DAYS1 朝


どうしようもならない朝がある。目が覚めた瞬間に下腹部の鈍痛と、下着の不快感が襲う。あぁ、月曜日だと言うのに。予定日より三日も早い。油断をしていた。

休日を二日挟んで、また今日から出社。それだけでも憂鬱なのに、朝からこれか。太腿の辺りの不快感から、布団まで汚れているのではないかと不安になる。

とりあえず、起きなくては。身体をくねらせて布団からの脱出を試みる。やはり、昨日とは違い腰の辺りがズドンと重くなっている。

布団を体から離すと、案の定敷布団には赤い染みが出来ていた。
「最悪・・・」
布団がこの状態なら、寝巻きも下着も悲惨な状態だろう。

とりあえず、出社まではまだ時間がある。と言ってもそんなに余裕はない。今日はメイクは諦めなきゃいけないな。とりあえず、シャワーを浴びて足の付け根の辺りに着いた血液を洗い流さないと。そのついでに、下着と寝巻きも一緒に洗って・・・布団は、どうしようか。

キュウウウウウ・・・トロォォ・・・

あぁ、バッドタイミング。せめて、お風呂かトイレで流れてほしい。せめて、ナプキン着けてからで。下腹部の鈍痛。内臓を握られているような、例えても誰も分かってくれないだろう、この感覚。ドロドロの血が流れていく不快感。なんだろ、苺ジャムが体内から流れていくような感覚。何回経験しても慣れない。

痛みを少しでも和らげるために、下腹部を抑えながら浴室に向かう。血液で濡れてしまった寝巻きと下着を脱ぐと、思ったよりも量が多かった。これ、二日目くらいの量・・・。昨日、そんな兆候あったか?考えても、こうなってしまってる以上意味はない。時間もないことだし、できる限りのことをして出社しなければ。

シャワーを出し、ぬるま湯になったことを確認して洗面台に溜めていく。血液だから水では落ちにくい。インターネットで検索すると「水洗いが基本」と書かれているけれど、手も冷たくなるし、なんだか惨めったらしい気持ちになる。ぬるま湯だけだと、さっき出たばかりの乾き切っていない血液しか取れない。
古く固まった血は過去の経験上、洗濯をしても汚れが残ってしまうことがある。ショーツと寝巻きを一通りぬるま湯に潜らせ、生地が痛むのを承知で汚れの上にボディソープをかける。シャンプーや石鹸でもいいらしいが、ボディーソープの方が何となく汚れが落ちやすい気がする。優しく揉み洗いをして、しばらく放置する。その間に自分の体に先ほどより少し暖かくしたお湯を当てる。赤いお湯が排水口に吸い込まれていく。朝に暖かいシャワーを浴びると贅沢をしている気分になる。しかし、ゆっくりしている時間は本当にない。放置していたショーツと寝巻きを絞り、洗面台の水を抜く。こちらもクルクルと赤い血が吸い込まれていく。

バスマットを赤く汚さないように、浴室の中にバスタオルを引っ張り込み身体を拭いていく。その間には、毛についていた血がお湯に溶け、床にピタッピタッと跡がついていく。生理用ショーツを手に取る。一日目でこれなら、多い昼用一択だな。と、手を伸ばすも夜用ナプキンしかない。しかも、多い夜用。

「・・・え?」

私、どうしたっけ?記憶を辿ると、一ヶ月前、昼用はちょうど使い果たしてしまっていて、始まったら買いたそうと思っていたことを思い出す。仕方ない。夜用をショーツに当てがう。無いよりはマシだ。これは、着る服も限られて来てしまうな・・・。

もう一度、シャワーを出し床を洗い流す。

浴室から出て時計を見ると、出社時間まで残り三十分だ。絞った寝巻きたちを、とりあえず洗濯機に詰め込む。帰宅するまで血の匂いと、生乾きの匂い、他の洗濯物にも広がるであろう濡れがとても不安だけれど、これで外出するしかない。帰って来たら、絶対に柔軟剤多めに入れて洗濯してやるんだから。

夜用ナプキンは長さがあって、ゴワゴワしていてタイトな服を来たら服の上からでも浮いて分かってしまう。今日はスカート、しかもフワッと広がりのあるものしか着れないな。淡い色だと、漏れた時に色が目立つから黒か、深い色味の物。スカートに合ったブラウスとトップス。ノーメイクは流石に何か言われてしまうだろうから、ファンデーションと最低限のメイクをして。こういう時の為にマツエク行ってて良かったと心から思う。

朝ごはん食べている余裕は無いな。行きがけにコンビニ寄って軽く食べられる物と飲み物買っていこう。この期間は鉄分不足すると、動けなくなるから鉄分補ってくれる物あるといいのだけれど。

さっさと着替え、家を出る準備を整える。さて、替えのナプキンどうしようか。コンビニでナプキン買ってもいいのだけれど、嵩張るし、ドラッグストアで買うよりも少々お高い。今日一日は夜用で我慢して帰りにドラッグストアに寄ろうか。でも、濡れたままのナプキン着けていると痒くなるし、何より感覚が気持ち悪い。夜用の替えは家にあるから、仕方ないけどそれを持っていくか。夜用ナプキンをポーチに無理矢理押し込んで、カバンに入れる。万全では無いけれど、出社するしかない。

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