかる分花牌を抜かれて10枚超えの和了をされることも珍しくない。

 どうせ追いつけないならさっさと差しに行ってしまおうという発想だ。ただ、これは一人だけが攻めていてもう一人も手になっていなさそうな時に使う手段であり、もう一人の方も押しているならば降りて横移動を期待することも大事になってくる。(※押してる人の方に花牌が集中している時はリーチへの差し込みも検討すること)
 これが今回で一番大事な事だと私は考えている。とにかく自分の和了はできる限り高く、相手の和了はできる限り安くする。それを積み重ねてチップの山をサイドテーブルに築くのである。これは結構乱暴な話だが3枚までの失点はほぼノーダメージだと思っていいだろう。3枚の放銃で10枚のツモられを回避できるならそれで構わないしたとえそれで飛ばされようが何も問題ないのである。
ゲーム性としては東天紅に類似しており、東天紅やロケットサンマのような一局精算の麻雀が得意な人はかなり勝ちやすいと言えると思う。

③役ありリーチの是非

①のOの話でも触れたが、Sルールではスライドの価値が高いため先制良形聴牌であってもダマを選択すると解説した。ただ、もちろんリーチには打点上昇や一発、裏ドラといった祝儀獲得のメリットもある。どのような場面で役あり聴牌をリーチすべきだろうか。
 これについては、一発及び裏ドラの期待値を「2枚」と設定し、チップ2枚のメリットを覆す手替わりがあるならばダマ有利であるという判断を行っている。(ちなみにこの数値は体感値であり数学的裏付けは為されていない。有識者の意見求む。多分もう少し小さく見積もるべきな気がしている。)また、いくら着順の影響が小さいとはいえ順位を良くした方がいいことは間違いないためリーチをすることでトップ条件を満たす場合などはリーチをしてよいだろう(みんな意外と知らないかもしれないが、麻雀はトップを取るといいことがあるらしい)。具体的には、

抜きなし、5p金

これくらい手替わりがなければリーチしてよい。これの変化はO(Bで)を抜いての西ポン打2sや発の大明槓くらいで、それを求めるくらいなら即裏の抽選を見た方がマシであろう。

追記

裏ドラ
ツモかロンかで二倍違うが一旦それは置いておいて、シンプルにアガった時の平均裏ドラ枚数を考える。

花牌も含まれるが、アガった際の花牌を抜いている枚数は平均1枚としてみよう。
牌の種類が28種類で、手配が14枚+花牌1枚で

15÷28=0.536

平均0.536枚とわかる。
ここに、ツモ確率と、出アガリ確率の比を考慮すれば良いが生憎データがない。
対人ゲームなので、相手によっても確率は変わる上、また親か子かによっても大きく変わる。
だが大まかに、0.5 ~ 1 枚の間であることはわかる。(ツモった時は二倍なので1枚としてある)
これに10000をかけると、付加価値は、5000 ~ 10000 点相当である。(以下面倒なので8000点と仮定する)

一発と裏ドラ合わせて、リーチの付加価値が10000点(1枚)を超えることはほとんどないということがわかると思う。

https://note.com/taizin_make/n/na59ebc29f43e?sub_rt=share_b
三麻フリーにおける祝儀の価値 まぬる氏より引用

これによるとリーチの付加価値はほぼ0.8枚程度であるらしい。そのため上記したものよりさらに役ありリーチ判断は厳しくしてよいだろう。

また、リーチをすることで①の「各花牌毎の戦略まとめ」に書いたような(Nが低い時に差そうとしたりPON抜きなら安めで振り込もうとしたりというように)小賢しい真似をされることが結構あるためそれを防ぐためにも本手でもダマを選択すべき場面は多いだろう。
 言い換えると、「分かってる」人と同卓した場合積極的に差してもらえる可能性があるため役あり良形でもリーチをした方が和了率が高くなるという事態も発生しうる。
また、あえて言うまでもないと思って書いていなかったが、オープンリーチはほぼリスクのない3軒目を除いて基本的に損である。確かに和了全体の集合の中でのツモ和了の割合は増えるのだが、そのために和了率を落としてしまっては元も子もない。「どうせこんな待ち出ないからオープンだ!」という人もいるが、その人は和了牌を止めさせるということだけを見ていて和了牌以外を全て通させてしまうというデメリットを考えていない。どうしてもツモりたいならダマにして出たら見逃せばいいのだ。同卓したり後ろ見をしていて抱いた印象だがみんなそこまでまっすぐ全ツッパを貫くことは出来ていない。リーチによる他家の速度制約は思ったよりもバカにならないのではないかと最近は思っている(ここは特に同卓者の傾向によってエクスプロイトの余地がありそうだ)。


