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さっき聞いたもの(10月下旬)

文章最後の「★」は最大4つの、アメリカの新聞方式

Korn - The Serenity of Suffering:一か月以上前から公開されていた楽曲群がいずれも良かったのでかなり期待していたし、実際、このバンドの向こう14年ぐらいの低調を、吹き飛ばして有り余った。ここ数年でロック音楽専門プロデューサーとして名を馳せたナッシュビルのひとを迎えたのもあって、全体的に重く、冷たく鋭い音作りなったのが、先ず大きい。加えて、一時期はダブステップやらエレクトロニカにまで手を出して迷走した感が強かったバンドの演奏も、(視点や言葉は相変わらず下向きであれ)叩きつけるような重量感と活気溢れる熱さを伴ったものに戻っている。世界観も久々に、一時期このバンドが得意としていた、奇形漫画的なムードに統一されており、'90年代に溢れ返ったマイナーな日本の青年漫画雑誌(それも今は亡きスーパージャンプ辺り)に掲載されそうな、どこか落ち着きの無いグロテスクさが充満している。その意味では、シカゴ在住の前衛芸術家ロン・イングリッシュに、カバー・イラストを振ったのは、大正解だと思う。駆け抜けるような曲がひとつも無いにも関わらず、全体を覆う緊張感と殺気は凄まじい。ラス手前の"Next in Line"なんかは特にキレあってカッケーよ。(★★1/2)

Jimmy Eat World - Integrity Blues:このバンドは「エモ(Emo)」という音楽性のメインストリームでの火付け役になったと同時に、そのブームにトドメを刺したとも言われているが、ディスコグラフィーを観ると有名になってからでも3年に1枚、アルバムを出しているし、先日のレイトショー出演を観ても思ったけど、ライブでの演奏が肉厚的でかっこいいのは今でも変わらない。今回はタイトル宜しく、すっかり落ち着いた歌詞と曲調に溢れていて、テイラー・スウィフトがだいぶ前にアップル・ミュージックのCMでカラオケしていた「The Middle」みたいなアップテンポは望むべくもないが、時折かなりヘヴィなギター・サウンドを繰り出してくるから、単調さは感じない。何よりも、全編で聞かれる抒情性は、今のこの季節の変わり目を噛み締めながら聞くと、時間帯や情景によってはかなり心を惹かれる筈。発表された時期がある意味で完璧なのもあるから、これをベスト10内に入れるひとは少なくないと思う。(★★★)