番外編 よいこのさんすう

これまでどうすればより多くの祝儀を稼げるかをレクチャーしてきたが、たとえどんなに素晴らしい手を和了ろうとも点数申告を間違ってはなんにもならない。なんならこれまでの中で一番実力差が出る要素と言っても過言ではないかもしれない。それにこれだけインフレしているのに何故か符計算を採用している。そのため心底どうでもいい50符の数え損ねなどで不要に思考のリソースを割いている。いくつか練習問題を出すので、それぞれ何点の何枚になるか数えてみよう。ちなみに制限時間はだいたい5秒程度を目標にしてほしい。正確に、かつ早くすることを心がけよう。
※ただし、特に記述がない限りOはAの「手牌の2468が祝儀対象」を採用する、Pのチップ2枚オールは省略する
ちなみに四華は祝儀が2倍になるので注意

【問1】

東一局西家ツモ 抜き牌O.PON



答え 東ドラ2 40符3翻2000-4000のO(10)+PON(4)=14枚オール

【問2】

東一局東家 抜き牌P.N リーチ一発ツモ裏なし、5sは1枚金




答え リーチ一発ツモチンイツドラ2で11翻は三倍満は数え役満の24000オールの1(一発)+2(金)+9(N)+2(数え役満)=14枚オール

【問3】

東一局南家ロン 抜き牌P.O.N.PON(OはB仕様)



答え マンズホンイツで本役満の32000点の【15(O)+9(N)+9(PON)+7(本役満)】×2(四華)=80枚

【問4】

東一局西家ツモ 抜き牌O 3s1枚銀



答え ツモチートイドラ1で25符4翻は3000-4000の8(O)+8(3s4枚使いの銀3s)=16枚オール

早く正確に数えるコツとしては、
①素点→PON→N→青金銀裏→Oの順に処理する
②ロン牌とNで切った河の牌は指差し確認する
くらいだろうか。正直やって慣れろと言うしかない。徹夜で打っていると1.2枚過少申告しても自分も同卓者もついでに後ろ見の店員も誰も気付かないことが珍しくない。麻雀でも珍しい一切運要素の関係ない明確な技術介入が点数申告だ。これを完璧にすることが成績向上に繋がることは言うまでもないだろう。

④後手対応まとめ

いくら放銃の罪が軽いとは言っても放銃しないに越したことはないに決まっている。誰しも自分が傷つくのは嫌なものだ。今回は攻撃(リーチ又は聴牌濃厚な仕掛けや押し)が発生した際の対応を大雑把に場合分けしつつ解説する。まあ簡単に言うとやる気がありそうな人がどれだけいるかという話だ。これに抜き牌によってどれくらい高そうかを見積もってそれとなく判断していく。
具体的には「他家A:攻撃 打点低」「他家B:受け 打点高」のように示す。これはAは華がないリーチをしていて、Bは華を3枚抜いているが手が悪く安牌を切って迂回している、のような状態を示す。ちなみに打点と書いているが和了素点だけではなく和了時の祝儀枚数もこれに含める。むしろそっちがメインだ。

対局中にシミュレータを起動させたりメモ帳を取り出して筆算したりできない以上判断はあくまでもなんとなくにならざるを得ない。せめてそのなんとなくの精度を高める努力はしていくべきだろう。本気でこの麻雀で勝ちたいと思うのならば。

①自家:受け:打点高 他家A:攻撃 打点低 他家B:受け 打点低
 要するに自分は7枚くらいある2シャンテン、一人は華なしでリーチをしていてもう一人は降り気味に打っているような状態だ。これは典型的な全ツ盤面である。放銃など知ったことではない。とにかく和了に向かって突き進むだけだ。

②自家:攻撃 打点低 他家A:攻撃 打点高 他家B:攻撃:打点低
実際の盤面で例えると自分は1副露した愚形2000の1枚の聴牌、一人は華なしもう一人はOとPONを抜いた状態で2軒リーチをかけている感じだ。
これはまあ難しい。基本他家Aに和了らせないように立ち回りたいが自分も張っている以上早々手は崩せない。他家Bに放銃するのはOKで渋々押していくことになりそうだ。基本的に自家:攻撃の時はよほどの条件が揃わない限り押すしかないことがほとんどである。自分の和了によって失点を回避できる可能性を捨てることは危険牌1枚押すこととは比べ物にならないほど高いリスクである。首を傾げつつ押して刺さって大いに首を傾げてねじ切ろう。


③自家:受け 打点低 他家A:攻撃 打点低 他家B:受け:打点高

3巡目にドラ0メンツ0でこの世の終わりの場面。そこになんと他家Bが華を四枚抜いてきた。しかも他家Aも大きく腕を振りかぶり牌を横に曲げてきた。そんなシーンだ。
まさかそんなところでちんたら現物を切って他家Bを追いつかせてしまうような愚行はできない。手牌をぶっ壊して全力で差しに行くべき局面である。親とかそういうことを言っている暇はない。なんなら飛んでも何も問題はない。はいよろこんであなた様のため3は4は精算込み14枚を支払ってあげよう。

④自家:受け 打点低 他家A:攻撃 打点高 他家B:攻撃:打点高

自分は華なし金1青1の2シャンテン、他家AはPONとP抜いてリーチ、他家BはOとNを抜いて役牌と端牌ポンして全ツッパしてらっしゃるような場面である。ほぼエイリアンVSプレデターだ。勝手に戦え。
これはもうとにかく横移動をお祈りして大人しくしているしかない。無理しない程度に形は維持するだろうが、それでも放銃だけは避けてツモられはもう諦めて立ち回るしかない。だいたいNが7くらいの時に他家Bにツモられて15枚オールとか支払う羽目になる。きつい。でも結構横移動の0枚で終わってくれる。逆にいうとこれくらいの条件が揃わない限りこのルールで降りを選択する必要はないということである。

⑤自家:受け 打点低 他家A:攻撃 打点高 他家B:受け:打点低

これまで挙げた状況の中で一番終わっている。4巡目にPとPONを抜いたリーチが飛んできた。しかもカン3待ちのターツを払っていて良形率も高そうだし上目の数字に寄せてそうだ。他家Bもやる気なさそうに死んだ瞳で摸打をしている。この時に注意すべきは抜き牌があと何枚残っているかである。抜き牌がもうないなら降りた結果決着巡目が延びて華を抜かれてツモられる最悪の事態は発生しない。逆に華が残っていればいるほど渋々押し寄りになっていく。できれば他家Bにアシストしつつ自分の和了も見つつでも放銃はしないように……とバランスよくというか中途半端というかそれとなくなんとなくやっていくしかない。今よりややマシの②の盤面に誘導できれば万々歳だろう。

⑥自家:攻撃 打点低 他家A:攻撃 打点低 他家B:受け:打点高

自分→4000点2枚愚形聴牌、他家A→華なし2副露聴牌気配、他家B→門前華3で濃い牌こそ出てないものの和了られたら相当まずいみたいな状況のイメージ。手牌を壊して他家Aに差すのか自分の和了も見て維持していくのか本当に迷う。一点読みレベルで分かっているなら差し込みもアリなのだがそうでないとただいきなり聴牌崩して和了を捨てたバカになってしまう。結局渋々全ツしていくしかなさそうなのだがどうだろうか。

また、上記からは少し話が逸れるが、後手を踏んだ際の対応には大きくわけて4つある。
それは、⑴差し込み⑵全ツ⑶迂回⑷ベタオリである。数字が大きくなるほど放銃を避けるムーブになっていく。

 ⑴は自分の和了を捨てて他家を和了らせることで損切りを図る選択である。この記事でいえば③が該当する場面と言えよう。
 ⑵はまっすぐ和了を見て結果的に放銃するのは構わないとする構え。差し込みと比べて決着巡目が遅くなりやすくそれに応じて華を抜かれてツモられるリスクも高くなる。
 ⑶は既にOやPONなどの強い華を抜かれている時に横移動や流局を願って行う。世間一般で行われているMリーグルールのようなドラが少なく祝儀のない麻雀では結局放銃しなければ大して痛くないため雑に鳴かせても大怪我はそうそうしないが、このルールではツモられも許容できないようなケースが多々発生する。そのため、ある種一発裏なしの競技麻雀のような絞りのテクニックが必要となりうる。
 ⑷のベタオリとの違いは完全に和了の目を捨ててまで放銃を避けに行くかどうかだろう。

東1局両方子、双方抜き牌なし

 このリーチを受けて4pや3sを切るのが⑴の差し込み、東中を切るのが⑵のゼンツ、9mを切るのが⑶の迂回、9sを切るのが⑷のベタオリというとイメージが伝わるだろうか。

⑤そのビタ止めに意味はあるか?

当たり牌を一点で読んで勝負手を降りる。僕は、鉄壁保はこんな牌を打たない。とてもかっこいいシーンだ。ただ、あれは華牌もなく赤もなくウマもとっても安い四人麻雀東南戦とかいう超特殊ルールでの環境だから価値あるものであった。華牌がある麻雀では、失点を抑えるために止めたにもかかわらず放銃していた方が遥かに安く済んでいたという事態が発生しうる。今回は当たり牌を止めた場合に起きうる展開を分析し、どういうときにビタ止めが得になるのか検証しよう。
※前提として、東1局5巡目被リーチ場に抜き牌無しとする

①流局
もう一人も放銃せず、奇跡的にリーチ者のツモ筋に和了牌が存在せず21巡を凌ぎきった場合。これが発生するならビタ止めは得になる。逆に言うと、流局が発生しやすい場面(要は残り2.3巡)では無理に押さずに流局お祈りをすることが多く起きる。

②横移動
もちろん失点0なので嬉しい。横移動が発生しやすい状況(2軒リーチなど)では止めて降りることに価値が発生しやすいといえる。この時はビタ止めは得である。

③自分の和了

回して当たり牌を吸収して和了り切る。これができるならこんないいことはない。ただそのためにどれくらい危険牌切りを先延ばしにしていいのかが難しい。

リーチ受け中 89p現物で46sどちらも両無筋

46sを切るとだいたい放銃する。華を抜かれる前に放銃することは喜ばしいことであるが放銃しやすい分和了率はそれなりに低下している。89p切りは決着巡目を先延ばしにして華を抜かれるリスクを背負いつつ最大限に和了を見る選択となる。実戦では89p切りにしているが自信はない。

④被ツモ

一応素点が多少安くなるがあまり大勢に影響はない。抜かれないままツモられるなら問題ないのだがOだのPONだのを抜かれて6枚増しをツモられたりすると死にたくなる。一発の1枚などそれに比べれば些細なものだ。こうなるくらいならさっさと放銃してしまった方がマシである。

まとめると、
巡目が早く、華が多く山に残っていればいるほどビタ止めの価値は薄れる。逆に流局が近づいてきて華がもう残っていないならビタ止めする価値は高くなっていく。さらに言うと残り筋が減っていくため1牌あたりの放銃率も跳ね上がっている。振り込まなければいいというものではない。放銃すべき場面、放銃してもいい場面、放銃してはいけない場面を見極めて押し引きの精度を高めていこう。

番外編②イベント牌のこと

11月からは金・土・日限定でよく特殊牌が入っている。まあ特殊なので当然それに伴った戦術もあるわけである。既に終わっていて役に立たない可能性もあるが復刻の可能性もあるしメンリー氏のnoteのように保存文献としての価値もあるかもしれないので残しておく。

(1)シルバー3p、シルバー3s
効果→3p及び3sを持っているほど祝儀が増える。シルバー3単体では1枚、2枚使い(対子である必要はない。例えば2銀33445で使えば2枚)で2枚、3枚使いは4枚、4枚使いなら8枚。
戦術→まあ3を大事にしましょうとしか言えない。PONやNのせいで上目の数字だけ偉くなっているのでそのバランス調整としては悪くない。無理に3を使い切るための大明槓やチートイ暗刻持ちシルバー単騎みたいなロマン砲も散見された。結局は青5以上金5以下くらいの強さだったと思う。

(2)パープル1p、マゼンタ1s
交換→単体だと1翻+1枚だが、パープル1pとP、マゼンタ1sとNが対応しており、それぞれ抜いた状態で和了るとチップ5枚になる
戦術→抜き牌以外で単体5枚は地味に他になかった。そのため多少無理にでも残すことになりがち。

実戦譜を再現したもの 5巡目抜き牌Pのみ

カン8pと69sのシャンテンで8p埋まったらしゃーねーかと思っていたところ。さすがに6と1はかなり大差なので9pを切って外したが、あまり自信はない。ちなみにツモ4p打7p、ツモ1p打2pでピンフの36p待ちになった。マゼンタについては適当な牌姿が思いつかなかった。まあ副露等でそのセット持ちが確定できたら警戒するくらいでいいだろう。

⑥役牌絡みのこと


───お知らせ本を読みましょう。

これを言い出すとこのnoteに限らず世の三麻戦術の90%以上は終わってしまう。流石にそれではこんなの書いてる意義がないのでもう少し詳しく掘り下げていく。

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